そよげそよげそよげわか竹今のうち
空色の山は上総か霜日和
雪車(そり)負て坂を上るや小さい子
雪車(そり)立(たて)て少(すこし)春めく垣ね哉
それがしも宿なしに候(そろ)秋の暮
雑巾をはやかけらるゝつぎ木哉
(わらぢながら墓参)
息災で御目(おめ)にかゝるぞ艸の露
外は雪内は煤ふる栖かな
外堀の割るゝ音あり冬の月
そば時や月のしなのの善光寺
蟬鳴や赤い木葉のはらはらと
(さとを偲んで)
せみなくやつくづく赤い風車
蟬鳴や物喰ふ馬の頬べたに
線香の火でたばこ吹(ふく)すゞみかな
膳先(ぜんさき)に雀なく也春の雨
先祖代々と貧乏はだか哉
晴天の真昼(まひる)にひとり出(いづ)る哉
鶺鴒がたゝいて見たる南瓜(かぼちや)哉
せゝなぎや氷を走る炊(かし)ぎ水
雪隠と脊合(せなかあは)せや冬ごもり
菫(すみれ)咲く川をとび越ス美人哉
スリコ木で蠅を追(おひ)けりとろゝ汁
すりこ木のやうな歯茎(はぐき)も花の春
(貧 交)
すりこ木もけしきにならぶ夜寒哉
炭竈(がま)のけぶりに陰(かげ)るしやうじ哉
炭くだく手の淋しさよかぼそさよ
炭俵はやぬかるみに蹈れけり
炭の火や夜は目につく古畳
炭もけふ俵焚く夜と成にけり
炭もはや俵(たはら)の底ぞ三ケの月