詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

八月納涼歌舞伎 第2部 『再伊勢参!? YJKT 東海道中膝栗毛』『雨乞其角』 2018年8月10日 歌舞伎座

2018-08-13 21:18:48 | 日記
歌舞伎の舞台でキリスト教が取り上げられる事は珍しい。新作では『細川ガラシャ夫人』といった事例はあるが、そのものズバリのイエス・キリストが舞台に登場した事はないのではないだろうか。

幸四郎と猿之助の顔合わせによる『東海道膝栗毛』は、第1作は伊勢どころかラスベガスまで行ってしまう奇想天外さ。第2作は歌舞伎座で弥次さんと喜多さんが大道具方のアルバイトをするうちに殺人事件に巻き込まれてしまうという展開。

共通しているのは、主役のクライマックスの宙乗りと御曹司である染五郎と團子が出演している事。

今回は昨年の猿之助の事故をネタにしたのか、大阪で『女殺油地獄』の大道具のアルバイトに精を出していた喜多八が油で滑って死んでしまうという楽屋オチ入りのブラックな趣向。いきなり猿之助の遺影がデカデカと飾られ葬式が始まる。

しかも、物語とはあまり関係なく獅童、七之助、中車が早替りで色々な人物になって花道から弔問に訪れるという奇想天外さ。大道具に歌舞伎ではあり得ないようなピクトグラムがあったりして、歌舞伎の調和を乱す工夫が全編にあるという具合。

芝居全体も、歌舞伎の調和を乱しているように見えてギリギリのところで踏み止まるような工夫が随所にある。若手による「だんまり」は、よく歌舞伎の評論家の先生方の標的になる。それを逆手にとってか舞台上に立錐の余地もないほど役者を登場させて「だんまり」を演じさせたりする、かなりアナーキーな舞台。

コントのような場面が続くかと思えば、地獄の鬼に扮した御曹司達の踊り合戦のようになったりと若手に活躍の場を与えることにもぬかりはない。『ワンピース』以来、そうした事に関心があるようで、新悟はサディちゃんのムチを持って登場した。分かる人にしかわからないのである。宙乗りでは、染五郎と團子はスーパータンバリンを持っていたりする。

極め付けは、神無月で出雲へ行ってしまった日本の神々に代わり、イエス・キリストが弥次さん喜多さんを天国に昇天させるというクライマックス。いささかイエス様は戯画化されてはいるが、その表現しようとしている事は、クリスチャンにとっては理想とも言える姿なのである。

罪人(つみびと)ともいえる弥次さん喜多さんが、天使とともに天国に歓喜とともに凱旋するという趣向の宙乗りは、クリスチャンも納得の「空中再臨」や「携挙」を表現していると言えるものだからである。ヘンデルの「メサイア」から「ハレルヤコーラス」が流れるのも意味のない事ではないのである。観客の拍手と喜びの笑顔で見送られるという事こそ理想的な姿だと思った。

幸四郎、猿之助、中車らは暁星高校の出身だし、青山学院高校らミッションスクールの出身者も少なくない歌舞伎役者であるから、こうした場面を生み出せたのだろうと思う。笑いの衣は纏っているが、実は福音を伝える伝道的な歌舞伎になっていたのである。

『雨乞其角』は所作舞台を敷かずに本舞台で踊られた舞踊劇だった。船や回り舞台、大せりなどを使っての大仕掛けだけれど、俳人の其角が雨乞いをするという地味な内容。扇雀以下総踊りでも目立っていたのはやっぱり鷹之資だった。前半に登場した歌昇の船頭も好演していた。遠見に描かれた芝居小屋があって興味深かった。

第15回 世界バレエフェスティバル Bプロ 2018年8月12日(日)東京文化会館

2018-08-13 17:45:38 | 日記
8月15日(水)のガラ公演と大阪の『ドン・キホーテ』全幕特別公演を残して、世界バレエフェスティバルが終った。ガラ公演は1回公演なので運よくチケットが入手できた観客だけのものであり、実質は8月12日(日)が最終公演となった。最後には恒例の出演者による手拭まきなどもあり盛り上がっていた。

