東埼玉病院 総合診療科ブログ

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在宅での「くすり」の話し

2015-04-21 19:42:58 | カンファレンスの話題
 今日は4月中旬から来ている後期研修医と一緒に訪問診療を回りました。そのなかで、在宅での「くすり」のはなしが出ました。
 在宅医療をはじめた当初、患者さんが思っていた以上にくすりを飲んでいないことにびっくりした記憶があります。前医からもらっていた塗り薬を紙袋いっぱいもっているのを発見したことも・・・。本人は、「お医者さんにいらないっていうのが申し訳なくて・・・」と。
 その後、在宅において、服薬アドヒアランスを評価し、介入することの必要性を感じるようになり、臨床では適宜行っています。やっぱり、感じるのは多職種での介入が重要であること。特に独居や介護者不在の状況であれば、訪問薬剤師さんや訪問看護師さん、ヘルパーさん、ケアマネさんたちと協働しながら介入していくのが効果的だなと実感しています。今日も、ある患者さんで、以前、訪問看護師さんとヘルパーさんに介入をお願いし、現在もよい薬剤アドヒアランスが保たれているのを確認しました。
 家族の協力も大切ですよね。認知機能の低下があっても、「くすりは自分で管理したい」という人は多く、それを医療者が何の配慮もなく、専門職やご家族にゆだねてしまうのはよくないことかなと思います。そのような際に、「家族のちょっとした見守り」で服薬アドヒアランスが良好になることもしばしば経験します。反面、以前、くすりの管理をご家族に全面的にお願いして、その方の認知機能がそれを機に急激に低下してしまったことも経験しました(どこまで関連したのかの根拠はありませんが・・・)。
 あとは、何より、不必要なくすりはやめ、できるだけ処方を単純化(もし可能なら1日1回に)することが大事かなと思います。

 以下は、以前に、薬剤アドヒアランスについてまとめたものです。参考に載せさせていただきます。

★薬剤アドヒアランスが低いことの弊害
Sheila A. Doggrellら(Drug Aging 2010)
 入院率の上昇:65歳以上の入院患者の11%、75歳以上の入院患者の26%が内服不良が原因

★アドヒアランス不良の要因
Osterberg L, Blaschke T. Adherence to medication. N Engl J Med. Aug 4 2005;353(5):487-497..Table 2より抜粋 一部改変
①患者本人の要因:
 ・認知機能の低下 ・精神疾患や抑うつによる拒薬 
 ・病識に乏しい ・自覚症状がない ・副作用の出現
 ・巧緻運動障害や嚥下障害による内服困難 
②医療者の要因
 ・内服薬の数が多く、用法が複雑 ・不十分な説明 
 ・医師-患者間の関係性が不良 ・不十分なフォロー
③社会的要因
  ・介護者不在 ・経済的負担 ・薬局までのアクセス不良

★(アドヒアランス向上のための)具体的な介入方法
NIH Public access Geriatrics. Author manuscript: available in PMC 2013 January 11.Table 4 より抜粋 一部改変
①認知機能が低下している患者への介入
 ・ピルボックスの利用 ・一包化 ・日常行為との関連付け
②病気や薬剤への理解が乏しい患者への介入
 ・口頭や書面での丁寧な説明 ・薬袋への用法の記載
③独居やケア提供者不在の患者への介入
 ・家族に内服介助の協力依頼 
 ・訪問看護や訪問薬剤師等の他職種との連携
④薬の内服方法が煩雑
 ・内服数の減量 ・用法の単純化



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