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基準値の不思議福島の「除染基準」をラジウム温泉の被ばく線量と比べてみると…

2017-04-10 13:27:30 | (英氏)原発・エネルギー問題

同じ福島県内なのに…

福島県田村郡三春町に、「やわらぎの湯」というのがある。ラジウムを含有する放射能泉だ。

ラジウムは1898年にキュリー夫妻が発見した元素の一つで、強い放射能を持ち、医療や理化学の研究にも用いられる。半減期は1600年。

日本中のあちこちの岩石には、ラジウムが多かれ少なかれ含まれている。そして、そこからは常にじわじわと放射性のラドンガスが出てくる。それが溶け込んだのがラドン泉。ラドンの名泉として有名なのは、山梨の増富温泉、新潟の栃尾温泉、鳥取の三朝温泉など。

もちろん、ここ三春の湯にも全国からその効用を聞きつけた多くの湯治客が集う。ホームページを見ると、病気が快方に向かったという喜びの報告がたくさん載っている。

 

放射能泉は、生物の細胞を活性化する働きがあるという。「やわらぎの湯」にはお風呂だけでなく、岩磐浴(岩盤ではない)、そして、飲泉場もある。

飲泉場だから文字通りこの水を飲むわけだが、ホームページにはラドン濃度について「302.5マイクロキュリーで、世界でもトップクラス」と書いてあるのには、ちょっとびっくりした(ただし、実際はマイクロキュリーではなく、10のマイナス10乗キュリーの誤りであると、ある専門家の指摘)。

現在、福島では、皆が神経質になって、すごい手間とお金をかけて放射線の除染をしている。なのに同じ福島の、それも目と鼻の先の三春町の温泉は、高い放射線量を堂々と誇り、それを皆が飲んでいるのである。

このラドンの数値を、前述の単位の誤りを正してベクレルに換算すると「1120ベクレル」となる。

ちなみに、ラドン泉はヨーロッパでも重宝されており、チェコのヤヒーモフには、ずばりラジウム・パレスという絢爛豪華なホテルがあるし、オーストリアのアルプス山中の保養地バート・ガシュタインの温泉は、ラドン濃度1リットルあたり堂々「1900ベクレル」だ。やわらぎの湯より高い。

19世紀にはこれを飲む治療もあったようだが、現在は、泳いだり、洞穴のようなところでサウナのように寝そべったりというのが主流らしい。ラドンを気体として肺いっぱいに取り入れるので、内部被ばくはする。もっとも、それが治療の肝なのだろうけれど。

飲料水の基準は欧州の100倍厳しい

ここでちょっと復習をしておくと、放射性物質が放射線を出すとき、毎秒いくつ出すかの能力を表す単位がベクレル。そして、被ばくした人が受けたダメージの程度を表す単位がシーベルトだ。

つまり、ベクレルの高い放射能物質があっても、そこから遠くに離れていればあまり被ばくしないので、シーベルト値は低くなる。

被ばくには、外部被ばくと内部被ばくがある。強い放射線を発している物質のそばにいると、そこからガンマ線などが飛んできて、全身の外部被ばくが起こる。一方、放射線物質を含む食べ物や水やガスを体内に摂取するのが内部被ばく。1ミリシーベルトの外部被ばくと1ミリシーベルトの内部被ばくは、健康への影響度は同じだ。

シーベルトというのは、放射線の人体に与える影響を数字に換算するための単位なのだから、当たり前のことである。

 

放射線は今、日本ではあまりにもひどい悪者になっている。たとえばセシウムの基準値は、飲料水は1リットルあたり10ベクレル。実は、福島の事故前の基準値は200ベクレルだった。それを一気に20分の1にした。なお、国際基準では1000ベクレル。つまり、今の日本の飲料水基準は、ヨーロッパなどの100倍厳しい。

さて、これほど厳しく規制したセシウムだったが、ラドン水なら1リットルあたり1000ベクレルを超えても飲んでしまう。ラドンなら、外部被ばくも内部被ばくもOKというのがよくわからない。

「やわらぎの湯」に入ったあと、温泉の人に話を聞いた。それによれば、温泉場の放射線は昔から自然界にあったラドンなどで、体に良い影響を与えこそすれ、害はないということだった。

確かに、自然界にはたくさんの放射能が存在する。たとえば、トリチウムやカリウム40。カリウム40は、干し昆布に2000ベクレル、干し椎茸に700ベクレル含まれる。それぞれ1kg食べた時の話である。もっとも、何を食べてもたいていカリウム40は入っているので、私たちの体内にはいつも7000ベクレルぐらい放射能が入っているらしい。

