ロシアのサンプトペテルグルグのバレエ団 マリンスキー・バレエの来日公演が始まった。韓国と中国を含んだ1か月にわたるアジアツアーの一環で、日本では東京と兵庫県・西宮で公演があり、世界的なバレエ団には珍しく劇場専属のオーケストラを連れての公演である。
パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤルバレエ団、アメリカン・バレエシアターなど海外からスターダンサーを連れて来日するバレエ団の公演は安くないのだが、東京で最高ランクが24,000円、西宮では28,000円という高額チケットになった。案の定というか売れ行き芳しくなく、グルーポンをはじめとしたサイトでディスカウントチケットが出回っているようだ。会場ではリピーターチケットと称して、他日公演を割引販売していたし、U-25チケットといって25歳以下の観客に開演30分前から残席を5,000円均一で販売するサービスもあった。
かつてのウリヤーナ・ロパートキナ、スヴェトラーナ・ザハロワ、ディアナ・ヴィシニョーワ、エフゲーニャ・オブラスツォーワといった大スターが引退したり移籍したり、大物が来日しないばかりか、相次ぐキャストの変更で、観客も高額のチケットを簡単に購入しずらい背景もある。
そんな公演にでかけてみようと思ったのは、ロシアの名門バレエ団のプリンシパルとして活躍するキミン・キムを生で観たかったからである。バレエの王子様キャラは、やはり白人の美形ダンサーの方が有利である。テクニックがあっても、ノーブルな雰囲気がないとダメなのである。東洋人の男性ダンサー、たとえば熊川哲也が英国ロイヤルバレエでそうであったように、『ドン・キホーテ』のバジルは踊れても、『白鳥の湖』のジークフリート王子は踊らせてもらえないのである。そんな概念を吹き飛ばし、ロシアの名門バレエ団で次々と主役を踊る韓国出身のダンサーの存在は痛快である。
初日公演では、キューピッド役に日本人の若手ダンサーである永久メイが起用された。13歳で日本を飛び出して、コンクールを経てスカラシップで留学、コンクールのガラ公演で芸術監督に見いだされ、マリンスキー・バレエ団で主役も踊れる地位まで昇りつめたというのも話題。
ロシアのバレエ団なので、舞台美術はともかく、衣裳は野暮ったい色使いで繊細さがない。音楽も同様で、打楽器や金管楽器を強調した演奏で、スピードも速く、バレエの伴奏に徹した演奏スタイルで考え方が古いなあと思う。演出も現代的な解釈はなく、昔ながらの振り付けと演出だと感じた。中心になるのは、超絶技巧を次々に繰り出すダンサー達の踊りで、多少の荒っぽさはあっても踊りが何よりも大切だという姿勢は正しい。
『ドン・キホーテ』第1幕。早いテンポとメリハリの効いたオーケストラ。それに呼応するように踊りまくるダンサー達。これほど生気に満ちたバレエも珍しい。キトリのヴィクトリア・テリョーシキナ、バジルのキミン・キムは超絶技巧を次々に披露し会場が興奮の坩堝に。スピード感がある舞台で飽きさせない。
『ドン・キホーテ』第2幕。ジプシー達の踊りがロシア風なのはご愛嬌。夢の場に登場したキューピッドの永久メイに注目した。十代で海外に飛び出しマリンスキーのソリストになり、さらなる飛躍が期待される逸材。手足の長さ、華奢な身体つきはバレエ団の中にあって異色の存在と映った。
『ドン・キホーテ』第3幕。グラン パ・ド・ドゥのコーダで全て持っていかれた感じ。テリョーシキナの扇を持ってのグランフェッテの凄さ!キミン・キムの跳躍と回転。超絶技巧があまりに多くて普通のテクニックに見えてしまう。音楽のテンポは早め。感動よりも爽快感の勝る舞台だった。
2017年11月28日(水) 6:30p.m.~9:30p.m.
