東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

リハビリカンファレンス

2015-04-15 20:52:03 | カンファレンスの話題
 毎週水曜日の朝30分はリハビリ科医師とのカンファレンスをしています。訪問診療・施設・病棟の患者さんのことで、1回1症例について、ある程度論点を絞ってリハビリ科医師とディスカッションをしています。というか、ほとんど教えてもらっている感じですが・・・。
 初期研修医や後期研修医にもリハビリ的な視点でどのように患者をみればよいかを考えるいい機会となっているのではないかと思っています。テーマはいろいろです。転倒予防のこと、廃用予防のこと、コミュニケーションツールのこと、嚥下のこと、終末期のリハビリのことなどなど・・・。ずいぶん前になりますが、その内容を紹介するような感じで、在宅医学会という学会で発表したことがあるので、以下に要旨をのせます。


★カンファレンスの様式①
・日時
  毎週水曜日の朝(約30分間)
・メンバー
  リハビリテーション科の医師と訪問診療を行っている総合診療科の医師や地域医療研修中の初期研修医
・症例
  総合診療科医師が訪問診療を行い、リハビリテーション的な問題点を抽出した症例

★カンファレンスの様式②
・進行
 総合診療科医師が症例をプレゼンテーション
 時に、患者や家族の承諾を得て撮影した住居環境や本人の様子を提示
 論点を明確にしてディスカッション

・初期研修医への教育的側面
 地域医療研修中の初期研修医がいる際は、研修医が同行した患者から症例を選択。研修医自身がプレゼンテーションを行い、慢性期患者のリハビリテーション的視点に対する教育的な役割も担っている

★代表的なディスカッションポイント
・脳出血後遺症で左不全片麻痺のある72歳男性。ベッドから車椅子へのトランスが以前より困難となってきている。トランス介助量軽減のためのベッド周りの環境調整やトランス方法について議論。
・乳癌末期で右股関節・右肩甲骨に骨転移のある55歳女性。ADLは室内杖歩行レベルであるが、動作時に右股関節に痛みあり、オピオイドはレスキュー含めて使用中。本人は買い物に行きたがっている。杖の長さや使い方、トイレ・浴室の手すりの位置、動作時のアドバイスについて議論。
・心房細動・慢性心不全・変形性膝関節症の91歳男性。近くの畑まで自転車で行くのが楽しみだが、自転車の乗り始めに転倒すること多い。自転車乗車時の転倒を予防する方法について議論。

★考察①
・リハビリテーションのリソースは限られているため、プライマリケア医を教育することは、高齢化社会が進むにあたって重要課題である。 
(Hoenig H et al . Educating primary care physicians in geriatric rehabilitation. Clin Geriatr Med 1993)
・維持期リハビリにおいては、リハビリ専門職の人的不足と具体的役割が不明であることを指摘。
 (佐伯ら.「リハビリテーション科専門医需要」に関する報告.Jpn J Rehabil Med Vol45 No8 2008)
⇒患者個別のリハビリテーション的問題に対して、在宅医が、リハビリテーション専門職と連携してながら解決していく事が重要と考えられる。

★考察②:カンファレンスの効果 ~在宅医の立場から~
・個々の患者に適した福祉用具の導入や住宅改修の選択方法(個別化する事とアイデアの重要性)
・廃用への気づきや予防に対する意識、転倒予防への意識の高まり
 ⇒研修医教育への寄与
・訪問時におけるリハビリテーション的な問題抽出を促進
・多(他)職種とリハビリ専門職との架け橋

★今後の課題
患者アウトカムの評価や、そもそも在宅医がリハビリテーション的な問題を抽出できているか否かの検討が困難である点がある。



 私自身も、慢性期では、リハビリ的なアプローチをついつい忘れがちになってしまうのですが、患者のQOLに直結するものでもあり、重要な視点と思います。
「今後の課題」にも書いてありますが、「在宅医がリハビリテーション的な問題を抽出できているか」というのは問題点で、私たちが問題と感じていないこともリハビリ医からみれば問題であったりすることもあると思われ、それは実際に患者さんを診てもらわないと難しいのかなと思っています。でも、在宅や施設のセッティングではなかなか難しいです。実は4月から非常勤で、(3月まで当院に勤務していた)リハビリ医が当科の訪問診療を隔週1日手伝ってくれることになりました。そのようななかで、今まで自分たちが「問題」と感じていなかったリハビリテーション的問題が明らかになれば、私たちにとってもさらに勉強になるし、患者さんにとっていいなあと期待しています。

