はとるのメモ帳

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薔薇の復讐

2007-01-04 20:45:09 | 映画とかドラマとか音楽とか
 まずはキャラクター相関図から。
 ハッチングされてるのが今回の話の登場人物です。

永遠の戦士エルリック第3巻収録の2つ目の話です。
ここ数年のファンタジーものなんですが「ありえない話」から「あるかもしれない話」に
流行が移ってきているらしいです。
ムアコックの世界観もその例に漏れず「あるかもしれない話」へ移行してきています。
その移行時期に書かれたのが本作です。

ムアコックの「ありえない話」と「あるかもしれない話」の違いですが
以前から話してるようにエルリックの話は多次元宇宙という幾つもの並行世界があり
それをまたがって冒険しているという物語です。
『ありえない話=別世界の話』なんですが、この多次元宇宙の中に私たちの現実世界が
取り込まれてしまいました。つまり、現実世界の一部が物語の中に登場します。
現実世界を含めた並行世界をまたがって冒険するので「あるかもしれない話」と
世界観が変わってきているのです。

あらすじ(ネタバレ注意)『

タネローンを一人旅立ったエルリック。
ある土地でアーネスト・ウェルドレイクという詩人に出会う。
ウェルドレイクは次元間を旅してきたという。
二人の前にかつてメルニボネに居た竜が現れる。
竜使いの技術を持つエルリックはその竜に乗ると別次元に連れて行かれる。
そこは1万年前にイムルイルの他に栄えていたメルニボネの都市フィシャンだった。
廃墟フィシャンにはエルリックの父王サドリックの幽霊が居た。
メルニボネ王族の魂は死すとアリオッホのものとなるのが古からの契約だった。
混沌の神アリオッホとマシャバクが争う隙にをアリオッホを謀り
魂をローズウッドの小箱に収めたのだがその小箱が行方不明になってしまったという。
その小箱を探して欲しいとサドリックは言う。
竜が小箱のある次元にエルリックを導く。そこでウェルドレイクに再開する。
二人が野営していると<呪われし者>ゲイナーと名乗る甲冑の戦士に会う。
ジプシー国へ向かった三姉妹を探しているという。
ゲイナーと分かれた二人は宿屋で<薔薇(ローズ)>と名乗る女戦士に出会う。
<薔薇>はウェルドレイクの詩を知っていて、さらに三姉妹を探していた。
3人でジプシー国に向かうことにする。ジプシー国とは巨大な台車(それも数百台)の
上に乗る、移動しつづける国だった。3人はジプシー国で千里眼のファット一家に出会う。
しかし、混沌の神マシャバクに仕えるゲイナーが底なしの穴の上に掛かる橋を落とし
ジプシー国は次々に穴に飲み込まれる。三姉妹を追って穴に飛び込む<薔薇>と
千里眼のチャリオン・ファット。さらにそれを追って飛び込む千里眼の一族たち。
エルリックも飛び込み永遠の落下と思われたが、アリオッホに別次元に飛ばされる。
その次元でまたもウェルドレイクに再開する。落下から1年が過ぎていた。
エルリックは三姉妹が<重い海>に向かったことを知る。
船着場には、ゲイナーとその船がありチャリオンも一緒だった。
三姉妹を探すという目的の為に不本意ながら同行することになった二人。
重い海の水先案内を果たす男はエスバーン・スネアといった。
かつて妻と幸福な生活を送っていたが村を守る為に人狼の呪いを受け不死となっていた。
止まってるように遅い波の間を抜け三姉妹のいる陸地に辿り着く。
エスバーンはそこでゲイナーから妻が既に死んだことを聞かされる。
3姉妹は東に向かっていると見通したチャリオンは家族を探すため別行動を宣言し、
それについていくウェルドレイク。一方、エルリック、ゲイナー、エスバーンの3人で
3姉妹を追う。生物が何もない土地を進む3人。
エスバーンはついに飢えのために狼となってしまい、どこかに去る。
その先で、アリオッホがマシャバクをエクトプラズム球に捕らえて待っていた。
主を捕らえられたゲイナーはアリオッホに忠誠を誓うが、狼となったエスバーンが
アリオッホの喉元に喰らいつき、次元からアリオッホを自分もろとも追放する。
そして死を得るエスバーン。愛する妻の魂の元へ旅立っていった。
アリオッホの怒りのための次元嵐でまたも別次元に飛ばされるエルリック。
飛ばされた先には、またもウェルドレイクがいた。
さらにチャリオン他のファット一家と<薔薇>そして三姉妹と出会う。
三姉妹を追うゲイナーを<薔薇>が追い払ったところだった。
しかし、ローズウッドの小箱などの宝はゲイナーに奪われていた。
<薔薇>はかつてゲイナーに騙されて滅んだ一族の最後の生き残りだった。
そして三姉妹が探していたのはエルリックとストームブリンガーだった。
混沌の軍勢に対抗するために三姉妹に従い儀式を行いストームブリンガーの
分身ともいうべき3振りの剣を作り出す。
エルリック、<薔薇>、チャリオン、そして3姉妹は剣を取り
ゲイナー配下の混沌の軍勢に立ち向かう。軍勢の大半を撃退するもゲイナーは
先が二股に霧状に分かれた黒と黄色の剣、吸血剣で立ち向かってくる。
吸血剣は、ストームブリンガーやその姉妹の剣から力を奪い取る。
エルリックは<薔薇>の助けをかり草木の聖霊<もつれし女>を召喚して
ゲイナーの吸血剣を打ち消し、軍勢を全滅させる。ゲイナーは船に逃げ戻る。
船に向かうと、ゲイナーはマシャバク神のエクトプラズム球を捕らえていた。
ゲイナーこの次元のアリオッホの後釜となり支配を目論んでいたのだった。
<薔薇>の言を聞き入れアリオッホを召喚するエルリック。
アリオッホは、エルリックの父王サドリックの魂の契約を放棄しゲイナー連れ帰っていく。
3姉妹は取り返した<茨の指輪>を剣尖に付け、エクトプラズム球を剣で持ち上げる。
エルリックはマシャバク神の心臓にストームブリンガーを突き刺し、マシャバク神の魂を
ローズウッドの小箱に収める。一方、サドリックの魂は一本の薔薇の花となっていた。
かくして、一族を滅ぼしたゲイナーはアリオッホに捕らわれ永遠の罰を受けることになり
マシャバク神の魂の力で破壊されたこの次元の復興を3姉妹はするという。
ウェルドレイクと婚約したチャリオンは、家族とともにウェルドレイクの故郷に向かい
竜に乗って薔薇の花をサドリックの届けたエルリックは父王の成仏を見届ける。
そして<薔薇>と竜に乗ってタネローンへと向かった。



