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原発停止という巨大な「不良債権」責任不在の日本的意思決定が「競合脱線」を生むbyJBPRESS

2015-02-10 16:52:41 | (英氏)原発・エネルギー問題

原発停止という巨大な「不良債権」責任不在の日本的意思決定が「競合脱線」を生む

2015.02.10(火)  池田 信夫

日本の組織に共通の欠陥は、問題の先送りである。その最大の失敗として知られるのが、日米戦争だ。誰もがおかしいと思いながらずるすると泥沼に引きずり込まれ、前例に前例が重なって大きな判断を先送りしているうちに、誰も望まなかった結果になった。

 最近では1990年代の不良債権問題でも、90年代前半には10兆円程度だった損害が、先送りしている間にどんどん大きくなり、小泉首相が最終処理したときは100兆円を超えた。

 こうした欠陥は今も受け継がれている。その典型が原子力行政である。

なぜ原発が止まっているのか誰も説明できない

 九州電力の川内原発(鹿児島県)の運転再開は、予定を大幅に超えて2015年夏にずれこむ見通しになった。原子力規制委員会が安全審査を開始してから、ほぼ2年で2基だ。このペースだと、全国48基の原発の審査がすべて終わるには20年以上かかる。

 それまで原発を止め続けると、化石燃料の浪費で最大55兆円が失われる。川内では地元の合意は得られたが、政府は積極的に動く様子がない。安倍内閣は「安全性を確認した原発は再稼働を認める」という方針だが、具体的に何をするのだろうか。

 実は、何もすることはない。2014年2月21日に閣議決定された答弁書で、政府は「発電用原子炉の再稼働を認可する規定はない」と答えている。規制委員会が再稼働を認可する規定はないのだから、内閣がそれを許可することもできない。

 川内原発の例で言えば、規制委員会の審査が終われば、九州電力の判断で運転できる。現に2013年に関西電力大飯原発を再稼働したときは、規制委員会の審査も地元の同意もなしに動かした。法的には、今でも全国の原発が再稼働できるのだ。

 では、なぜ全国の原発が止まったままなのだろうか。それは誰も説明できない。原子炉等規制法には「停止命令」の規定があるが、停止命令は一度も出ていない。「再稼働」という問題設定が間違いで、そもそも止める法的根拠がないのだ。

 そのきっかけは、2011年5月に菅直人首相が記者会
 

原発を長期停止したのは野田首相だった

 そのきっかけは、2011年5月に菅直人首相が記者会見を開き、中部電力の浜岡原発の停止を「要請」したことだ。彼が認めたように、この要請に法的根拠はなかったが、中部電力はこれを受け入れた。

 そのあと、定期検査の終わった佐賀県の玄海原発の運転開始が焦点になった。古川康知事は再開を容認したが、菅首相が「ストレステストが終わらないと再稼働は認めない」と言い、運転再開ができなくなった。

 電力会社は31の原子炉でストレステストの第1次評価報告書を原子力安全・保安院に提出したが、保安院はそのうち関西電力の大飯3・4号機と四国電力の伊方しか原子力安全委員会に送付せず、委員会はそのうち大飯だけを合格とした。

 野田佳彦首相は2012年7月に大飯の再稼働を決断し、原子力行政は正常化するかと思われた。ところが野田氏は、国会で「大飯以外は第1次評価だけでは不十分だ」と答弁した。彼は脱原発という民主党の路線を守るために、大飯以外の原発のストレステストを却下してしまったのだ。

 改正された原子炉等規制法は2013年7月から施行されたが、このとき運転中だった大飯原発の運転が論議になった。安全審査は運転とは並行して行われるものだが、反対派は「大飯の運転は改正法が施行される7月に停止し、新基準に適合させるべきだ」と主張した。

 こういう論争の中で、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、2013年3月に「原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)」と題する3ページのメモ(いわゆる「田中私案」)を出した。

 ここでは、稼働中のプラントは「事業者が施設の運転を再開しようとするまでに規制の基準を満たしているかどうかを判断」することになった。つまり7月に新基準が施行されても大飯を直ちに停止せず、次の定期検査に入るまで運転を続けることが田中私案の狙いだった。

 では、大飯以外の原発はどうするのか。田中試案では、新たな規制の導入の際には一定の猶予期間を置くのを基本としながら、今回は「規制の基準を満たしているかどうかの判断を、事業者が次に施設の運転を開始するまでに行うこととする」という例外を設けている。つまり安全審査が終わらないと、運転開始できないのだ。