類天疱瘡の治療について(朝の勉強会)

2015-04-14 19:03:34 | 勉強会
 今日朝にやった勉強会の内容をアップします。
 類天疱瘡は高齢者に多く、私たちも訪問診療や施設の患者さんで、遭遇することがしばしばあります。診断はそんなに難しくないかなと思います。高齢者で水疱病変が多発したりするとだいたい疑い、好酸球増多などもあるとさらに疑わしくなります。抗BP180抗体なども提出したりしますが、それでやっぱりそうだったねということが多いです。皮膚科の先生にコンサルトできる場合には可能な範囲でしていますが、ADLの悪い患者さんの場合には継続して診療してもらうのが難しい場合もあり、そのような場合にはある程度私たちでフォローしなくてはならないときもあります。そのような観点から治療のスタンダードについてある程度知っておこうということで、外山先生が勉強会のテーマにしてくれました。
 以下にパワポの内容を記します。出典はUp to Date+αです。

<水疱性類天疱瘡(BP)の治療について>
★UpToDate:ステロイド投与が第一選択。その他は免疫抑制剤(マイコフェノレート、アザチオプリン、メソトレキセート)、テトラサイクリン+ニコチン酸アミドorダプソン(商品名レクチゾール)
★外用ステロイドは内服と同等以上に有用:デルモベート40g/日全身外用とPSL0.5-1.0mg/㎏/日内服をランダム比較。重症例(10個以上/日の水疱形成)では、3週時点の寛解率、 1年生存率、安全性において外用が内服よりも優れる。軽症(10個/日以下)では有意差なし。ちなみに、寛解後15日まで上記治療継続しその後漸減、12か月で治療終了としている。再発は4割程度で有意差なし(Joly et al,NEJM.2002,PMID:11821508)
★デルモベート外用はより少量短期間でも効果は劣らない:40g/日×12か月と、10-30g/日(体重と広がりで)×4か月をランダム比較。3週時点の寛解率、 1年生存率、安全性で有意差なし。軽症に限ると少量短期間のほうが有意に死亡率・合併症発生率低い。再発は少量短期間で有意に多い(35%vs43%)(Joly et al,J Invest Dermatol.2009,PMID:19177141)
→新規水疱形成やかゆみが二週間以上なく、水疱の8割以上が治癒していたら4か月以上かけて外用薬漸減終了(UpToDate)

★ステロイド以外の治療について
テトラサイクリン+ニコチン酸アミド内服はPSL内服と同様の治療効果?:小規模(N=20)な非盲検試験が1つ。テトラサイクリン(2000mg分4)+ニコチン酸アミド(1500mg分3)群と、PSL(40-80mg)をランダム比較。いずれも8週投与後、10週で漸減終了としている。寛解率に有意差なし(14例中10例で寛解)。(Fivenson et al,Arch Dermatol.1994,PMID8002646)
TCにかわりドキシサイクリン、ミノサイクリンも200mg分2で使用するとある(UpToDate)。
MINO:case report/series 4つ(うち2つが本邦)。
DOXY: case report/series3つ。欧州でDOXY200mgとPSL0.5mg/㎏のRCT進行中(BLISTER trial)
気になる「ダプソン(レクチゾール)」:ランダム化試験なし。単剤使用で有用性を示唆する症例報告少数ある程度。25mgから漸増。類天疱瘡保険適応。副作用は血液系(溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、無顆粒球症)主体。


