東埼玉病院 総合診療科ブログ

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心不全における水分制限について(カンファレンスの内容:本当は医療と介護の連携のはなし・・・)

2015-06-08 00:09:34 | カンファレンスの話題
 先日のカンファレンスで後期研修医の先生が発言していた事として、心不全の患者さんに対する水分制限の話しがありました。施設入所中の心不全がある患者さんで、やや増悪傾向にあったのですが、利尿剤の増量にはあまり反応なかったものの水分制限を設定することで、ずいぶん改善したというエピソードでした。介護施設では、水分をできるだけ1L以上とるよう心掛けている部分もあります。たしかにそれは重要ですが、心不全のある患者さんに対しても一律にそのようにしてしまう部分があり、こちらで適宜注意しないといけない部分があります。以前、在宅の患者さんでショートステイから帰ってくると、心不全が増悪傾向になる方がいて、よくよく聞くとショートステイ中の水分がその患者さんにとっては過剰なことがありました。後期研修医の先生が、重要性を実感したこととしては、そのような医療と介護の連携の話しでした。水分摂取をまめにすることは高齢者にとっては重要なことですが、医療的なアセスメントのうえでの個別化は重要であり、そのあたりを介護職の方と共有していくことは重要と思います。1つの例ですが、心不全患者の水分摂取に限らず、このようなことは多々あると思います。
 実は本筋はそのようなことですが、ではメディカルには心不全における水分制限は実際どのようなことがわかっているのでしょうか?


 <心不全に塩分・水分制限は有用か?>

★慢性期の管理
ガイドライン
①2013ACCF/AHAガイドライン
stageC :classⅡa 3g/日未満の塩分制限(レベルC)
stageD: Ⅱa 1.5~2L/日の水分制限。特に低Na合併。(C)
②2010慢性心不全治療ガイドライン
塩分制限:重症心不全では3g/日以下。軽症では必要なし(7g/日以下程度)。
水分制限:軽症では不要。重症で低Na合併では必要。
③Philipsonらの報告(Eur J Heart Fail 2013)
対象:NYHAⅡ~Ⅳで、以前体液貯留の経験がある97例
方法:RCT 1.5Lの水分制限・5gの塩分制限を介入群 12W
結果:複合エンドポイント有意に改善(NYHAと足の浮腫の改善)
口渇・食欲・QOLの低下は認めなかった

★急性期の管理
①ガイドライン
2010HFSA(The Heart Failure Society of America)ガイドライン
 2g/日以下の塩分制限と、Na<130で体液貯留ある場合は2L/日未満の水分制限を推奨
②Graziellaらの報告(JAMA 2013)
対象:急性非代償性心不全で入院した75例(Ccr30未満・心原性ショック・認知症などは除外)
方法:RCT  
介入群 800mg/日以下のNa制限、800ml/日以下の水分制限 
コントロール群 3-5g/日のNa、2.5L/日以下の水分
結果:入院3日後の体重減少・clinical congestion score及び退院30日以内の再入院率は有意差なし。期間中の口渇は有意に介入で悪化


 複合エンドポイントではありますが、慢性期において、ほどほど?(食事も入れるとそれなりに少ないですが)の水分(+塩分)制限は有用かもしれません。急性期においても、厳密な制限ではなくてもほどほどでよいかもしれませんね。

 個人的には、超高齢者に対しては、塩分・水分制限を本人のQOLという面で考えることが重要と考えています。制限せずに入院したり、呼吸苦が出てもQOL下がると思いますし、そうかといって過剰であったり不必要な制限は食などを楽しむという意味でQOLを下げることもあると思います。そのはざまで悩んだり、葛藤することも多いです。




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