サム・フィリップス

Sam Phillips / Fan Dance

　かのＴボーンバネットの奥方であるサム・フィリップス。夏ごろに出た新作もかなり良いものであったが3年前のこの作品が個人的には一番。

　木製レコードプレーヤーから流れ出すことが相応しいようなノスタルジックな音と、気だるそうでありながら力強い彼女のヴォーカルが独特の世界を作り上げている。ソングライターとしての能力も相当に高い。又、暗いながら強烈な自己主張を持ったメロディを際立たせる旦那のアレンジも絶妙で、不気味ともいえる妖しさを見事に演出している。

　さらに、女優業が良い意味で大きな影響を及ぼしているようにも思え、アルバム全体を包む空気はどこか演劇的でさえある。洋館、暗がりのフランス人形、夜の雨、そんなイメージが湧き上がってきそうな・・・。（歌詞無視）

　なんかオカルトチックでホラーで血みどろな言葉を並べてしまったが、基本はフォークなポップミュージック。ノスタルジックで妖しい雰囲気がいとおかしって感じの素晴らしい作品である。