“苦境に立つ日本のエレクトロニクス産業(三井物産戦略研究所:西野浩介)”と言うレポートを読んだ。
日本のエレクトロニクス業界がなぜ、これほどまで苦境に立っているか、その背景を探るとともに今後進むべき方向について書かれた論説レポート。
このレポートのポイントを簡単にまとめると、
赤字の原因は、テレビ事業の不振と巨額の構造改革費用
パナソニック・・・薄型テレビの販売不振と尼崎第三工場の稼働停止・固定資産減損
シャープ・・・薄型テレビの価格低下、国内販売の不振、液晶パネル市況の悪化に伴う稼働率低下、中小型液晶への転換に伴う構造改革費用
ソニー・・・薄型テレビ不振、サムソンとの液晶パネル合弁解消に伴う減損
なぜ、そうなったのか、その引き金は?
製品のデジタル化と製品アーキテクチャーのモジュール化。つまり、チップとパネルを調達して他の部品と組み合わせれば、複雑な設計作業を行わなくてもできてしまう。
その結果、
技術力による製品差別化ができなくなり、量を追求するコスト勝負に韓国、台湾、中国企業に敗れた。
じゃ、どうすれば良のか?、
既存のエレクトロニクス製品の機能強化や改善だけでなく、社会生活に革新や変化をもたらすエレクトロニクスの新たな道を探し出さなければならない。たとえば、日本では、少子高齢化が最も早く進行する。それに対し、高齢者が安全、安心、健康的な生活を送ることを支援するニーズの高まりを最も早く経験する。
日本メーカーにはその先頭を走り続けることが求められている。・・・
・・・とまあ、こういうことかな。
市場の成熟化と行動と思考回路の蛻変。
デジタル化すればするほど、避けては通れない道。ある一定限度まで技術が成熟化してしまうと、あとは、コスト競争になってしまう。・・・といって日本にスティーブ・ジョッブスのように独創的なモノづくりができる天才がでてくる可能性も低い。
ただ、悲観しても始まらない。
こういう時こそ、日本の強みの発揮・・・すぐに思い浮かぶのは “こだわり(繊細さ)とチーム力”・・・高齢化時代に必要なのは、細部へ行き届いた繊細な気配りとそれを実現する技術力。
ひらめき型天才はでてこないけど、3人寄れば文殊の知恵である。
過去の栄光や、過去のしがらみから脱却できると思えば、これほど良いチャンスはない。遺伝子そのものは変えられないけど、行動と思考回路は蛻変(ぜいへん)できるチャンス。
今回の危機は、強みの再確認と、行動と思考回路の蛻変という千載一遇のチャンス到来とも言える。