ハーベスト・タイム『収穫の時』

毎月発行の月刊紙『収穫のとき』掲載の聖書のお話など。

愛の随想録(5)「人生に偶然はない」

2007-05-06 | 愛の随想録
◆5月号◆愛の随想録(5)「人生に偶然はない」

 三月末に、ハーベストUSA放映二十周年記念のために渡米した。幸いなことに、多くの方々の奉仕によって、セミナー(世界の三大宗教)、チャリティ・ゴルフ・トーナメント、記念バンケットの三行事すべてが成功に終わった。ご協力くださった皆様に、この紙上でお礼を申し上げます。
 今回の目玉であったチャリティ・ゴルフ・トーナメントは、中嶋常幸プロの協力によって大いに盛り上がった。中嶋プロの奉仕の姿勢は、とにかく手抜きがなく、一生懸命である。ゴルフをプレーする時の姿勢が、そのまま出ていた。このトーナメントに参加した方は百二十名ほどであったが、全員が楽しんでくださったと思う。


中嶋プロの講演
 プレー後のディナーでは、中嶋プロの講演があった。話題はゴルフが中心であるが、その中には人生についての教訓が多く含まれていた。特に印象に残った言葉は、「クリスチャンに偶然はない。すべて必然である」というものである。中嶋プロの体験から出た言葉だけに、実に説得力があった。
 中嶋プロは、最近のものまで含めると過去に四度のスランプを経験している。他人には言えないような苦しみがあったことであろう。しかし、「クリスチャンに偶然はない。すべて必然である」という真理を受け取った時、試練の中に必ず意味があるという確信を持つことができたそうである。その確信によって、中嶋プロは不死鳥のように甦った。
 普通は、プレー後のバンケットはざわつくものであるが、この夜は出席者全員が真剣に講演に耳を傾けていた。
 講演の後、いよいよ表彰式と、くじ引きの時間になった。ここで、驚くべきことが起こった。数々の豪華景品が用意されていたが、その中にノースウエスト航空提供の「日本行き往復チケット」があった。中嶋プロが箱の中に手を入れ、よくかきまぜてから当たりくじを引くと、なんとそれがハーベストUSAのスタッフであるR姉に当たった。もちろん彼女は大声で喜びを表現したが、叫び声を上げたのは彼女だけでなかった。背後の事情を知っている者たちも、「すごい、すごい」を連発したのである。
 実は、R姉は四月十日付けでハーベストを退社し、ラスベガスの娘さん一家と生活する予定になっていた。これまで十二年以上(理事の年数も含めると十五年)にわたって、忠実にハーベストUSAで働いてくださった。この往復チケットは、神様が彼女に、「よくやったね。これはあなたへのプレゼントだよ」と語られたものだと直感した。中嶋プロも、「クリスチャンに偶然はない」という話をした直後だったので、ことの展開に喜んでおられた。私もまた、喜びと同時に厳粛な思いに満たされた。まさに、「クリスチャンに偶然はない」のである。

試練を歓迎する
 試練にどのように対処するかは、抽象的な概念ではなく、極めて個人的で現実的な問題である。同じ試練に会っても、それをどう受け止め、そこにどのような意味を付与するかで、結果は大きく変わってくる。「自分の人生に起こることに偶然はない。すべて必然である。そして、必ず最高の結果が与えられる」という確信を持ったなら、不必要な悩みは消えてなくなり、新しい視点が開かれる。
 イエス・キリストの弟のヤコブは、このように書いている。
 「私の兄弟たち。さまざまな試練に会うときは、それをこの上もない喜びと思いなさい」(ヤコブ1・2)
 試練そのものを喜べというのではない。試練の中にあって喜べというのが、その趣旨である。つまり、試練を喜びの土台とせよというのだ。試練そのものは決して喜べるようなものではない。しかし、試練が最終的にもたらすものは、忍耐、信仰、そして人格の成熟などである。それを思って喜べというのである。

マイナスをプラスに変える人生
 ここで、興味深い実話をご紹介する。経済学者のスティーブン・レビットとステファン・ダブナーが、非常に興味深い本を著している(原題は"Freakonomics"であるが、とりあえず『風変わりな経済学』とでも訳しておく)。その本の中で彼らは、子どもに対して親が親権を発揮する最初のケースは、名前を付ける行為であると書いている。それに関連して紹介されているのが、次の実話である。

 名前というものは、その子に大きな影響を与えると多くの人が指摘しているが、例外もある。レイン兄弟の例がそれに当たる。
 一九五八年にレイン一家に長男が誕生した。父ロバートは、その子を「ウィナー(勝者)」と名づけた。「ウィナー・レイン」という名を与えられたその子の将来は、成功が保障されたようなものだ。
 数年後、レイン一家に次男が誕生した。どういうわけかロバートは、次の子には「ルーザー(敗者)」という名を付けた。そういう哀れな名を持った子の将来は、不幸なものになるに違いない。誰もがそう予測した。
 しかし、予測に反して「ルーザー・レイン」は成功した。大学を卒業した彼は、ニューヨーク警察の部長になった。今では、彼のことを「ルーザー」と呼ぶ人はいない。誰もが彼を「ルー」と呼んでいる。
 では、長男の「ウィナー」はどうなったのか。今彼は四十代後半になっているが、投獄されたこと以外に特筆すべき事項がないのだ。逮捕歴は、三十数回にもなっている。夜盗、家庭内暴力、不法侵入、公務執行妨害、傷害、などが逮捕の原因である。
 人生とは面白いものである。「勝者」として人生を始めた者が失敗し、「敗者」として人生を始めた者が成功しているのだ。前者は傲慢のゆえにつまずき、後者は謙遜のゆえに上に引き上げられた。人生の勝利者になれるかどうかは、置かれている環境によってではなく、与えられた条件をどう受け止め、それにどういう意味付けをするかで決まる。

 「神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています」(ローマ8・28)