一方、人工のものはコバルト60やストロンチウム90など。福島原発事故で放出されたのが、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137。ヨウ素は半減期が短いのでもう消えてしまったし、セシウム134も2年なので、ほとんど残っていない。セシウム137だけが30年なのでまだある。

避難した人々は永遠に帰れない

では、本当に、これら人工の放射線と、自然界に存在する放射線は体に与えるダメージが違うのだろうか。

さる専門家に話を聞いたところ、自然の放射性物質は安全、人工の放射性物質は危険という議論はナンセンスだという。

放射線というのは、簡単に言えば、鉄砲の弾のようなもので、その数や口径が違えば、ダメージの程度は変わってくる。しかし、数と口径が同じならば、ロシア人が撃った弾でもアメリカ人が撃った弾でも、ダメージは変わらない。

つまり放射線の人体影響は、あくまでも飛んでくる放射線の性質と量によって決まる。出てくる元が自然物か人工物かはまったく関係ないそうだ。なかなか分かりやすい。

ICRP(国際放射線防御委員会)や日本国の公式見解としては、年間被ばく100ミリシーベルト以下では、放射線の影響による発がん確率の上昇は確認できない。ましてや、年間10ミリシーベルト以下なら心配する方が損なのだ。

宇宙飛行士の山崎直子さんは、宇宙に15日滞在していた間に8~15ミリシーベルト程度の放射線を浴びたことになるが、そのあと妊娠して2人目の赤ちゃんを無事出産した。同じく若田光一さんは宇宙滞在期間347日で、170~350ミリシーベルトの放射線を浴びた。

いや、なにも宇宙まで行かなくても、例えば東京・フランクフルト間を一往復すれば、0.2ミリシーベルトやそこらは浴びることになる。でも、パイロットやキャビンアテンダントが病気がちだという話は聞かない。

広島で原爆投下後、胎児に重い精神発達障害が起こる頻度は、被ばく線量が600ミリシーベルトを越えるあたりから増え始めたという。原爆の放出した放射性物質の量は、それほど膨大なものだった。

それなのに今、日本は除染で年間1ミリシーベルト達成を目指すので、事故で避難した人々はいつまでたっても帰れない。避難指示が解除されても不安で躊躇してしまう。安心のためだったものが反対に作用し、避難している人々をかえって不幸にしているのではないか。政府内に、はっきりと真実を言える人はいないのか?

 

ラジウム温泉の歴史が証明すること

私は放射線のさまざまな効用を信じている。危険なだけであれば、コバルト照射も、CTスキャンもあり得ない。アイソトープ治療でも体に放射線を入れるが、皆、承知で治療を受けている。

そういえば、昔、ジャガイモは置いておくとすぐに芽が出たものだが、それが発芽しなくなって久しい。発芽を防ぐために、放射線で処理してあるからだ。使い捨て注射針の殺菌、農作物や花の品種改良にも放射線が使われている。

EUではそれ以外にも、滅菌や、殺虫、成熟遅延を目的に、いろいろな作物に強い放射線をあてている。人間が浴びたら数十シーベルトを超えて、たちまち死んでしまうような大きな線量だ。しかし、安全は十分に確認されており、誰も文句も言わない。

そのほか、タイヤのゴムの強化にも、電気コードの絶縁材の耐熱性向上にも、世界のあらゆるところで放射線は役立っている。

現在、福島の田畑で次のような工夫がされているのを、ご存じだろうか。田畑の表面の土は、長年お百姓さんが培ってきた財産なので、除染といってそれを捨てるのは、お百姓さんにとっては悲しいことだ。そこで、よほど汚染レベルが高くない限り、表土の剥ぎ取りはやめ、その代わり、カリウムを土壌に混ぜて、そこで作物を育てている。

セシウムとカリウムは化学的に似ているため、作物はカリウムで満腹にさせると、もうセシウムを取り入れられなくなるという。だから、セシウムの汚染は抑えられる。この方法は、チェルノブイリの事故後、ウクライナやベラルーシの畑で実践されたものだそうだ。

ラジウム温泉の被ばく程度では、たとえそこに一生住んでいる人であってもまったく問題がないことを、世界中のラジウム温泉の歴史が証明してくれている。なのに、そういう経験が、福島の放射能の問題にまったく活かされないのはとても残念だ。

やわらぎ温泉のお湯に浸かったのをきっかけに、そんなことを考えたのだった。

by現代ビジネス

川口マーン恵美

川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」から転載


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