歌う城砦

題は「永遠の戦士エルリック」第2巻収録の最後の話です。
時間的には、この前の「神々の笑うとき」の直後の話になります。

キャラクター相関図を更新しました。

エルリックは「永遠の戦士」の一つの転生の姿です。
他の姿には、コルム、エレコーゼなど別の小説の主人公となってる者たちがいます。
このムアコックの世界観で、転生して別の姿を取る者が他に居ます。
それが「英雄の介添人」であり、ムーングラムはその一つの姿です。
この者（たち）は「永遠の戦士」と供に戦う宿命を持った者です。
エレコーゼのように転生前の記憶を持っている場合もあります。
「真珠の砦」の夢の中に現れたジャスパー・コリナドゥスもその一人でした。

あらすじ（ネタバレ注意）『

エルリックとムーングラムは船でジャーコルの首都、ダコスに向かっていた。
ジャーコルの先王はイムルイル襲撃に加わった一人だが、その際に命を落としていた。
海上で、パン・タンの海賊に船が襲われる。
しかしエルリックは魔剣を存分に奮い、海賊の船を乗っ取る。
ダコスに付くと奴隷を解放し、船の売却をムーングラムに任せエルリックは宿を取る。
宿の酒場で一人飲んでいると、女王イシャーナの使いがエルリックを迎えに来る。
エルリックは用があるなら女王にここに来い、と話を断る。
パン・タンの魔術師セレブ・カーナの手におえない事件の解決をエルリックに
頼むというのが女王イシャーナの話だった。
話によると、国内のある村で村人をさらう謎の騎馬隊が現れたという。
イシャーナは山賊と思い、何度も討伐隊を出すが誰も帰ってこない。
結局、女王自ら出陣すると、煌びやかな城砦を発見する。
そこから歌声が聞こえたとき、セレブ・カーナが急いで離れるように叫ぶ。
離れたものは助かったが、多くのものは城砦に誘われるように入っていってしまった、と
いうことだった。エルリックは、翌日イシャーナとセレブ・カーナと供に城砦に向かう。
城砦は＜混沌＞の神の道化バロのものだった。
エルリックの魔法の力でバロを元の世界に送り返すことは出来ないが
ともかく城砦に向かう3人。城砦に近づくとやはり、歌声が聞こえてきた。
セレブ・カーナは逃げ、イシャーナは歌声に捕らわれる。
イシャーナを追って城砦に入るエルリックだが城砦に入る直前にイシャーナを見失う。
城砦を恐れる馬を置いて徒歩で侵入し、迷いながらもバロの前に辿り着く。
バロは＜混沌＞の神々から逃げてきた、という。
エルリックはここで＜混沌＞の神アリオッホを召喚する。
アリオッホはバロを元の世界に戻し、自分も帰る。
後に残されたのはエルリックとイシャーナ、多くの兵隊たちだった。
帰路につく一行だが、そこを巨大な蝶の怪物が襲う。
疲労困憊のエルリックは苦戦するものの、そこに助太刀ムーングラムが現れる。
イシャーナの助けを借り、魔法で爬虫類の王ハーシャースタークを召喚し怪物を倒す。
怪物はセレブ・カーナの召喚したものだった。
疲れきったエルリックはそのまま倒れ、ダコスで二日間眠りつづける。
目がさめたエルリックは、イシャーナから新国王になるように頼まれるが断る。
そして同様に魔法で消耗しきっていると思われるセレブ・カーナに復讐する為、
ムーングラムと供にセレブ・カーナのもとに向かう。
しかし、既にセレブ・カーナはパン・タンの街に逃げていた。
エルリックは、パン・タンに向かうことにした。

』

この話でエルリックが自己をこう分析しています。
「世事に無関心－しかして執念深し」。
自分に関わりを持つと不幸になるから関わるな、しかし恨みは忘れない。
こんな感じでしょうか？
この話の最後でエルリックはイシャーナから求愛されるが断ります。
「神々の笑うとき」のシャーリラ同様、愛情を拒否するのです。
かつて自分が愛したサイモリルが忘れられないのに加え、罪の意識から愛を拒絶するのでしょう。
故郷を自らの手で滅ぼし、愛を受け入れることのできないエルリックにとって
目の前の生きることの目的を「復讐」としてしまうのも無理ないかもしれません。
また、パン・タンは魔術師の町で、セレブ・カーナはそこの名のある魔術師です。
メルニボネが無くなった今では最高の力を持つ魔術師の一人と言ってもいいでしょう。
もちろんエルリック自身も、比肩しうる魔術師です。

次回予告「暁の女王マイシェラ」
エルリックはセレブ・カーナを追って更なる冒険に巻き込まれます。