日本舞台芸術振興会の故佐々木忠次さんの夢を実現させた公演で、世界的なスターダンサーを集め、4時間半にわたり、古典からコンテンポラリーまで20ものバレエ演目が並ぶ。東京フィルハーモニー管弦楽団という普通のバレエ公演には、なかなか登場しない一流オーケストラを使い、指揮者は外国人のバレエ音楽のエキスパートを2人が交代で務める。

休憩時間が15分、10分と極端に短く多くの観客には、けっして親切とはいえない公演だけれど、それが世界バレエフェスティバルなのだ。ガラ公演と称して上演される普通のグループ公演と比較しても、その規模、出演者の豪華さでは、他の追随を許さない存在である。3年に1度、東京の夏はバレエで熱くなるのである。

スポンサーの化粧品会社の支援で若い観客に向けて廉価なチケットが販売されるなど変化はあったが、佐々木さんが亡くなって初めての世界バレエフェスティバルには、大きな変更はなかったようである。これまで集客の目玉となっていた偉大なダンサー、マニュアル・ルグリ、ウラジミール・マラーホフ、シルヴィ・ギエムが出演しなくなって心配された出演者も、日本舞台芸術振興会と縁のあるノイマイヤー率いるハンブルクバレエ団、パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤルバレエ団、シュツットガルト・バレエ団がメインとなって出演者が集められた。ライバル会社であるジャパン・アーツが招聘しているアメリカン・バレエ・シアター、ボリショイバレエ団、マリンスキーバレエ団といったバレエ団からの出演者が少ない、あるいは出演がないのは致し方ないのかもしれない。

来年に予定されているロベルト・ボッレとアレッサンドラ・フェリが今回出演しているのもプロモーションの意味があったのかもしれない。観客の好みを重視したのか、Bプロにはノイマイヤー、バランシン、マクミラン、クランコといった振付家の作品が集中してしまったが、それぞれのバレエ団の看板演目であるので、どれもさすがに安定感があった。

『眠れる森の美女』オレシア・ノヴィコワ、デヴィッド・ホールバーグ。二人ともに5番のポジションからバレエを始める。「眠れる森の美女」は幸福の姿を見せてくれるバレエ。ホールバーグのヴァリエーションも最後に5番のポジションに決めるフレエフのスタイル。超絶技巧はないけれど気品と美しさが際立っていた。

『ムニェコス(人形)』ヴィエングセイ・ヴァルデス、ダニエル・カマルゴ。人形ぶりバレエという趣向だが、題名の通り人形になったり人間同様の動きになったりと愛のすれ違いを見せるバレエ。可愛いらしく笑いもあるが、どこか悲劇の香りもあった。短い時間で何もない空間にドラマを描いて見せて見事だった。

『ソナチネ』レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ。生演奏のラヴェルのピアノ曲に合わせ踊られるバランシン。美しく端正に踊っているけれど、それだけ。何も伝わってこなくて失望。大いに退屈を味わう。パリ・オペラ座バレエ団の若きエトワールなのに、大スターたちの中にあっては観客をひきつける魅力に乏しい。課題は多いと思う。

『シンデレラ』ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ。パリ・オペラ座バレエ団のエトワールによるヌレエフ振付版。現代的な演出のバレエのはずだが衣裳にその片鱗があった程度で美しい音楽と共に夢のような時間を送る事が出来た。もう昔になってしまったフレエフ時代のパリ・オペラ座バレエ団の充実を思う。

『オルフェウス』シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ。ノイマイヤー振付。リアブコは何を踊っても裏切られない完成度。素晴らしいバレエの言葉が伝わってきたようだった。ドラマチックに盛り上げ余韻の残るバレエとなって大満足だった。もっともっと観ていたいと思わせた。

