詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

N響「夏」2022 『ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18』『チャイコフスキー/交響曲 第4番 へ短調 作品36』

2022-07-20 22:33:05 | 日記
今日の最後は耐震工事で2年半休館していたNHKホールへNHK交響楽団が初登場。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のソリストが小曽根真と聞いて即チケットを購入。2016年5月の定期演奏会にチック・コリアと登場した鮮烈な記憶が残っていたからです。チック・コリアは亡くなってしまいましたが、アンコール曲はチック・コリアの「ラ・フィエスタ」でした。客席から楽員の顔がよく見えるようソリスト自らピアノの大屋根を上げ下げする大サービス。驚きました。衣裳はゴールドのテールコートで胸の部分はシルバー。彼しか着られません。

ラフマニノフ /ピアノ協奏曲第2番。チック・コリアと定演に出演して以来の小曽根真がソリスト。当然のことながらJazzyなニュアンスがあちらこちらに顔を出すユニークな演奏。オケに敬意を表してソリスト自ら大屋根を上げ下げしてアンコール。超絶技巧が炸裂して大興奮させられた。

チャイコフスキー/交響曲第4番。コロナ禍とほぼ同じ時間休館していたNHKホールにN響が帰ってきた。絶望からの再生の曲。アンコールで演奏されたシベリウス/カレリア組曲第3曲に託されたのは希望だと思った。何があろうとも生き続けなければならないと訴える良いプログラムだった。


N響「夏」2022
2022年7月15日 (金) 開演 7:00pm

NHKホール

曲目
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
チャイコフスキー/交響曲 第4番 へ短調 作品36
指揮 : 尾高忠明
ピアノ : 小曽根 真

七月大歌舞伎 第3部 『風の谷のナウシカ 上の巻   ―白き魔女の戦記―』

2022-07-20 22:06:40 | 日記
新橋演舞場での初演も通しで観た。その時、初めてアニメを観た。原作本も読んだ。だから…。心に響かない物語だったという印象しかない。前回は菊之助が負傷。今回はコロナ禍で休演を余儀なくされるほどの歌舞伎座クラスターの発生。ついていない芝居ではある。

『風の谷のナウシカ』序幕。アニメの完全再現ではなくアニメを歌舞伎化するのに腐心した舞台。米吉のナウシカ、菊之助のクシャナ、右近のアスベルなど魅力的だけれど、幼き玉蟲の精の丑之助に全てもっていかれた感じ。ナウシカとの連舞で心が通い合い和解に導く幕切れは感動的。凄い才能だと感嘆した。

『風の谷のナウシカ』大詰。菊之助のクシャナを中心に描かれ戦闘場面もあるが舞台上の制約があるので手際よく展開しただけに終わる。ナウシカの小型飛行機?メーヴェによる宙乗りも滞空時間が長いので間延びしてしまったのが残念。タペストリー幕が歌舞伎座の大舞台に似合っていて感心した。


風の谷のナウシカ
上の巻 ―白き魔女の戦記―

クシャナ 菊之助
ナウシカ 米吉
アスベル/口上 尾上右近
ケチャ 莟玉
幼き王蟲の精 丑之助
幼きナウシカ 寺嶋知世
ラステル 吉太朗
クロトワ 吉之丞
ミト 橘太郎
トルメキアの王妃 吉弥
ジル 権十郎
城ババ 萬次郎
チャルカ 錦之助
ユパ 彌十郎
マニ族僧正 又五郎

風の谷のナウシカ
序幕 18:30-19:52

幕間 30分

風の谷のナウシカ
大詰 20:22-21:08














七月大歌舞伎 第2部 『夏祭浪花鑑』『新歌舞伎十八番の内 雪月花三景 仲国』

2022-07-20 21:52:38 | 日記
久しぶりの海老蔵親子が歌舞伎座に出演。海老蔵ひとりだけでは芝居は成立しないことを思い知らされた。大人の芸を見せられるとホッとする。海老蔵はこのまま我が道を行くのだろうな。

