今回の記事では,6民判決は,COMに払戻の記録があることを理由に,③Hさん個人名義の通帳への入金・返済があったと判断しているのですが,そのおかしさについて解説します。
6民判決では,「同じ預金口座に入金があったり,その口座からの返済があったりする取引」があったと,COMをもとに判断しています。
ここで,COMというのは,中信側が提出してきた取引に関する電算記録のことです。
しかし,金融機関が作成した電算記録については,東京スター銀行に関する最高裁平成19年4月24日判決という判例があります。
その原審である東京高裁平成17年1月19日判決では,「金融機関が定期預金払戻等(債務の弁済)をした旨の取引明細表等,当該金融機関の取引に関する電算記録は,当該定期預金の払戻しをうかがわせる記録があっても,当該金融機関において作成されたものであるから,これのみによっては、弁済の事実を認めることはできない。」とされています。
したがって,そもそもCOM自体,払戻が有効になされたことを証する資料でもなければ,ましてや,預金者本人に対して払い戻されたことを示すものでもないのです。
しかも,中信側は,定期預金消滅について,COMの記録以外,なんらの主張・立証もしようとしていません。
こんな状況の下,6民判決は,COMに払戻の記録があることだけを理由に,③Hさん個人名義の通帳への入金・返済があったと判断したのです。
この判断は,上記の東京スター銀行判決と,明らかに矛盾します。
これで,11回にわたる京都地裁6民判決のおかしさの解説については,以上となります。
これらの記事からも明らかなように,6民判決は上訴審で取り消されるべき判決です。
大阪高裁によって,正しい判断がなされることを,私たちは期待しています。