 これは田中委員長の個人的な見解で法的根拠はないが、民主党政権の「原発は再稼働させない」という方針と一致していた。「動いている原発は定期検査で止まってから審査する」という野田首相の政治決断が、逆に「止まった原発は審査が終わるまで動かせない」という話になってしまったのだ。

 このように経緯を振り返ると、いまだに原発が止まって…
 

脱線した原子力行政を元に戻せるのは安倍首相だけ

 このように経緯を振り返ると、いまだに原発が止まっているのは、政治家の思いつきと官僚の前例主義が複合した「競合脱線」のようなものだ。田中私案がいまだにメモであることからも分かるように、安全審査が終わるまで運転してはいけないという規定は、法律にも省令にも閣議決定にもない。

 民主党政権には法律を改正する力がなかったため、「閣僚会議」などの法的根拠のない場で政策を決定することが多かった。そのうち最大の失敗は、菅首相の思いつきを野田首相が結果的に支持し、ストレステストを反故にしたことだ。

 田中私案は、この民主党政権の方針を受け継ぐものだった。これは安倍内閣になってからだったので、政権の誰かが気づいていれば彼のメモを撤回させることもできたが、ここまで既成事実が積み上がった中では無理だろう。これも不良債権と同じだ。

 原発の失敗は、不良債権に匹敵する規模である。ここまで問題が大きくなると、官僚には判断できない。原子力規制委員会は独立性の強い3条委員会(注:国家行政組織法の第3条に基づいて行政組織の外局として設置される組織)なので、田中委員長に命令できるのは首相しかいない。

 安倍首相が今までの経緯をリセットし、原子力行政を法にもとづいて「最終処理」する必要がある。具体的には田中私案を白紙に戻し、安全審査と運転を切り離すことだ。それは沈滞した日本経済に「アベノミクス」よりはるかに大きな効果を発揮するだろう。


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3 コメント

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紐のもつれ (はっちょ)
2015-02-11 09:21:43
なるほど
我々 凡人ではここまで踏み込んだ観察が出来なかった。
端々の情報ばかりでは核心を読み取るのは難しい。

情報が混乱して、まるで長い紐がグチャグチャに絡まってしまって少しずつ撚りをほぐしていくような作業だった。

よく整理してくださいましたね。

安部さんは菅のような独断で事を進める性格を持ち合わせていないようだ。
せめても「原子力安全推進委員会」でも立ち上げるべきである。

電力会社の官僚指導日和見経営も災いしている。
我々が大阪で原発再稼動推進デモをしたときも関西電力の方からは何も積極的な動きは無く、静観しているだけであったし、選挙の時も幸福実現党にも挨拶は無かった。
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日本人の無責任・先送り体質と… (megamiyama)
2015-02-12 14:06:11
論理的思考力の欠如が、もたらした問題なのでしょうね。
確か先週の「そこまで云って委員会」でも、アゴラの池田信夫氏が出て来て、「原発を止める法的根拠は何も無い。」「時の首相もそれをよくわかっていて、“お願い”して止めただけ。」「動かすにしろ、止めるにしろ、閣議決定するなり、国民投票するなりして、ちゃんとはっきりさせるべし」というようなコトを云ってましたが、常連コメンティターで“口達者な皇族”の竹田某氏が、何が何でも原発再稼働反対派代表として一歩も引かず、かみあわない議論をしてました。
テレビ的には池田氏が竹田氏に噛みつかれて辟易している様子だけが印象に残り、肝心の話があまり説得力を持って伝わらなかったのは残念でした。(それでも冷静に論理的に考えているのはどちらか?は明かでしたが)

日頃は歯に衣を着せぬ保守的言動が小気味の良い竹田氏ですが、こういう日本人の中の日本人といった人達にまで染みこんでいる原子力アレルギーを除去するのは、本当に大変だと思いました。

こんな人達を完全に説得しないと前に進めないなら、日本の原発は当分動かせないし、ましてや自前の核兵器を持つなど、夢の又夢。デス!

一かバチか多数決の原理で決めるか?専門家集団に権限を委ねてしまうか?するしかないのでしょうか?

首相がお願いして止めたのなら、首相がお願いして再稼働させたらよいだけなんじゃないでしょうか?
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原発再稼動に関して (Unknown)
2015-02-12 14:46:21
「空気」に大きく左右される日本人ですから、マスコミに洗脳されているこの状況で国民投票をしたら反対派が多数でしょうね。
首相の熱意ある一声か、日本を代表する企業の相次ぐ存続危機などがないと、現状動かせないと思います。
日本人が情緒的であるというのは今後も変わらないでしょう。
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