詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

IMAX版『トップガン マーヴェリック』(★★★★★)

2022-05-28 00:27:20 | 日記
(2022年5月27日(金)成田HUMAXシネマズ IMAXデジタルシアター)
監督 ジョセフ・コジンスキー
出演 トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、バル・キルマー

小学生低学年で「ウルトラマン」と出会った世代は大人になって「トップガン」に夢中になった世代と重なる。主演のトム・クルーズは36年前の前作同様に年齢を重ねても我々には魅力的な存在。シワひとつない日焼けした肌、白く輝く歯。驚異的な若さに驚かされるばかり。場内大爆笑のコミカルな演技にも好感を持った。

今回はハードな任務を達成するために教官として若いパイロットを鍛える役割。その中には亡き親友の息子ルースターもいて…、という物語。敵国はどこなのか?敵地の先制攻撃は許されるのか?といった問題はひとまず置いておいて、迫力満点の飛行場面とIMAXとの相性は抜群でフルサイズで上映された特に後半の戦闘シーンには大興奮させられた。

IMAX、4DX、MX4Dなど様々な上映形式を試してみるつもり。大人の事情?でドルビーシネマでの上映がないのが残念。

『大河への道』(★★★)

2022-05-27 00:10:15 | 日記
(2022年5月21日  成田HUMAXシネマズ)
監督 中西健二
原作 立川志の輔
出演 中井貴一、松山ケンイチ、北川景子、岸井ゆきの、和田正人、西村まさ彦、平田満、草刈正雄、橋爪功

立川志の輔の創作落語を原作とする成田市のお隣にある香取市の偉人伊能忠敬をNHKの大河ドラマに取り上げてもらおうとする香取市役所の職員の奮闘と江戸時代の亡くなった伊能忠敬の遺志を継ぎ日本地図を完成させる周囲の人々の物語でした。

ご当地映画ですが佐原には映画館がないので、成田市か利根川を渡って茨城県の稲敷市へ行くしかありません。佐原方面から来ているっぽい人やスーツ姿の香取市役所の関係者も客席にいたような気がします。ロビーでは香取市観光協会協力のパネル展をやっていました。

NHKのBSで伊能忠敬の再現ドラマを放送していて、「地球の大きさを知りたい」と中年から天文学を学びはじめ、やがて地図の作成に没頭していく物語は約1時間。大河ドラマ化するのは難しい題材かもしれません。市役所の職員が千葉県知事まで巻き込んで大河ドラマを実現させようとするというのも千葉県人としては微妙で複雑な思い。

最後のオチというか落語なのでサゲで脱力しました。中井貴一何言ってんの?破天荒な夢に後半生を賭けるという点では忠敬さんと同じではあるんですが。時代劇の伝統を継承といいながら、北川景子の着物の意匠や髪型は現代的すぎるように思いました。

前進座五月国立劇場公演『杜若艶色紫 お六と願哲』2022年5月17日

2022-05-26 23:29:55 | 日記
国立劇場で前進座五月国立劇場公演『杜若艶色紫 お六と願哲』を観ました。入場口にシアターダディことT氏を発見。先週文楽公演で会ったばかり。よく会うなあ。

河原崎国太郎の三十三回忌追善で当たり役の土手のお六を孫の河原崎國太郎が演じました。いわゆる悪婆物は源之助から教えを受けた国太郎の専売特許。うんざりお松や切られお富など1980年代に大きな評価を受けています。創立メンバーの翫右衛門の孫である梅雀や国太郎に薫陶を受けた瀬川菊之丞らが退団し劇団の将来を危ぶみましたが後継者が育ち前進座歌舞伎の灯は消えていませんでした。
普段から歌舞伎の舞台を踏んでいる役者たちではないので、松竹の歌舞伎に比べれば多少のぎこちなさはあるものの、脇役に至るまで気の入った熱い芝居をしているのが前進座らしい。歌舞伎座も3部制になって演目により観客動員数に違いがある。前進座もコロナ禍にあって満員とまではいかないまでも、かつてのような空席だらけといった客席風景ではなかった。

『杜若艶色紫 お六と願哲』序幕•二幕目。歌舞伎が上演できるかという杞憂は消え堂々たる南北劇。出演者全員の口跡が素晴らしく舞台にかける意気込みに打たれた。照明効果を多用する演出は分かりやすさを重視した結果なのだろうと好意的に受け取る。國太郎と矢之輔の活躍に安堵した。

『杜若艶色紫 お六と願哲』三幕目。主役級の矢之輔、國太郎、芳三郎だけではなく門閥を否定した劇団らしく歌舞伎ができる若い役者達が育っているのが頼もしい。これからも独特の味わいを持った南北劇に出会うことを願った。立ち回りも稽古の成果が発揮され絵面に決まって美しい。

主な配役

お六/八ツ橋  河原崎國太郎
願哲      藤川 矢之輔
佐野次郎左衛門 嵐 芳三郎
お守り伝兵衛  中嶋 宏太郎
金屋金五郎   早瀬 栄之丞
玉本小三    玉浦 有之祐
釣鐘弥左衛門  益城 孝次郎

序 幕 向両国の場 11:00~12:30
二幕目 第一場 三河島万寿屋寮の場
第二場 根岸庚申塚の場
第三場 万寿屋寮奥座敷の場
第四場 万寿屋寮裏手の場
幕 間 25分

