今回はウエストコーストを代表するベテランR&Bグループのザ・ウィスパーズが、初めてベイビーフェイスと組んだ珠玉のバラード「In The Mood」を紹介します。
ザ・ウィスパーズと言えばディスコクラシックスとして名高い「And The Beat Goes On」(1980年全米R&Bチャート1位)のヒットで知られていますが、長年在籍したSOLARレーベルからのラストアルバム『Just Gets Better With Time』(1987年)では、当時のレーベルメイトだったザ・ディールのケニー・エドモンズ(ベイビーフェイス)が2曲のソングライトとプロデュースを担当。
1曲はアルバムからの1stシングルとなった軽快なダンスナンバー「Rock Steady」(1987年全米R&Bチャート1位)で、後にヒットするボビー・ブラウンの「Every Little Step」や、ポーラ・アブドゥル「ノックト・アウト」にも通じる軽やかなサウンドが特徴です。
そしてもう1曲が当時のレコード盤ではB面の1曲目に収録されていたバラードナンバーの「In The Mood」。豊穣なワインがグラスの中でゆったり揺れているようなアーバンで心地いいサウンドに、"スコッティ"・スコットの優しいヴォーカルが溶け込んで、まさに円熟の香りをたたえるベイビーフェイス最高のプロデュースワークと言えるのではないでしょうか。
アルバム『Just Gets Better With Time』からは3rdシングルとしてカットされ、全米R&Bチャート16位をマーク。個人的にはもっとヒットしてもいい曲だと思うのですが、なんたってマイケル・ジャクソンのアルバム『Bad』が全盛を振るっていた時代なのでツラいですよね…。
とは言え、個人的評価☆☆☆☆☆(五つ星)の名作です。
ちょっと余談になりますが、全世界で2000人ぐらいにしか発行されてないと言われてるAMEXのブラックカード(プラチナよりも上のランク)をベイビーフェイスは持ってます。来日の機会に渋谷の大手家電ショップで日本製パソコンを買おうとブラックカードを出したところ、見たことのないカードに店員さんはビックリ、日本のレジスキャンも通らず、AMEXに直接問い合わせて承認を出してもらいました。レジで清算を待っていたベイビーフェイスの周りはあっという間にファンの人垣。承認が出るまでレジは臨時のサイン会場状態になったそうで、ベイビーフェイスはていねいにサインに応じたとのこと。
1997年、ザ・ウィスパーズはベイビーフェイス作のヒット曲でつづるカバーアルバム『ソングブックVol.1 ~ザ・ソングス・オブ・ベイビーフェイス』を発表。日本では(アメリカでも)まったく売れませんでしたが、すごく上質なアルバムなので機会があったらぜひ聴いてみてください。
■ザ・ウィスパーズ■
双子のウォルター&ウォレス・"スコッティ"・スコット兄弟を中心にカリフォルニアで結成された5人組ベテランR&Bグループ。1964年からレコーディング活動をスタートし、SOLARレーベル移籍第4弾アルバム『The Whispers』(1980年)から「And The Beat Goes On」が初の全米R&Bナンバーワンを獲得。1993年にはスコット兄弟二人だけのアルバム『My Brother's Keeper』(Walter & Scotty名義)もリリースしている。