『ローラン・プティの「コッペリア』アリーナ・コジョカル、セザール・コラレス。怪我から復帰?のコラレスを相手役にコジョカルはプティ振付の快作を軽やかに華やかに可愛いらしく踊った。コラレスは力強さにテクニックもあってロイヤルに移籍しても大活躍する事だろう。

『HETのための2つの小品』タマラ・ロホ、イサック・エルナンデス。スピード感溢れるかと思えば、静かに踊られる瞬間もあってロホは変幻自在。突き放すかと思えば愛で包みこむ。若手を相手に濃密な時間を刻んで見せた。ロホはテクニックだけのダンサーではなかったのだと再認識。

『「白鳥の湖」より 第3幕のパ・ド・ドゥ』アシュレイ・ボーダー、レオニード・サラファーノフ。ボーダーの驚くべき超絶技巧の連発はいかにも世界バレエフェスティバルに相応しい。対するサラファーノフは淡々と王子を演じていたように思えた。

『椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ』アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲル。ノイマイヤー振付。第3部にも第3幕のパ・ド・ドゥがあり、ちょっとしたノイマイヤー祭り。安定のアマトリアンとフォーゲルで安心して観られたのが何より。どこか死の影が見えドラマチックに盛り上げた。

『「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ』メリッサ・ハミルトン、ロベルト・ボッレ。今度はマクミラン祭り。ボッレのロミオに意外にも少年の面影があって悪くない。何もかもが美しいダンサーで非の打ち所がない。何度も見た有名なバルコニーシーンが新鮮に映った。

『「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"』 ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン。Bプロはバランシン祭りでもある。美しい衣裳で振付に忠実に踊られるので面白さという点では見劣りがしてしまうのが残念。超絶技巧があるわけでもないし売り物でもない。ただしバレエを観たという満足感はある。

『「マノン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ』アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー。コジョカル再度登場はマクミラン振付の「沼地のパ・ド・ドゥ」。アクロバティックな振付もコボーの献身的なサポートで危なげなく劇的な仕上がり。彼女の役柄の広さを見せたBプロとなった。

『アポロ』サラ・ラム、フェデリコ・ボネッリ。これもバランシン振付で今度は英国ロイヤルバレエ団。テクニックよりも精神性に重きを置くのがロイヤル流か。Aプロの同演目とは全く違って見える。スターであることを前面に出さないので、むしろ地味に感じさせてしまうのは損だったと思う。作品に対しては誠実なのだろうけれど。

『「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ』アンナ・ラウデール、エドウィン・レヴァツォフ。ノイマイヤーの本拠地から今回もやって来た二人。死の影が迫る悲しさ切なさが伝わってきて全幕物を見たかのような満足感があった。作品を知り尽くしているからこその表現力に脱帽するしかない。

『じゃじゃ馬馴らし』エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ。大好きなクランコ振付の素晴らしい劇的バレエ。カマルゴが超絶技巧を連発して客席がどよめく。反発する二人の心が惹かれ合い、最後に結ばれる過程を見事に表現。以前観た全幕上演よりも感動した。愛の真髄を短時間で見せられた思い。

『「ヌレエフ」より パ・ド・ドゥ』マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ。天才バレエダンサーヌレエフを主人公にした話題の新作からの抜粋。全体像はわからないが、複雑で技巧的な振付がなされているようだ。いつの日にか全幕上演される日を待ちたい。

『アダージェット』マリア・アイシュヴァルト、アレクサンドル・リアブコ。ノイマイヤー振付。ハンブルクバレエ団の看板ダンサーだけあって何ら不平不満がない充実した上演。音楽はマーラー交響曲第5番からだが、ベジャールの名作もあり振付家の意欲をかきたてる音楽なのだろう。

『「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ』アレッサンドラ・フェリ 、マルセロ・ゴメス。クランコ振付の名作の名場面。今回フェリがフェスティバルに参加したのも納得の魂こもった名演技を披露。バレエより演技力を評価してしまうのは不本意か。今の彼女には相応しい役。