≪ドン・キホーテ≫<プロローグと全3幕6場>
音楽:ルートヴィヒ・ミンクス
台本:マリウス・プティパ
振付:マリウス・プティパ(1869年)
改訂振り付け:アレクサンドル・ゴールスキー(1900年)
原作:ミゲル・デ・セルバンテス
舞台装置デザイン:アレクサンドル・ゴロヴィーン、コンスタンチン・コローヴィン
舞台装置復元:ミハイル・シシリアンニコフ
衣裳デザイン:コンスタンチン・コローヴィン
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
<出演>
キトリ:ヴィクトリア・テリョーシキナ
バジル:キミン・キム
ドン・キホーテ:ソスラン・クラエフ
サンチョ・パンサ:アレクサンドル・フョードロフ
ロレンソ:ドミートリー・プィハチョーフ
ガマーシュ:ワシーリー・シチェルバコフ
エスパーダ:コンスタンチン・ズヴェレフ
街の踊り子:エカテリーナ・コンダウーロワ
メルセデス:オリガ・ベリク
花売り娘:アナスタシア・ニキーチナ、シャマーラ・グセイノワ
森の精の女王:マリア・ホーレワ
キューピッド:永久メイ
居酒屋の主人:マキシム・ペトロフ
ジプシーの踊り:オリガ・ベリク、オレグ・デムチェンコ
老ジプシー:マキシム・ペトロフ
ファンダンゴ:アレクサンドラ・ポポワ、アレクサンドル・ロマンチコフ
東洋の踊り:ユリア・コブツァール
ヴァリエーション:ヤナ・セーリナ
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【上演時間】 約3時間 【終演予定】 21:30
第1幕 45分 - 休憩 25分 - 第2幕 25分 - 休憩 25分 - 第3幕 50分
パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤルバレエ団、アメリカン・バレエシアターなど海外からスターダンサーを連れて来日するバレエ団の公演は安くないのだが、東京で最高ランクが24,000円、西宮では28,000円という高額チケットになった。案の定というか売れ行き芳しくなく、グルーポンをはじめとしたサイトでディスカウントチケットが出回っているようだ。会場ではリピーターチケットと称して、他日公演を割引販売していたし、U-25チケットといって25歳以下の観客に開演30分前から残席を5,000円均一で販売するサービスもあった。
かつてのウリヤーナ・ロパートキナ、スヴェトラーナ・ザハロワ、ディアナ・ヴィシニョーワ、エフゲーニャ・オブラスツォーワといった大スターが引退したり移籍したり、大物が来日しないばかりか、相次ぐキャストの変更で、観客も高額のチケットを簡単に購入しずらい背景もある。
そんな公演にでかけてみようと思ったのは、ロシアの名門バレエ団のプリンシパルとして活躍するキミン・キムを生で観たかったからである。バレエの王子様キャラは、やはり白人の美形ダンサーの方が有利である。テクニックがあっても、ノーブルな雰囲気がないとダメなのである。東洋人の男性ダンサー、たとえば熊川哲也が英国ロイヤルバレエでそうであったように、『ドン・キホーテ』のバジルは踊れても、『白鳥の湖』のジークフリート王子は踊らせてもらえないのである。そんな概念を吹き飛ばし、ロシアの名門バレエ団で次々と主役を踊る韓国出身のダンサーの存在は痛快である。
初日公演では、キューピッド役に日本人の若手ダンサーである永久メイが起用された。13歳で日本を飛び出して、コンクールを経てスカラシップで留学、コンクールのガラ公演で芸術監督に見いだされ、マリンスキー・バレエ団で主役も踊れる地位まで昇りつめたというのも話題。
ロシアのバレエ団なので、舞台美術はともかく、衣裳は野暮ったい色使いで繊細さがない。音楽も同様で、打楽器や金管楽器を強調した演奏で、スピードも速く、バレエの伴奏に徹した演奏スタイルで考え方が古いなあと思う。演出も現代的な解釈はなく、昔ながらの振り付けと演出だと感じた。中心になるのは、超絶技巧を次々に繰り出すダンサー達の踊りで、多少の荒っぽさはあっても踊りが何よりも大切だという姿勢は正しい。
『ドン・キホーテ』第1幕。早いテンポとメリハリの効いたオーケストラ。それに呼応するように踊りまくるダンサー達。これほど生気に満ちたバレエも珍しい。キトリのヴィクトリア・テリョーシキナ、バジルのキミン・キムは超絶技巧を次々に披露し会場が興奮の坩堝に。スピード感がある舞台で飽きさせない。
『ドン・キホーテ』第2幕。ジプシー達の踊りがロシア風なのはご愛嬌。夢の場に登場したキューピッドの永久メイに注目した。十代で海外に飛び出しマリンスキーのソリストになり、さらなる飛躍が期待される逸材。手足の長さ、華奢な身体つきはバレエ団の中にあって異色の存在と映った。
『ドン・キホーテ』第3幕。グラン パ・ド・ドゥのコーダで全て持っていかれた感じ。テリョーシキナの扇を持ってのグランフェッテの凄さ!キミン・キムの跳躍と回転。超絶技巧があまりに多くて普通のテクニックに見えてしまう。音楽のテンポは早め。感動よりも爽快感の勝る舞台だった。
2017年11月28日(水) 6:30p.m.~9:30p.m.
≪ドン・キホーテ≫<プロローグと全3幕6場>
音楽:ルートヴィヒ・ミンクス
台本:マリウス・プティパ
振付:マリウス・プティパ(1869年)
改訂振り付け:アレクサンドル・ゴールスキー(1900年)
原作:ミゲル・デ・セルバンテス
舞台装置デザイン:アレクサンドル・ゴロヴィーン、コンスタンチン・コローヴィン
舞台装置復元:ミハイル・シシリアンニコフ
衣裳デザイン:コンスタンチン・コローヴィン
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
<出演>
キトリ:ヴィクトリア・テリョーシキナ
バジル:キミン・キム
ドン・キホーテ:ソスラン・クラエフ
サンチョ・パンサ:アレクサンドル・フョードロフ
ロレンソ:ドミートリー・プィハチョーフ
ガマーシュ:ワシーリー・シチェルバコフ
エスパーダ:コンスタンチン・ズヴェレフ
街の踊り子:エカテリーナ・コンダウーロワ
メルセデス:オリガ・ベリク
花売り娘:アナスタシア・ニキーチナ、シャマーラ・グセイノワ
森の精の女王:マリア・ホーレワ
キューピッド:永久メイ
居酒屋の主人:マキシム・ペトロフ
ジプシーの踊り:オリガ・ベリク、オレグ・デムチェンコ
老ジプシー:マキシム・ペトロフ
ファンダンゴ:アレクサンドラ・ポポワ、アレクサンドル・ロマンチコフ
東洋の踊り:ユリア・コブツァール
ヴァリエーション:ヤナ・セーリナ
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【上演時間】 約3時間 【終演予定】 21:30
第1幕 45分 - 休憩 25分 - 第2幕 25分 - 休憩 25分 - 第3幕 50分