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詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

狂言風オペラ『フィガロの結婚』観世能楽堂

2018-03-20 17:16:22 | 日記
渋谷の松濤にあった観世能楽堂が、銀座のど真ん中「銀座シックス」に移転して、いつかは訪れてみたいと思っていた。歌舞伎や文楽が好きだといっても、長期公演するわけではないので、能や狂言には、それほど親しんでいる訳ではない。オペラは好き。呂太夫は大好きという事で、事前情報もなく勢いでチケットを購入してしまった。平日公演は本当は辛いのだけれど。

観世能楽堂は地下3階にあった。以前の能楽堂と違い、長方形に近く脇正面や中正面の席は少ない。橋掛りも短い印象。今回は幕で隠されていたけれど、鏡板には老松が描かれ、一の松、ニの松、三の松、屋根ももちろんあった。

『フィガロの結婚』といっても歌手が出演するわけではない。あくまでも狂言の形式をメインにして、スイスからやって来た管楽八重奏➕コントラバスが橋掛りに一例に並んで演奏。ホルン、オーボエ、クラリネット、ファゴットが各2本。能舞台に上がるので黒シャツ黒ズボンなのに全員が白足袋だった。

主要な登場人物は、オペラでいう伯爵、伯爵夫人、フィガロ、ケルビーノ、スザンナ、バルバリーナだけで、後の人物はカット。

ケルビーノの追放までが前半。伯爵夫人とスザンナが入れ替わって伯爵を懲らしめ、ハッピーエンドを迎えるのが後半。管楽アンサンブルはBGM的な使われ方だけれど、モーツァルトから付かず離れずで、程の良い演奏だった。

在原業平の子孫という在原平平(ひらひら)を呂太夫が語り、勘十郎が人形を遣うという豪華版。かなりセクハラもどきの振る舞いをするけれど、人形なので下品にならないけれど、けっこうナマナマナマしい。

呂太夫は、こうした喜劇味のある役は独壇場で、ここまで面白く語れる人は文楽の中では唯一の存在だと思った。先日発表された国立劇場文楽優秀賞も受賞され、こらからの舞台成果を大いに期待し応援していきたいと思いました。

三味線は友之助。モーツァルトを弾いたり、コント風にズッコケたり、なかなかの活躍で文楽の若手三味線では注目していい人かもしれない。文楽と違い、太夫と三味線の位置が逆だった。

伯爵夫人にあたる語れる北の方 橘の上は、能の赤松禎友。能装束に面を着けての演技。モーツァルトの音楽にのって舞う姿は本当に美しく、その悲しみが直に伝わってきて感動的だった。

狂言陣は舞台に止まらず、客席からも登場、身のこなしは、明らかに狂言で台詞も狂言風なのだけれど時事ネタも織り込んで自由自在で面白かった。女性の役も男性が演じるが、歌舞伎ではないので、女性らしい仕草や発声は一切なし。潔くて好き。

オペラが好きで、文楽が好きで、狂言も能にも親しんでいる自分のような観客には、もってこいの舞台。オペラより短いし。その一方で中途半端とか、異端とかいう批判は常について回りそうな気もする。『フィガロの結婚』を狂言風に上演し、モーツァルトと文楽と能を融合させようとした知恵者に大いに感謝し、次は何を上演してくれるのか期待したい。基本は喜劇だろうけれど。

狂言風オペラ『フィガロの結婚』前半。橋掛りに弦楽八重奏+コントラバス。目付け柱はなく、文楽の太夫と三味線は上手にいつもと逆の並びで。殿様は文楽人形、奥方は能。それ以外は狂言。ギャグが満載だけれど下品じゃなく、オペラの音楽はBGM的に扱いケルビーノならぬ蘭丸が追われるまで。

狂言風オペラ『フィガロの結婚』後半。オーケストラの行進から始まって観客が加わって「高砂や」の合唱まで。何から何まで楽し過ぎる舞台。「愛の神よ、慰めをもたらせたまえ」の音楽で舞う奥方に深く感動する。モーツァルトも300年後に銀座のど真ん中でこんな風に上演されるとは思わなかっただろう。

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