芳野星司 はじめはgoo!

童謡・唱歌や文学・歴史等の知られざる物語や逸話を写真付でエッセイ風に表現。

極右政権

2016年03月09日 | エッセイ
  
   約十年前(2006年9月26日)に書いた一文を見つけた。当然書かれている世界の政治状況 
   は大きく変化し、古くなっている。しかし今も有効な話柄もある。そのひとつ、私はその
   頃から安倍政権を極右政権と見極めていたようだ。 
        

 私の記憶が曖昧になっているが、近年の欧州において極右政党が相次いで躍進したおり、日本のマスコミはこのニュースを大きく取り上げたものだ。

 オランダの極右政党フォルタイン党は党首が銃弾テロで亡くなった直後に、大躍進し第二党となった。オーストリアではナチ党を濫觴とするオーストリア自由党が第一党となった。その若きリーダーはイエルク・ハイダーであった。ハイダーは連立とは言え政権を握ったのだ。その時は欧州各国から強い不快感と懸念が表明されたものだ。
 フランスではルペン党首率いる国民戦線が、共産党の二倍を凌ぐ得票を集め、大躍進を遂げた。彼等の総得票数は全有効票の14%を遙かに超えていたのだ。
 日本のジャーナリズムは、フランスの経済失政で失業者の不満が募り、移民を排斥するルペンの国民戦線が受け入れられたと解説していた。そしてEU内での「フランスの没落」と書く奴もいた。彼はシュペングラーの「西洋の没落」をもじったつもりであったろうが、日本に極右政権が誕生した今、「日本の没落」と諷するべきであろう。

 現に日本の没落が始まって久しい。経済もそうだが、アメリカ一辺倒の外交政策は、相対的に国際社会の中の日本の地位の低下と軽い侮蔑をもって見られている。アジア諸国の中では、完全に浮き上がってしまった。つまり日本離れが始まっているのだ。これを日本の没落と言わず何と評するのか。

 ついに日本に極右政権が誕生した。日本人は自らの実像を認識できぬ国民であるから、ぜひ海外から極右政権誕生への不快感や懸念を、相次いで表明してほしいものである。
 さて、シユペングラーは没後90年もたつ思想家である。彼が「西洋の没落」を書いたのは第一次大戦の頃であった。「西洋の没落」はまるで日本の現在を予言しているかのような歴史的名著である。シュペングラーはおおよそ、次のように書いていた。

 西洋文明は大地から離れた都市化された経済・社会空間の中で逼塞していくだろう。その都市的生活環境から来る社会的理由で、子供を産まぬ人が増え、また育てることも上手くない。こうして西洋文明の人口は減少するだろう。
民主主義は完全に空洞化し、知性は破壊されるだろう。これで危険はより一層増す。
 思想より貨幣経済が重んじられ、その貨幣経済は当然の如く伝統や文化から大きく乖離し、文明全体を支配するだろう。
 無制限な力を持った貨幣経済は思想を支配し、やがて無制限な戦争に突入するだろう。こうして、21世紀で西洋文明は滅びることになるだろう。…
 シュペングラーはまるで現在の日本のことを書いているようだ。日本のジャーナリストは批判精神を全く失い、知性は破壊され、民主主義は空洞化している。

 愚かな某テレビ局は、だいぶ前から準備したのであろう「安倍晋三物語」という、実にクッダラねぇドラマを得意気に放映した。かつて田中角栄が総理に選ばれた時、ジャーナリズムはこぞって「庶民宰相」と持ち上げ、少年漫画雑誌は「田中角栄物語」を掲載した。実体は庶民感覚とは乖離した「成金宰相」だった。
 やがて人々は知ることになるだろう。安倍晋三は極右であり、日本の悪鬼となるだろう。安倍晋三の組閣は第一次極右政権の発足を意味する。