三幕目 第一場 お六住家の場 12:55~13:40
  第二場 日本堤の場

国立劇場五月文楽公演第3部『桂川連理柵』「石部宿屋の段」「六角堂の段」「帯屋の段」 2022年5月10日

2022-05-26 23:28:59 | 日記
生まれて初めて観た文楽は1978年12月の文楽公演。最初の演目は『菅原伝授手習鑑』「寺入りの段」でした。語っていたのは豊竹英大夫。現在の豊竹呂太夫で今月から切り場語りに昇格しました。44年の歳月をもってようやくたどり着ける地位とは気の遠くなるような修業の日々があったのでしょう。因みに三味線は現在は廃業しているドナルド・キーンさんの養子になった鶴澤浅造さんでした。

『桂川連理柵/石部宿屋の段』お半と長右衛門が旅先で出会い宿屋でふとしたことから過ちを犯す場面。人形なので生々しくはないが自制できなかったのかといつも思う物語。人形が飯を食らうといった日常の人間臭い行為をする世話物が文楽では一番面白いのだけれど空席が目立つのは残念。

『桂川連理柵/六角堂の段』希太夫が好演。年功序列制ではなく実力主義の文楽らしい配役。後の物語の展開に必要な部分で伝えることをきちんと伝える丁寧な芸に好感。四十代と文楽の太夫としては若いので今後に大いに期待したい。夫婦円満を願ってお百度参りのお絹が健気で哀れでもあった。

『桂川連理柵/帯屋の段』呂勢太夫の笑いの芸で和んだ空気の中で登場の大好きな呂太夫。長右衛門には絶望しかない状況が明らかになっていく過程を淡々と語っていって重苦しい空気に変わった。信条として心中は反対だが仕方ないかと思わされてしまう。お半だけを死なせる訳にはいかないのだし。

石部宿屋の段 17:45~18:10
竹本三輪太夫
野澤勝平
ツレ
豊竹咲寿太夫
鶴澤清允

六角堂の段 18:25~18:44
豊竹希太夫
竹澤團吾

帯屋の段  18:44~19:57

豊竹呂勢太夫
鶴澤清治

豊竹呂太夫
鶴澤清介

道行朧の桂川  20:00~20:20
お半   豊竹睦太夫
     竹本津國太夫
長右衛門 豊竹芳穂太夫
     竹澤團七
ツレ
竹本碩太夫
野澤錦吾
豊竹薫太夫
鶴澤清方

「桂川連理柵 (かつらがわれんりのしがらみ)」人形役割
娘お半  豊松清十郎
下女りん 吉田玉路
丁稚長吉 吉田玉佳
帯屋長右衛門 吉田玉也
出刃屋九右衛門 桐竹亀次
出刃屋の女中 吉田玉延(前半)
       吉田玉峻(後半)
女房お絹   吉田勘彌
弟儀兵衛   吉田玉志
母おとせ   桐竹勘壽
親繁斎    吉田清五郎
下女     おおぜい
下男     おおぜい

国立劇場五月文楽公演第2部『競伊勢物語』「玉水渕の段」「春日村の段」2022年5月10日

2022-05-26 23:25:13 | 日記
歌舞伎で初演された作品が浄瑠璃に作り直されたという珍しい作品。「御位争い」を背景に三種の神器の探索と身替りとして実の娘を殺さなければならない紀有常の悲劇。派手さはないが文楽らしい人情に訴える物語。

1『競伊勢物語/玉水渕の段』35年振り上演からか空席の目立つ第2部。三種の神器のひとつ御鏡の捜査から御位争いをめぐる悲劇の発端。この場だけで何が面白いのか全く分からないけれど亘太夫、織太夫ら若い出演者の熱気が見ものなのだろう。演者も観客も手探りな感じが舞台上の出来事と重なって見えた。

『競伊勢物語/春日村の段』切り場語りに昇進した千歳太夫にとっては難物だったか。親子の対面と身替わりの死。よくある設定とはいえ変化に富む場面を説得力を持って語るのは難しそう。玉男の紀有常と和生の小よしに対して一輔の信夫が健闘していた。はったい茶の藤太夫が好みにあい好印象な場面となった。

玉水渕の段 14:30~15:04

口 豊竹亘太夫
  鶴澤清丈
奥 竹本織太夫
鶴澤清友

春日村の段 15:19~17:11

中 竹本小住太夫
  鶴澤清馗
次 豊竹藤太夫
  鶴澤藤蔵
切 竹本千歳太夫
  豊澤富助
琴 鶴澤清公

競伊勢物語 (はでくらべいせものがたり)」人形役割
文字摺売りお咲 吉田文昇
文字摺売りお谷 吉田勘市
娘信夫     吉田一輔
礒の上豆四郎  吉田玉勢(前半)
        吉田簑紫郎(後半)
亭主五作    桐竹勘次郎
鉦の鐃八    吉田簑一郎
代官川島典膳  吉田玉輝
母小よし 吉田和生
紀有常  吉田玉男
在原業平 吉田 玉彦(前半)
     桐竹勘介(後半)
井筒姫  吉田和馬(前半)
     吉田簑之(後半)
在所の女  大ぜい
有常の家来 大ぜい
捕り手   大ぜい