 実際に、今までの経験からも、ニコチン酸アミドとテトラサイクリンを組み合わせて使用することは多く、その他ステロイドの外用を使ったりすることが多かったですが、ステロイド内服の適応はどんなものなんだろうと以前から感じていました。皮膚科の先生によってもそのあたりのスタンスが多少違う気がして・・・。
 勉強会でわかったこととしては、基本的には外用でいいのかなと・・・。でも、介護面などで外用を塗るのが大変だったり、困難だったりする場合には内服のチョイスに傾くのかなと感じました。しかし、3・4か月もステロイド軟こう塗るのには抵抗感相当あるなと思いました。実際の臨床ではもっと早めにきりあげるのでいいのでしょうけど。(実際そうしていますし、私たちがみるような軽症例ではそれでそんなに問題ないような印象ではありますが)

 皮膚の問題に遭遇することは、高齢者診療のおいては本当に多く、在宅だと皮膚科医へのコンサルトは容易でないこともあり、こんな感じで勉強会のテーマでとりあげることもあります。

後期研修医に対して、特別養護老人ホームでどのような教育をすればよいのか?

2015-04-13 20:46:17 | 初期・後期研修関連
 東埼玉病院の総合診療科では、特養の嘱託医もしています。特養の回診は指導医と後期研修医がセットになって行っていますが、1回に20人くらいずつの診察をするので、ついついばたばた終わってしまいがちです。しかし、その中で、施設スタッフから必要な情報を引き出しながらキモを逃さずに診察するのは大事な技術だなあと思います。それは一見落ち着いている状態の入所者さんに関してもいえることです。後期研修医にとっては、訪問診療と比べるとやや学ぶべき内容がわかりづらいかなと感じおり、こういうところを今日は気を付けてみてみようということを伝えることがあります。たとえば、「Polypharmacyのこと」、「栄養のこと」、「嚥下のこと」、「転倒予防のこと」など・・・。一見変化がないようにみえる入所者さんに対して定期的な診察でどのようなポイントをおさえていくか、そのヒントになればいいなと。 まあ、自分もついつい忘れがちではあるんですけどね。前回に引き続きまた研修ネタではありますが、以前調べた内容ものせておきます。


<施設での教育>
★カナダでは、家庭医の2割が定期的にナーシングホームの診療を行っている。
★ナーシングホームでの研修は、内科医の高齢者診療での知識や態度に効果がある(Cheetiら2002,Baumら2007)
★McMaster大学の家庭医グループがLTC(Long term cae) homesでどのようなことを学ぶべきかを提案
①CanMEDS competenciesとLTCでの教育プログラム
 Medical expert・・・症例ベースでPolypharmacy、認知症ケア、転倒予防など
 Communicator・・・専門職・家族から情報をどのように集めるか、家族とのケアカンファでの議論を誘導
 Collaborator・・・専門職チームと協働して働くようトレーニング
 Manager・・・家族面談や専門職ケアカンファを指揮する、LTCセッティングでの医師の役割やコール体制をどのように組み合わせるかなどの議論
 Health advocate・・・個々の患者のニーズとコミュニティのニーズを合わせる重要性を教える
 Scholar・・・ガイドラインや個々のケースでのアプローチを論文で定期的にProfessional・・・倫理的なシナリオを提示していく(不適切な抑制をみたら?)
②LTCローテーションでカバーするcore topics
認知症の問題行動、せん妄へのアプローチ、能力評価、End of life planning、転倒予防、Infectious control、感染症の治療、 Polypharmacy、多職種連携、抑制の使用、終末期の症状マネージメント

 
 McMaster大学の家庭医グループの提案は、なるほどわかりやすいなあと以前思い、後期研修医の人には提示したりして、少しこのようなことを意識して診療してみてはとアドバイスしています。結構、施設臨床も奥が深いなと私自身最近も感じており、勉強させていただいてます。


 写真は病院近くの菜の花畑です!















