をれと妻のあいだに球のようなベイビイが生まれたので球子となづけた
それなのに成長するにしたがって親バカと無縁で居るのがたいへんに困難な娘へと育っていった
いや油断するな。なにせをれと妻の娘である。いつ予想外の角度からしつちやかめつちやかの事態を招来するのか。をれは電話のたびに 刻一刻と寿命をへづつてゐる実感があった。
しかし…
へいおんにひびはながれていつた。なにかやらかす、なにか裏である、そういうしせいはへいおんなひびに弱いと知った。ほんとうにうちの球子は一点の非の打ち所の無い やまとなでしこがきょうふにをののくパーフェクト・…
なのだろうか。信じられずに居た。をれと 妻の娘である。
そんなあるひハタときづいたことがあって聞いてみた。23歳の誕生日のことである。をれは67歳になっていた。「おいお前 好きな男のひとりでも家に呼んではこんのか。」娘はちょっと顔をあからめた「ねえパパ。」
「なんだ。」
「あたし、あたしのこと完全体だと思うんだ。」伽藍が轟音を。
「あたし、子孫を必要としてない存在なの。人間らしい欠点のない、面白くないちょっぴりできがいいおませな女の子、それがあたし。」
「完全だから、子孫を残せない不完全をともなうことで、人間の帳尻をかろうじて保ってるの。あたし、なにかみんなと異なるな、異なるなと思い続けていてずいぶん悩んだわ。そしてわかったの。」
「ば… いつかお前はめくるめく恋に落ちるんだよ。決まってる。」
「パパ。そんなこと言わないで。あたし、予感がする。あたしはずっとひとりで生きていけるの。そしてそれが自然でへいちゃらなのよ。」
「このしつちやかめつちやかな世界のかたすみで あたしみたいな個体がひっそりと生きて そして死ぬことは宇宙の許容範囲内だと思わないパパ?」
「範疇のほうがポエジーだ、球子。」「いじわるパパ。」
をれはいつかきっと このこも劇的な恋におちてしやまぬと信じきってるが あまりにも決意の自然な不動がわが子ながらあっぱれであった。をれはこの子がどうなるのかおそらくみとどけられないのだろうが、それはをれがしつちやかめつちやか(愛のみを除いて な人生を歩んでひとより遅すぎたことへの罰なのだろう。をれはそれを淡い哀しみとともに甘受する。そのころは、もう。
彼女たちの時代だ。
で。次の日彼氏を紹介された。
それなのに成長するにしたがって親バカと無縁で居るのがたいへんに困難な娘へと育っていった
いや油断するな。なにせをれと妻の娘である。いつ予想外の角度からしつちやかめつちやかの事態を招来するのか。をれは電話のたびに 刻一刻と寿命をへづつてゐる実感があった。
しかし…
へいおんにひびはながれていつた。なにかやらかす、なにか裏である、そういうしせいはへいおんなひびに弱いと知った。ほんとうにうちの球子は一点の非の打ち所の無い やまとなでしこがきょうふにをののくパーフェクト・…
なのだろうか。信じられずに居た。をれと 妻の娘である。
そんなあるひハタときづいたことがあって聞いてみた。23歳の誕生日のことである。をれは67歳になっていた。「おいお前 好きな男のひとりでも家に呼んではこんのか。」娘はちょっと顔をあからめた「ねえパパ。」
「なんだ。」
「あたし、あたしのこと完全体だと思うんだ。」伽藍が轟音を。
「あたし、子孫を必要としてない存在なの。人間らしい欠点のない、面白くないちょっぴりできがいいおませな女の子、それがあたし。」
「完全だから、子孫を残せない不完全をともなうことで、人間の帳尻をかろうじて保ってるの。あたし、なにかみんなと異なるな、異なるなと思い続けていてずいぶん悩んだわ。そしてわかったの。」
「ば… いつかお前はめくるめく恋に落ちるんだよ。決まってる。」
「パパ。そんなこと言わないで。あたし、予感がする。あたしはずっとひとりで生きていけるの。そしてそれが自然でへいちゃらなのよ。」
「このしつちやかめつちやかな世界のかたすみで あたしみたいな個体がひっそりと生きて そして死ぬことは宇宙の許容範囲内だと思わないパパ?」
「範疇のほうがポエジーだ、球子。」「いじわるパパ。」
をれはいつかきっと このこも劇的な恋におちてしやまぬと信じきってるが あまりにも決意の自然な不動がわが子ながらあっぱれであった。をれはこの子がどうなるのかおそらくみとどけられないのだろうが、それはをれがしつちやかめつちやか(愛のみを除いて な人生を歩んでひとより遅すぎたことへの罰なのだろう。をれはそれを淡い哀しみとともに甘受する。そのころは、もう。
彼女たちの時代だ。
で。次の日彼氏を紹介された。