以上。単独の話としては見事な大団円を迎えます。

タイトルの薔薇はどれだったのでしょう。
キャラクターの<薔薇>、サドリックの魂の薔薇、ローズウッドの小箱。
キャラクター<薔薇>の復讐、ではあるんでしょうが
自然の力、善悪の力など相まって象徴的に描かれています。
混沌の力で破壊された世界をその力を持って復興に役立てると3姉妹は言います。
これも<薔薇>の描いた復讐劇の筋書きです。
力そのものには善悪は無く、その使い方が善悪となる。哲学的な話ですね。

今回の話と『真珠の砦』がムアコックのエルリックサーガの実際に書いた時期では
中期的な話です。今までに紹介した話はそれ以外は初期の作品です。
このため、文章の雰囲気がその2作品だけは異なっている気がします。
(後期作品はまた一段と雰囲気が異なります^^;)

特にビジュアル的な描写が難しい。
初期の作品はビジュアルをビジュアルに描写しています。
(要するに、よく読めば想像が出来る描写です)
ところが中期作品は、読んでも雰囲気しか伝わってこない描写が多々出てきます。
(要するに、読者の想像任せ)
「言葉で言い表せない」ものが物語に描かれているのです。
これがまた神秘的な雰囲気を出す楽しみの一つでもあります。

次回「魂の盗人」
自らが滅ぼしたメルニボネの生き残りの民とエルリックは出会います。


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