東埼玉病院 総合診療科ブログ

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類天疱瘡の治療について(朝の勉強会)

2015-04-14 19:03:34 | 勉強会
 今日朝にやった勉強会の内容をアップします。
 類天疱瘡は高齢者に多く、私たちも訪問診療や施設の患者さんで、遭遇することがしばしばあります。診断はそんなに難しくないかなと思います。高齢者で水疱病変が多発したりするとだいたい疑い、好酸球増多などもあるとさらに疑わしくなります。抗BP180抗体なども提出したりしますが、それでやっぱりそうだったねということが多いです。皮膚科の先生にコンサルトできる場合には可能な範囲でしていますが、ADLの悪い患者さんの場合には継続して診療してもらうのが難しい場合もあり、そのような場合にはある程度私たちでフォローしなくてはならないときもあります。そのような観点から治療のスタンダードについてある程度知っておこうということで、外山先生が勉強会のテーマにしてくれました。
 以下にパワポの内容を記します。出典はUp to Date+αです。

<水疱性類天疱瘡(BP)の治療について>
★UpToDate:ステロイド投与が第一選択。その他は免疫抑制剤(マイコフェノレート、アザチオプリン、メソトレキセート)、テトラサイクリン+ニコチン酸アミドorダプソン(商品名レクチゾール)
★外用ステロイドは内服と同等以上に有用:デルモベート40g/日全身外用とPSL0.5-1.0mg/㎏/日内服をランダム比較。重症例(10個以上/日の水疱形成)では、3週時点の寛解率、 1年生存率、安全性において外用が内服よりも優れる。軽症(10個/日以下)では有意差なし。ちなみに、寛解後15日まで上記治療継続しその後漸減、12か月で治療終了としている。再発は4割程度で有意差なし(Joly et al,NEJM.2002,PMID:11821508)
★デルモベート外用はより少量短期間でも効果は劣らない:40g/日×12か月と、10-30g/日(体重と広がりで)×4か月をランダム比較。3週時点の寛解率、 1年生存率、安全性で有意差なし。軽症に限ると少量短期間のほうが有意に死亡率・合併症発生率低い。再発は少量短期間で有意に多い(35%vs43%)(Joly et al,J Invest Dermatol.2009,PMID:19177141)
→新規水疱形成やかゆみが二週間以上なく、水疱の8割以上が治癒していたら4か月以上かけて外用薬漸減終了(UpToDate)

★ステロイド以外の治療について
テトラサイクリン+ニコチン酸アミド内服はPSL内服と同様の治療効果?:小規模(N=20)な非盲検試験が1つ。テトラサイクリン(2000mg分4)+ニコチン酸アミド(1500mg分3)群と、PSL(40-80mg)をランダム比較。いずれも8週投与後、10週で漸減終了としている。寛解率に有意差なし(14例中10例で寛解)。(Fivenson et al,Arch Dermatol.1994,PMID8002646)
TCにかわりドキシサイクリン、ミノサイクリンも200mg分2で使用するとある(UpToDate)。
MINO:case report/series 4つ(うち2つが本邦)。
DOXY: case report/series3つ。欧州でDOXY200mgとPSL0.5mg/㎏のRCT進行中(BLISTER trial)
気になる「ダプソン(レクチゾール)」:ランダム化試験なし。単剤使用で有用性を示唆する症例報告少数ある程度。25mgから漸増。類天疱瘡保険適応。副作用は血液系(溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、無顆粒球症)主体。


 実際に、今までの経験からも、ニコチン酸アミドとテトラサイクリンを組み合わせて使用することは多く、その他ステロイドの外用を使ったりすることが多かったですが、ステロイド内服の適応はどんなものなんだろうと以前から感じていました。皮膚科の先生によってもそのあたりのスタンスが多少違う気がして・・・。
 勉強会でわかったこととしては、基本的には外用でいいのかなと・・・。でも、介護面などで外用を塗るのが大変だったり、困難だったりする場合には内服のチョイスに傾くのかなと感じました。しかし、3・4か月もステロイド軟こう塗るのには抵抗感相当あるなと思いました。実際の臨床ではもっと早めにきりあげるのでいいのでしょうけど。(実際そうしていますし、私たちがみるような軽症例ではそれでそんなに問題ないような印象ではありますが)

 皮膚の問題に遭遇することは、高齢者診療のおいては本当に多く、在宅だと皮膚科医へのコンサルトは容易でないこともあり、こんな感じで勉強会のテーマでとりあげることもあります。

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