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統合失調症患者では大脳皮質の分子「KCNS3」が減少している - 金沢大など

2013-10-31 22:54:04 | 統合失調症


金沢大学は10月25日、米・ピッツバーグ大学、米・ブリストルマイヤーズスクイブとの共同研究により、ヒト死後脳を用いた研究を行い、統合失調症患者の大脳皮質で「KCNS3」と呼ばれる分子が減少していることを発見したと発表した。


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成果は、金沢大 医薬保健研究域医学系 脳情報病態学の橋本隆紀准教授、同・医薬保健研究域医学系のDanko Georgiev氏(2013年3月まで)、同・三邉義雄教授(金沢大子どものこころ発達研究センター長兼任)、金沢大子どものこころ発達研究センターの菊知充特任准教授、ピッツバーグ大精神医学部門のDominique Arion氏、John F. Enwright、Dav id A. Lewis氏、ブリストルマイヤーズスクイブ 応用遺伝学部門のJohn P. Corradi氏らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部標準時間10月30日付けで米精神医学専門雑誌「American Journal of Psychiatry」オンライン版に掲載された。

代表的な精神疾患である統合失調症は、幻覚や妄想に加え、注意や思考などの認知機能に障害を引き起こすが、この認知機能障害に対しては効果的な治療法が現時点では確立されていない。認知機能を司る大脳皮質には、ほかの神経細胞の活動を抑える抑制性神経細胞の1種である「パルブアルブミン陽性細胞」(画像1の緑色の球)があり、周囲の多くの神経細胞(画像1の青色の三角形)の活動を同期させ、脳の活動に周期性を与えることで、情報処理を促進し認知機能を支えている。しかし統合失調症では、周期性脳活動の異常が多く報告されており、そこに問題があるというわけだ。

精神疾患の治療法の開発には、病気の症状を引き起こしている脳の変化を分子レベルで解明する必要がある。そのために重要なことの1つが死後脳の研究だ。現在、米国やオーストラリアでは、大規模な死後脳バンクが整備されており、今回の研究は、死後に遺族の同意により提供された脳が保存されているピッツバーグ大精神医学部門の死後脳バンクを利用して行われた。

統合失調症患者22名と性別や年齢などの条件が等しい健常者22名から前頭前野と呼ばれる大脳皮質の部位を切り出して、分子生物学の手法で解析を実視。すると、統合失調症ではKCNS3の発現量が23%ほど低下していることが判明した(画像2)。さらに、別の統合失調症患者14名と健常者14名の前頭前野からパルブアルブミン陽性細胞のみを顕微鏡下に切り出しての解析も実施され、その結果、統合失調症ではKCNS3の発現が41%ほど低下していることが確認されたのである。

KCNS3は、パルブアルブミン陽性細胞の膜に存在する分子で、細胞の中と外をつないでカリウムイオンを通すゲート、つまり「カリウムイオンチャネル」を構成している。KCNS3が作るチャネルは、パルブアルブミン陽性細胞による神経細胞活動の同期化を促進し、周期性を持つ脳活動の形成に役立っていると考えられるという。

KCNS3の減少は、周期性脳活動の異常の背景にある分子変化であり、認知機能障害に結びついていると推察されている。今回の発見により、低下しているKCNS3を活性化することが統合失調症の認知機能障害を改善させる可能性が示され、今後治療法の開発につながることが期待されるとした。

統合失調症 - Wikipedia

ja.wikipedia.org/wiki/統合失調症

自閉症と予防接種にまつわる迷信

2013-07-18 20:56:25 | 統合失調症

2008年6月、ある集会の場で、幼児用の有害な予防接種ワクチンの根絶を呼びかける女優のジェニー・マッカーシーさん。 (Photograph by Jose Luis Magana AP)