『ドン・キホーテ』マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン。客席を興奮のるつぼに叩き込む超絶技巧を次々と披露したシムキン。舞台を回るマネージュの最後に540を三連発という離れ技。コチェトコも悪くないのに地味に見えてしまうのはシムキンが凄すぎるから。バレエのお祭りらしいトリ。

第15回世界バレエフェスティバル Aプロ 2018年8月4日(土) 14時開演 東京文化会館

2018-08-04 19:32:12 | 日記
1991年の第6回から欠かさずに観ている世界バレエフェスティバル。歴代の世界的なバレエダンサーがほとんど参加(NBSとの関係深いのに、ヌレエフとバリシニコフは出演していない)する3年に1度の特別な公演。

2年前に亡くなった日本舞台芸術振興会の佐々木忠次さん夢が結実した公演。同様な趣向の公演はあっても、ここまで豪華なメンバーが揃う事はない。観客も大スターの舞台に接することができるし、古典ばかりでなく、コンテンポラリー作品も積極的に取り上げられるので演目に偏りがないのが良い。開幕の出演者紹介の演出は、マイヤベーヤ作曲の『戴冠式行進曲』にのってスライド上映されるのだが、佐々木忠次さんの名前が最初に出た時は拍手が起こった。

演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。指揮はお馴染みのワレリー・オブニャニコフとロベルタス・セルヴェニカスが交替で。『瀕死の白鳥』のチェロは伊藤悠貴、ピアノは原久美子。

第1部

世界バレエフェスティバルAプロ「ディアナとアクテオン」エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ。優美さと力強さにあふれたバレエ。ワガノワ振付。開幕に相応しい大技を連発。客席も大いに湧いてトップバッターの重責を見事に果たしていた。超絶技巧をさらりと繰り出して小憎らしいほどだった。

世界バレエフェスティバルAプロ「ソナタ」マリア・アイシュヴァルト、アレクサンドル・リアブコ。永遠の愛とは何か。そして行き着く先はどこなのか。踊る事によって見事に表現して見せた二人に拍手。ラフマニノフの音楽に乗せて愛する事の意味を考えさせてくれた。美しかった。

世界バレエフェスティバルAプロ「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ。マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン。空気のような軽さを感じさせるバレエ。舞台装置も本格で全幕物を観た後のような満足感。テクニックではなく気持ち本位で踊っているように見えて、凄い技術を惜しげもなく投入。

世界バレエフェスティバルAプロ「アポロ」オレシア・ノヴィコワ、デヴィッド・ホールバーグ。バランシンを踊るに 最も相応しいカップル。ニューヨークの風が吹いた?音楽に見事にあった振付をこれ以上ない程に再現していた。バランシンはこう踊るという教科書のようなバレエ。プロポーション抜群。

世界バレエフェスティバルAプロ「コッペリア」サラ・ラム、フェデリコ・ボネッリ。こちらは英国ロイヤルバレエの香りのカップル。愛らしさにあふれて観る者を幸福で満たしてくれた。屈託のないストレートな表現が良かった。人生の深淵を覗くようなバレエとは遠いが満足できた。派手さがないけれど良い。

第2部

世界バレエフェスティバルAプロ「瀕死の白鳥」ヤーナ・サレンコ。演目が変更にソロになってしまって気の毒。舞台上のチェロとピアノの演奏に合わせて踊られた。妙に腕をぐちゃぐちゃに動かす事もなく、気持ちのこもった踊りで正攻法。大受けしないかわりに外れでもない。

世界バレエフェスティバルAプロ「カラヴァッジオ」 メリッサ・ハミルトン、
ロベルト・ボッレ。今度はイタリアの風が吹いた?鍛え上げられたボッレの肉体美に見惚れた。同じ振付をシンクロさせながら踊り、観客を夢見心地にさせてくれたのは真のスターダンサーの証拠。素晴らしかった。

世界バレエフェスティバルAプロ「くるみ割り人形」 レオノール・ボラック、
ジェルマン・ルーヴェ。ヌレエフらしい強烈に難しい振付が次々に繰り出されて驚かされた。それを涼しい顔して踊るパリ・オペラ座の若手エトワール二人。幸福の姿を浮かび上がらせて見事な舞台に。