後期研修医の振り返り

2015-04-10 18:47:45 | 初期・後期研修関連
 当科では、東京医療センターの総合内科から、後期研修医が半年ごとくらいにローテーションで研修に来ます。地域医療の研修として、通常の外来や病棟以外に在宅医療・施設診療・健診・地域のヘルスプロモーションなどを重点的に研修してもらっています。最初は急性期医療との“場の違い”などに戸惑うことも多いようですが、そのなかで様々な経験を積んでくれているようです。
 そのような経験を言語化していく作業も重要と考え、毎日一言、その日感じたことや印象に残ったことなどを夕方(夜?)のカンファレンスのあとに言ってもらうようにしています(「日々の振り返り」)。時にはこちらがはっとするような発言もあります。「そんなこと感じていたんだなとか」、「わかるわかる、自分もそこは戸惑うよ」とか。指導医としてもいろいろな気づきがありますね。
 あと、後期研修医には朝の時間をつかって、来て2週間程度の時点・研修が半分過ぎた時点・研修終了時の3回振り返りのセッションを行っています。今日は、4月からきた後期研修医の導入時のセッションを行いました。詳細をのせると本人嫌がるでしょうから(笑)のせませんが、早くも今までとは異なる新たな視点を感じているようでした。橋川先生、これから半年間お互いがんばりましょうね!
 ちなみに、昨年の国立病院総合医学会で、「日々の振り返り」の記録をもとに後期研修医が在宅医療でどのようなことを感じているのかを質的に分析したものを発表しました。7つの大カテゴリーに分類できたのですが、それを代表的な発言とともにのせておきます。

①<在宅医療の難しさ>  
 「身体的な変化にどのように対応するか。検査にどうしても頼ってしまう。」   「入院はしたくない人。家でどこまでみるか。」

②<患者を“生活”という視点でみることの重要性>
 「病院で急性期を過ごして帰った姿、想像していなかった。」  「○○さん、その人なりの生活をどのように維持していくか。」

③<“連携”の重要性と難しさ>
 「OOさんのケアカンファはよかった。それぞれの職種から意見が出て。連携重要と感じた。」
 「様々な職種とお話しする機会多い。伝えかたなど病院にいる時とは変えないと。うまく伝わらないことも。」

④<患者・家族とのコミュニケーションの奥深さ>
 「○○さんの家族はこだわりが強かった。対応の仕方を変える必要があった。」
 「○○さんの気持ちを、○○先生はうまく引き出していた。自分では引き出せず、どのように話せばうまく引き出せるか参考になった。」

⑤<“患者の死”に対する思いや迷い>
 「(亡くなりそうな)○○さん、(本人の死に対するいろいろな思いに対して)どうすればよいのか。もやもやしていた。言語化できない。」

⑥<家族ケアの重要性と難しさ>
 「どの家も、医学的なこと以上に介護や家族のことが(問題)多い。アドバイスは大変。経験重要。」

⑦<医師としての責任性と視野の広がりの獲得>
「まだわからない部分もあるが、以前と比べるといろいろな視野で見られるようになり、わかる部分が増えた。」

ちなみに、Buchmanらは、在宅医療でより効果的に教育できることとして、「QOL重視のケア」、「患者・家族の疾病経験への深い理解」、「低いテクノロジーのなかで重症患者をみること」、「終末期における心理的・スピリチュアルなサポート」、「多職種協働の中での役割」などを挙げています。(S Buchman,et al . Canadian Family Physician 2012) 
ある程度、似通っている部分が出たのかなと思いました。

在宅医療において、どのようなことを教育できるのか、教育すべきなのかについてはまだまだ確立されたものはなく、いまだに試行錯誤な部分は多いですし、まずは経験して、そこから様々なことを感じとってもらい、それについてディスカッションしていくのが重要かと感じています。



 

ブログはじめました!

2015-04-05 16:37:42 | その他
東埼玉病院の総合診療科は、外来・病棟・在宅・施設と様々な場で診療を行っています。
診療以外にも勉強会やカンファレンス、在宅医療・介護の事業や地域のヘルスプロモーションなどの活動、学会活動なども積極的に行っているので、いろいろこのブログで紹介できたらなと思っています。
ブログ慣れしていないので、いろいろ不手際あると思いますが、あたたかい目で見守ってください!
よろしくお願いします。