(留 別)
とそ酌(くむ)もわらぢながらの夜明(よあけ)哉
どの星の下が我家ぞ秋の風
飛(とび)のいて烏笑ふや雪礫(ゆきつぶて)
ともかくもあなた任せのとしの暮
とるとしや火鉢なでても遊ばるゝ
トンバウが焼(やけ)どの薬ほしげ也
としとへば片手出(だす)子や更衣
年寄(としより)と見るや鳴(なく)蚊も耳の際
年寄の腰や花見の迷子札
としよりの追従(つゐしよ)わらひや花の陰
年よりや月を見るにもナムアミダ
(歳 暮)
年忘れ旅をわするゝ夜も哉(がな)
通し給へ蚊蠅の如き僧一人
遠山が目玉にうつるとんぼ哉
通り抜けゆるす寺也春のてふ
とがもない艸つみ切るや負角力
床の間の杖よわらじよ秋の暮
どこを押せばそんな音(ね)が出ル時鳥
灯蓋(とうがい)に霰のたまる夜店哉
東西の人㒵(ひとがほ)ぼつと花火哉
塔ばかり見えて東寺は夏木立
とうふ屋と酒屋の間(あひ)を冬籠
堂守りが茶菓子売(うる)也木下闇(こしたやみ)
蟷螂や五分の魂見よ見よと