世界バレエフェスティバルAプロ「・・・アンド・キャロライン」 オレリー・デュポン、ダニエル・プロイエット。華のあるダンサーだったデュポンが汚れ役?個性を押しつぶて作品に奉仕する姿に感銘を受ける。若いダンサーを相手役に抜擢したのも好印象。

世界バレエフェスティバルAプロ「ファラオの娘」 マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ。ロシア勢の参加者が少ない中にあってボリショイ組。ピーター・ラコット振付を力強く踊った。超絶技巧よりも踊る楽しさを感じさせる方向だったよう。

第3部

世界バレエフェスティバルAプロ「カルメン」 タマラ・ロホ、イサック・エルナンデス。アロンソ振付。お馴染みの作品だが、何もない空間の中で『カルメン』の世界を浮かび上がらせたのは流石だが、強靭なテクニックの持ち主だったはずのタマラ・ロホにも年齢的に衰えは隠せないようだったが存在感抜群。

世界バレエフェスティバルAプロ「ルナ」エリザベット・ロス。ベジャール枠での出演?生前のベジャールを知る数少ないダンサーの一人だけれど、振付の古臭さばかりが目立ってしまって残念。古典のない第3部でも格別に劣って見えた。孤軍奮闘だけど、偉大な振付家も記憶が薄らいでいくのは宿命?

世界バレエフェスティバルAプロ「アンナ・カレーニナ」 アンナ・ラウデール、エドウィン・レヴァツォフ。ジョン・ノイマイヤー振付。生きているバレエ。二人の距離感を表現する?長いテーブルや小道具、助演者に日本人?ダンサーも入れて短い上演時間に作品世界を描いてみせた。全幕が観たくなる作品。

世界バレエフェスティバルAプロ「タランテラ」 アシュレイ・ボーダー、レオニード・サラファーノフ。バランシンの振付。サラファーノフはタンバリンは落としたけれど、超絶技巧を次々に繰り出して客席を熱くさせた。スピードがあって洒落ていて小品ながら盛り上がった。適役だった二人の魅力は大きい。

第4部

世界バレエフェスティバルAプロ「ドン・ジュアン」 シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ。ジョン・ノイマイヤー振付。46年も前の作品だが古さを感じさせない。演劇的な要素や空中浮遊?のような不思議な場面もあって飽きさせない。リアブコの内から湧き出る入魂の踊りに感銘を受ける。

世界バレエフェスティバルAプロ「シェエラザード・パ・ド・ドゥ」【世界初演】 アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー。スキンヘッドになったコボーに驚く。新作ゆえコジョカルの魅力が発揮される方向で作られた作品か。破綻なく見せ場を散りばめてはあるものの妖艶さといったものは皆無。健康的だなあ。

世界バレエフェスティバルAプロ「ヘルマン・シュメルマン」 ポリーナ・セミオノワ、フリーデマン・フォーゲル。ベルリン国立バレエ団とシュトゥットガルトバレエ団の二人によるフォーサイス作品。振付家の代表作の魅力を余すとこなく表現していて面白く観た。シャープさが足りないような気もしたけれど。

世界バレエフェスティバルAプロ「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ 。ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ。パリ・オペラ座のエトワールによるマクミラン作品。何度も上演が繰り返されてきた有名作。名演が記憶にある。ガニオが老けた感じでショック!バレエが重く愚鈍に感じたのは気のせいなのか?

世界バレエフェスティバルAプロ「ドン・キホーテ」ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン。Bプロと演目を入れ替え。怪我の影響?で仕方がないが、世界バレエフェスティバルのトリとしては平凡な出来。パトリック・デュポンの無駄に超絶技巧テンコ盛りの下品さが懐かしい。優美さだけが取り柄か。

フィナーレは『眠れる森の美女』よりアポテーズにのせて全員が順番に登場。各組の幕前のレヴェランスもあって盛り上がった。