 すべての間違いの始まりは、アンドリュー・ウェイクフィールド医師を主要執筆者とする13人の研究者が、1998年に医学雑誌「Lancet」で発表した論文だった。自閉症の原因を、幼児期に受ける一般的な予防接種に求めた研究結果は結局、ねつ造と判明。同氏は2010年にイギリス政府から医師免許を剥奪されている。

 しかしこの誤った論文が発表されてから10年以上、アメリカの多くの親たちは不安を募らせ、子どもの予防接種を拒むようになった。1994年に「Play Boy」誌の年間プレイメイトに選出され、モデルや女優として活躍する傍ら、人気トーク番組「The View」の進行役に今年抜擢される予定のジェニー・マッカーシーさんも、親たちの不安を煽る発言や活動を行っている。自閉症の息子を持つ彼女は、著書『言葉よりずっと大切なもの~自閉症と闘いぬいた母の手記~』の中で、世界中で増加する自閉症は幼児期の予防接種が原因であると指摘した。

「もちろん彼女には自分の考えを口に出す権利がある。だが、根拠のない説を事実であると述べるのは間違っている」と、ロサンゼルスのシダーズ・サイナイ医療センターで臨床革新部門の副部門長を務めるグレン・ブラウンシュタイン(Glenn Braunstein)氏は話す。「火の手が上がっていない映画館で、“火事だ”と叫ぶような行為だ。いたずらに恐怖を煽ることとなんら変わりない」。

 しかし、誤った解釈はその後もますます広がっていった。連邦議会で公聴会が開かれたほか、1988年に設立された全米ワクチン被害補償プログラム(VICP)に対し、5000人以上の親が、予防接種のワクチンで自分たちの子どもが被害を受けたと訴えている(その後の裁判では、ワクチンと自閉症に関連性を認めない判決が下っている)。子どもの予防接種を拒む親が増え始め、延期する場合も含めると、2003年には22%、2008年には40%まで膨れ上がった。その結果は言うまでもなく、はしかやおたふく風邪、百日咳が数十年振りに全米で流行することになる。

◆誤った解釈

 騒動の発端となったアンドリュー医師の研究は、発表の翌年の段階で早々に問題点が指摘されている。イギリス保健省がまとめた2つの研究では、予防接種と自閉症に関連性を示す証拠はないとの結論が下された。2001年には、連邦議会に助言を行っている米国医学研究所(IOM)の専門家チーム15人が、はしか、おたふく風邪、風疹用の三種混合ワクチン(MMRワクチン)と自閉症には因果関係はないと証明。また2004年にも、イギリス保健省が同様の研究結果を発表している。

 収拾に向かう動きはその後の約10年間も見られなかったが、今年4月に「The Journal of Pediatrics」誌に発表された論文が、誤った医学研究に端を発するこの誤解に終止符を打つことになるかもしれない。1000人の幼児を対象に行った調査で、2歳までに受けたワクチンには自閉症の原因となるリスクは存在しない、と結論付けている。

 できれば「The View」の新しい進行役にも、事実に基づいた正確な論調を期待したいところだ。フィラデルフィア小児病院で感染症研究部のチーフを務めるポール・オフィット(Paul Offit)氏も賛同する。「冷静に考えれば、この議論はもう終わっている。考えられる疑問にはすべて答えが出ているし、予防接種の回数や時期も含め、自閉症とワクチンには何の関係もない。医学的にも証明されている」と語る。

 では、昨今の自閉症の増加は何が原因になっているのだろうか。「確かなことはわからないが、特に重要なのは遺伝子データだ」とオフィット氏。脳の発達に不可欠ないくつかの遺伝子が、母親の子宮内にいる段階での幼児の発育異常とリンクしている可能性があるという。また子どもの発症リスクは、父親の年齢に比例するとの研究結果も発表されている。この病気の認知度が高まり、定義が広がったことも、症例の増加要因になっていると考えられる。

 原因究明のためには、今後も調査・研究を重ねる必要がある。しかしワクチンとの関連性は既に調査し尽くされており、今さら議論を蒸し返しても誰のためにもならない。