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「日本は脱原発を!」米原子力規制委員会前委員長が発言

2013-11-05 17:54:47 | 放射能

Gregory Jaczko米原子力規制委員会(NRC)前委員長

9月29日朝のNHK『日曜討論』は、原発事故と今後のエネルギー政策に関する討論だったが、9月下旬に来日したグレゴリー・ヤツコ(Gregory Jaczko)米原子力規制委員会(NRC)前委員長の思考・発想との落差が目立った。

ヤツコ氏の発言は、主にインターネット・メディアで報じられただけで、肝心の日本政府や原子力ムラの人たちには届いていないようだ。氏の発言は事故を引き起こした当時国の我々日本人が基本的に考えていくべきことであり、日本人への真摯な助言であると受け止めるべきだ。

NHK『日曜討論』の出席者は、原発推進を公然と掲げる安倍内閣の茂木敏充経済産業大臣、国際環境経済研究所所長の澤昭祐さん、一ツ橋大学大学院教授の橘川武郎さん、それに脱原発の立場を鮮明にする明治大学非常勤講師の後藤政志さん。茂木大臣と澤所長は経済の上からも原発推進が当然との前提で議論を展開していた。

その中で、ひとり後藤さんが「原発の安全性と経済性を一緒にするべきでない」などと指摘したのが印象的だった。

それにしても、“脱原発となると職員の士気が落ちる(?)”“原発を維持して技術水準を維持することが必要だ”などといった澤氏の発言には驚いた。

澤氏は元通商産業省課長・東大教授だが、まさか心理学者でもあるまい。あの発言は、いかなる根拠での出たのか(脱原発を決めたドイツでは廃炉作業が進んでいるが、関係職員の士気の低下などの問題は出ていない。それどころか、21世紀はいずれにせよ原発運転停止と廃炉が避けられないと見通し、原発の安全な解体・廃炉、放射性廃棄物の安全な処理技術で世界の指導的な地位に立とうとの意志がうかがえる)。

ヤツコ氏は福島第一原発事故の後、米国内の原発の安全性の向上に尽力した人物だ。しかし、他の規制委員たちが厳しい規制に反対し、電力業界などの圧力も受け、昨年6月に規制委員会を去った。今回は、NPO原子力資料情報室の招きで来日し、「日本は脱原発を進めるべき」との見解を明らかにした。

以下は氏の発言要旨(順不同・カッコ内は筆者)。

(1)汚染地下水流出問題では、東京電力の対応能力のなさを国際社会が改めて懸念を深める結果に。汚染地下水流出問題は、2年前の事故の直後からわかっていたことで今に始まった問題ではない。日本政府は何故もっと早くから問題解決に乗り出さなかったのか不思議でならない。

(2)(これほどの深刻な原発事故を引き起こしながら、肝心の)事故収束がおろそかにされていたようで、日本では再稼働にばかり関心が集まっている。アメリカ政府も含め、国際社会も事故収束の必要性を一層意識して来ているのに。(まして)事故原因の究明も出来ていないのに再稼働審査が行われている。日本は考え方を根本的に改める必要がある。

(3)(汚染地下水問題をはじめ)福島原発事故の課題は、明日や1カ月などで消えるわけではない。課題は何年も何十年も福島原発が廃炉になるまで続くだろう。

(4)日本の原子力事業自体への国際的な信頼が揺らいでいる(それなのに日本政府は原発再稼働や原発輸出などと言っている)。

(5)アメリカは、スリーマイル島原発事故から、“避難の経路が非常に脆弱だった”との教訓を学んだが、日本の原発業界は安全・危機管理にこの事故の教訓が生かされなかった。

(6)日本は“原発事故は起きるもの”との前提に立つべき。その上でいかにして深刻な事故を防げるか、公開で討論するべきだ(専門家会議などで国民を誤魔化すべきではない)。

(7)(原発稼働中は)今回の事故の教訓を踏まえ、住民一人の避難者も出してはいけない、原発周辺や海を汚染させてはいけない、という(決意で)新しい安全基準を打ち出すべきだ。

(8)核分裂エネルギーによる発電は経費が高くつくし、壊滅的な事故が起きる危険を伴っている。100年後にはなくなってほしい(日本では相変わらず原子力ムラが‘燃料輸入費用がかかり、原発なしでは電気代が高くなる’、供給体制を解体し、発送電分離と自由競争市場にすることを考えるべき)。日本人は人材と技術を動員し、より良い発電方法を開発して世界を主導してほしい。

ところで、ヤツコ氏を規制委員会から追い出したアメリカ原子力産業界だが、1979年のスリーマイル島原発事故以来、新規の原発は1基も建設されていない。アメリカの原発は一時104基あったが、逆に2012年以降、古い原発の廃炉が相次いで決まっている。ヤツコ氏が委員長を辞任した直後、NRCは核廃棄物の最終処分の基準が決まるまで、新規原発建設や稼働期間の延長を認めない決定を出している。

安価なシェールガス生産の増大、などの経済的な理由ではない。この背景には原発推進にともない、必ず蓄積される(危険な)高レベル放射能廃棄物処分場が、広いアメリカでも決まっていない事情がある。誰も、どの州も受け入れたくない事情があるからだ。アメリカでも原発を取り巻く環境は厳しくなる一方である。

 

小泉元首相、横浜市内で講演 自らの発言に対する批判の声に反論

小泉元首相は3日、神奈川・横浜市内で講演し、脱原発の必要性をあらためて主張したうえで、自らの発言に「無責任だ」と批判する声が上がっていることについて、「原発をやっていけると考える方が無責任だ」と反論した。
小泉元首相は「『原発ゼロは無責任だ』という批判(があるが)、(福島第1原発)事故があったあとも、今も、処分場のめどをつければ、『原発はやっていけるんだ、やらなきゃならないんだ』と考える方が、楽観的で無責任じゃないかと思っているんです」と述べた。
講演で、小泉元首相は「使用済み核燃料の最終処分場建設のめどがつかないから、もう原発は無理だ、ゼロにしろと言っている」と述べ、脱原発を重ねて主張した。
そのうえで、「処分場のめどがつけば、原発をやっていけると考える方が、楽観的で無責任だ」として、自らの発言に対する批判の声に強く反論し、「原発ゼロの国家建設に向かって、自分なりに頑張っていこうと思う」と強調した。

 


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