『夏祭浪花鑑』雀右衛門のお辰と左團次の三婦でようやく大歌舞伎に相応しい舞台に。海老蔵の団七は男を磨く序幕から気弱で情けない大詰まで人間の弱さを見せていく方向。今回は演じないがお辰と団七の対比を狙ったものかと思うが台詞が明瞭でないのは計算違いか。市蔵の義平次が好演した。

『雪月花三景 仲国』福助の八条女院は病を感じさせない存在感。勸玄とぼたんの達者な踊りで客席がわいて最終景はベジャールの「ボレロ」風に群舞の中央で海老蔵が飛び跳ねた。新歌舞伎十八番で親子競演なら『鏡獅子』を観てみたいと思った。二人が蝶の精を踊ったのも胡蝶への布石なのかもしれない。

夏祭浪花鑑
住吉鳥居前
三婦内
長町裏

団七九郎兵衛 海老蔵
一寸徳兵衛 右團次
お梶 児太郎
琴浦 莟玉
伜市松 堀越勸玄
玉島磯之丞 廣松
下剃三吉 九團次
三河屋義平次 市蔵
おつぎ 齊入
堤藤内 家橘
お辰 雀右衛門
釣舟三婦 左團次

雪月花三景
仲国

仲国 海老蔵
女蝶の精 ぼたん
男蝶の精 堀越勸玄
虫の精 竹松
同   廣松
同   男寅 
同   莟玉
同   九團次
小督局 児太郎
仲章  種之助
八条女院 福助

夏祭浪花鑑 14:40-16:40

幕間 20分

新歌舞伎十八番の内 雪月花三景
仲国    17:00-17:38

七月大歌舞伎 第1部『三代猿之助四十八撰の内 當世流小栗判官』

2022-07-20 21:33:34 | 日記
『通し狂言 當世流小栗判官』の現・猿翁の初演の初日を観ている。今回はコロナ禍で時間制約のある中で見せ場だけの寄せ集め。こんなに短くても楽しめるなら、あの初日に延々と上演し続けたのは何だったのかという思いはある。

『小栗判官』序幕。時間短縮が至上命令とはいえ約20分で終わってしまうとは。碁盤乗りを見せるだけに終わってしまった。基礎体力が低下しているのか覇気のない馬でなんとか事故のないようにと祈り続ける。全く絵面に決められなかった馬の脚のぶら下がりぶりに落胆。猿之助の輝きだけが救いだった。

『小栗判官』二幕目。巳之助の橋蔵は現代風にUpdate。面白いけれどコロナ禍ゆえ大笑いはできない。猿之助の浪七が岩組の上での切腹からの流れる大量の血潮。幕切れの逆落としまで初演した現猿翁の記憶が蘇った。観客に驚きを与え楽しませようとした精神は今も生きている。猿之助が先代に似せてきているのも良い。

『小栗判官』大詰。哀れさから嫉妬へ右近のお駒が出番は短いが強烈な印象。白馬にまたがる宙乗りが一番の見せ場だが酷暑の中での雪景色はご馳走。最高齢の寿猿と最年少の眞秀君にも芝居らしい活躍の場があって楽しめた。大勢役者が出ていた気がしたが幕切れでの一座の少数精鋭ぶりに驚いた。

三代猿之助四十八撰の内
  通し狂言 當世流小栗判官
    市川猿之助 市川笑也
    天馬にて宙乗り相勤め申し候


小栗判官/浪七 猿之助
照手姫 笑也
矢橋の橋蔵/横山太郎 巳之助
万屋娘お駒/岡村采女之助 尾上右近
横山三郎 男寅
遊行上人弟子一眞 寺嶋眞秀
横山次郎 青虎
横山太郎妻浅香 梅花
旅女房およし 寿猿
後家お槙 笑三郎
横山大膳 猿弥
鬼瓦の胴八 男女蔵
浪七女房お藤/上杉安房守 門之助
遊行上人 歌六

