詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

第15回世界バレエフェスティバル SASAKIガラ 2019年8月15日 東京文化会館

2018-09-04 07:35:19 | 日記
オペラ、バレエのファンだったら知らない人はいない日本舞台芸術振興会の佐々木忠次さんの名前がついた1夜限りのガラ公演「Sasakiガラ」が開催された。各ダンサーが得意の演目を披露するばかりでなく、最後に男性が女装してポワントで踊ったりする「ファニーガラ」がお目当だったかも。毎回チケットの入手は困難で運良く買う事ができた。

世界バレエフェスティバル Sasakiガラ。オープニングの戴冠行進曲で佐々木忠次さんの名前がクレジットされると大きな拍手。第5部「?!」と出たけれど何が飛び出すのか?

第1部

『ドリーブ組曲』レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ。佐々木さんの愛したパリ・オペラ座のエレガンスがここに。美しい二人が繊細に踊って堪能させてくれた。何よりも踊る喜びが満ち溢れるのが良い。所縁のあるジョゼ・マルティネスの振付は洒落ていて面白い。

『「ライムライト』エリサ・バデネス。プロポーション抜群のダンサーが何もない空間で肉体だけを頼りに表現しようとする佐々木さんが見せたかった現代バレエはこれなのかもしれない。照明器具を下げ、極限まで研ぎ澄まされた身体表現に心地よさを感じた。人間の可能性は無限。

『「白鳥の湖」より グラン・アダージオ 』オレシア・ノヴィコワ、デヴィッド・ホールバーグ。美しいダンサーが美しい音楽にのせて有名なバレエを踊ると、こんなにも素晴らしいという見本のような舞台。佐々木さんが生涯をかけて世界の有名なバレエを紹介した意味を理解した。

『アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ』ヴィエングセイ・ヴァルデス。キューバの至宝。視力を失っても90歳を過ぎても後進の指導を続けるアロンソ。舞台に置かれた椅子と映像。「ジゼル」を踊る姿。尊敬を込めて踊られたバレエに感謝。大きな感動があった。彼女こそ真の芸術家である。第1回の世界バレエフェスティバルに参加したことに思いを馳せた。

『タイス (マ・パヴロワより)』マリア・アイシュヴァルト、ロベルト・ボッレ。ローラン・プティ振付。タイスの瞑想曲にのせて踊られる美しいバレエ。音楽との融合によって素晴らしい世界が出現する芸術だという事を示して見せた。心から賛辞を贈りたい。ボッレは最高のダンサー。

『グラン・パ・クラシック』ドロテ・ジルベール、マチアス・エイマン。これこそ佐々木さんが見せたかったバレエではなくか。テクニックは素晴らしい。でもそれだけではない世界。美しいものを貪欲に追求した佐々木に捧げるに相応しいエレガントな舞台。パリ・オペラ座!

第2部

『「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ』サラ・ラム、マルセロ・ゴメス。マクミラン振付の有名な場面だけれど英国ロイヤル・バレエ団の二人に踊られると格別な趣きがある。そのドラマチックな世界を観客に届けようとした佐々木さんの願いに思いを馳せた。

『デグニーノ』マリア・コチェトコワ。スケスケの衣裳で無機質に踊られるソロ。近未来のバレエという感じ。こうした演目も積極的に日本の観客に紹介しようとしていたのが佐々木さんでした。機会がなければ自分から進んでは見ない演目。どれだけ多く観客が目を開かれたか!

『タチヤーナ』アンナ・ラウデール、エドウィン・レヴァツォフ。ノイマイヤー振付の「エフゲニー・オネーギン」の世界。クランコとは全く違うアプローチながら底に流れているものは同じか。研ぎ澄まれた表現が心の漠然とした様子を感じさせて感動があった。本格的な舞台装置あり。

『モノ・リサ』アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲル。今度はスピード感溢れるガリリ振付の作品。ずっと明快なバレエながら抽象的な表現。踊り手の個性が前面に出てくる。シュツットガルト・バレエ団で初演。アクロバティックな部分もあり盛り上がった。

『ワールウィンド・パ・ド・ドゥ』世界初演 ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ。パリ・オペラ座の二人にハンブルク・バレエ団のプリンシパルだったボァディンが振付。完成度の高い前の2作の後では、いささか見劣りがしてしまうのは仕方ない。世界初演の作品に立ち会えたことに感謝。

『ローレンシア』マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ。ロシアらしいダイナミックなバレエ。コンテンポラリーが続いた後なので、ちょっとした口直しといったところか。バラエティに富んだ第2部を締め括るには、物足りないような気もするが楽しいバレエだった。

第3部

世界バレエフェスティバル Sasaki Gala 第3部は佐々木忠次さんに捧げるステージ。佐々木さんがいつも座っていた席に白い花のアレンジ。そこにスポットライトが当たって幕が上がると出演者を代表してアレッサンドラ・フェリの心のこもったスピーチ。佐々木さんの功績を讃える映像が流れ幕が閉まっても拍手が鳴り止まなかった。

『「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ 』シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ 、エドウィン・レヴァツォフ。佐々木さんがノイマイヤーに委嘱して初演されたバレエ。こうしてハンブルク・バレエ団のダンサーに踊られて本望だと思う。良い仕事を遺された。

『リーフ(葉)』世界初演 ジル・ロマン。海外で活躍する大石裕香振付。どこかベジャールを感じさせるバレエなのはジル・ロマンが踊るからか。彼の表現者としての力量は衰えることなく、さらに深くなっているように思った。ガラの為に駆けつけてくれた事に感謝したい。

『ボレロ』上野水香、東京バレエ団。佐々木さんのお気に入りだった上野水香のメロディ。ベジャールの傑作バレエをレパートリーとし、人気演目として定着できて佐々木さんも喜んでいると思う。もっぱらリズムの男性達に視線。シルヴィ・ギエムだったらなあと夢想してみた。

第4部

『ウルフ・ワークス』アレッサンドラ・フェリ、フェデリコ・ボネッリ。フェリを好サポートするボネッリの献身なサポートが心に残った。しかしフェリは全てを委ねているように見えて、ちゃんと踊っている事に気がつく。年齢を重ねても心の内に秘めたものは深く広大なのが伝わる。

『マルグリットとアルマン」より 』アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー、デヴィッド・ホールバーグ。アシュトン振付。歌劇『椿姫』の第2幕と同様の物語を手際よく見せた感じ。ギエムとは違った味わいのコジョカルになかなか観られない組み合わせで劇的に盛り上がる。

『「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー" 』ロベルト・ボッレ 、マチュー・ガニオ。日本で二人が踊るのを観られるとは!なんという眼福。ローラン・プティの名作をこれ以上望めない顔合わせで観られた。ガニオは親子二代で世界バレエフェスに参加。

『アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?』レオニード・サラファーノフ、ダニール・シムキン、ダニエル・カマルゴ。これまた贅沢な顔合わせの演目。超絶技巧をさりげなく披露し、笑える部分も多くあって楽しい作品だった。ガラ公演の演目の充実には目を見張るばかり。

『ドン・キホーテ』タマラ・ロホ、イサック・エルナンデス。最後を締めるにはは、やっぱりタマラ・ロホ。全く揺るぎないバランス。安定感抜群のフェッテ。高さのあるリフト。超絶技巧を涼しい顔で次々に決めてくれた。もっともっととおねだりしたくなる。お祭りだった。

世界バレエフェスティバル Sasaki Galaの第5部 ファニーガラはこんな演目。指揮者のワレリー・オブジャニコフさんが儀典長だったのがツボ。

踊らないキャスト
王: シルヴィア・アツォーニ
王妃: マチュー・ガニオ
看護士: アレクサンドル・リアブコ
侍従長: ワレリー・オブジャニコフ
キューピッド: マリーヤ・アレクサンドロワ

■「眠れる森の美女」より「ポロネーズ」

■フォー・ミー、フォーミーダブル
マチアス・エイマン、ダニール・シムキン、デヴィッド・ホールバーグ

■佐々木さんのために
マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ

■ジゼル
マリア・アイシュヴァルト、レオニード・サラファーノフ

■カルメンズ
イサック・エルナンデス、ジェルマン・ルーヴェ

■ホセ
ヴィエングセイ・ヴァルデス

■眠れる森の美女より、猫
レオノール・ボラック、フリーデマン・フォーゲル

■ドン・キホーテより、パ・ド・トロワ
タマラ・ロホ、ダニール・シムキン、デヴィッド・ホールバーグ

■眠れる森の美女より、青い鳥
マリア・コチェトコワ、エドウィン・レヴァツォフ

■スパルタクス
エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ

■白鳥の湖より、3羽の白鳥
ロベルト・ボッレ、フェデリコ・ボネッリ、ウラディスラフ・ラントラートフ

■白鳥の湖より、黒鳥
ドロテ・ジルベール、マルセロ・ゴメス


【第15回 世界バレエフェスティバル】ガラ - Sasaki GALA - 8/15(水)

― 第1部 ―

「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス
音楽:レオ・ドリーブ

レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ


「ライムライト」
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ニュー・タンゴ・オルケスタ

エリサ・バデネス


「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ


「アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ」
振付:タニア・ヴェルガラ
音楽:フランク・フェルナンデス

ヴィエングセイ・ヴァルデス


「タイス (マ・パヴロワより)」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ

マリア・アイシュヴァルト
ロベルト・ボッレ


「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール

ドロテ・ジルベール
マチアス・エイマン



― 第2部 ―

「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

サラ・ラム
マルセロ・ゴメス


「デグニーノ」
振付:マルコス・モラウ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル

マリア・コチェトコワ


「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ

アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ


「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ

アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル


「ワールウィンド・パ・ド・ドゥ」 世界初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ


「ローレンシア」
振付:ワフタング・チャブキアーニ
音楽:アレクサンドル・クレイン

マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ



― 第3部 佐々木忠次へのオマージュ ―

「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
エドウィン・レヴァツォフ


「リーフ(葉)」 世界初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト

ジル・ロマン


「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

上野水香
東京バレエ団



― 第4部 ―

「ウルフ・ワークス」
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター

アレッサンドラ・フェリ
フェデリコ・ボネッリ


「マルグリットとアルマン」より
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト

アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
デヴィッド・ホールバーグ


「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー"
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ

ロベルト・ボッレ
マチュー・ガニオ


「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン

レオニード・サラファーノフ
ダニール・シムキン
ダニエル・カマルゴ


「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス


指揮:ワレリー・オブジャニコフ  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「マルグリットとアルマン」より)



◆上演時間◆

第1部  17:00~18:00
休憩     15分
第2部  18:15~19:15
休憩     10分
第3部  19:25~20:20
休憩     15分
第4部  20:35~21:25