三代猿之助四十八撰の内
當世流小栗判官
序幕・二幕目 11:00-12:17

幕間 30分

三代猿之助四十八撰の内
當世流小栗判官
大詰12:47-13:40

英国ロイヤル・バレエガラ Aプロ 2022年7月14日 オーチャードホール

2022-07-15 09:37:24 | 日記
夏によく開催されるスターダンサーを集めたグループ公演英国ロイヤル・バレエ団からプリンシパルを中心にした選りすぐりのダンサーが来日し芸術監督のケヴィン・オヘアも来日して監修するというもの。音楽は一部のオーケストラピットに置かれた2台のピアノの生演奏の他は基本録音。PAの再生装置よりも原盤の音楽のクオリティが低くて聴くに耐えないもので閉口しました。あと場内の避難誘導灯は消されないままで蛍光灯色の光を浴びながらのバレエ鑑賞でこれも減点。

3演目に出演して大活躍のサラ・ラム、人気実力ともにトップクラスのマリアネラ・ヌニェスが観られたのが何よりでした。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ「明日」振付:ウェイン・マクレガー音楽:リヒャルト・シュトラウス。フランチェスカ・ヘイワード、セザール・コラレス。希望を綴る詩が流れて男は柔軟な身体を駆使して女に寄り添う。そして訪れる二人の幸福な時間。美しく静かで雄弁なバレエは愛を語る肉体となりました。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ「ジゼル」より第2幕のパ・ド・ドゥ。サラ・ラム、マルセリーノ・サンベ。アルブレヒトがジゼルの背中に添えた手には愛があった。でも彼女は生命を感じさせないまま踊り続ける。残酷なすれ違いが続いて悲しみがますばかり。結ばれないまま別れの余韻を残して幕となりました。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。
「ル・パルク」振付:アンジュラン・プレルジョカージュ音楽:モーツァルト。ヤスミン・ナグディ、リース・クラーク。女は心を病むほどに愛しているのか。熱い想いを隠そうともしないで男の身体に絡みつく。愛の形は様々だが狂おしいまでの想いを男は受け止めただろうか。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「アポロ」よりパ・ド・ドゥ振付:ジョージ・バランシン音楽:ストラヴィンスキー。マリアネラ・ヌニェス、平野亮一。この振付家らしく端正で美しいバレエ。清潔で理想的な愛を描いたのだろう。二人の身体が重なりあって人間ではない何かに生まれ変わったように思った。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉「白鳥の湖」より第2幕のパ・ド・ドゥ。佐々木万璃子、ウィリアム・ブレイスウェル。ローレン・カスバートソンが来日不可能となりファーストアーティストの佐々木万璃子が代役。生演奏ではないので劇的で繊細な表現が厳しくて観ているのが辛くなった。バレエは生オケに限るなあ。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ振付:ケネス・マクミラン音楽:プロコフィエフ。高田 茜、アレクサンダー・キャンベル。バルコニーの上と下で無言で見つめあう二人に永遠の愛の姿を見た。あとの踊りはオマケのようなもので大満足するとは不思議だ。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「コンチェルト」より第2楽章のパ・ド・ドゥ振付:ケネス・マクミラン音楽:ショスタコーヴィッチ。サラ・ラムはピアノの生演奏に乗せて自由に踊る。手先から足の先まで全く隙がない完璧な美しさを持つダンサー。平野亮一はサポートに徹していて見せ場は少ないが好感。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。
「マノン」より第1幕(寝室)のパ・ド・ドゥ振付:ケネス・マクミラン音楽:マスネ。フランチェスカ・ヘイワード、アレクサンダー・キャンベル。ドラマチックなバレエだけに生演奏でないのは作品の価値を損ねると思う。踊らされた二人は気の毒という他はなかった。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「精霊の踊り」振付:フレデリック・アシュトン音楽:グルック。ウィリアム・ブレイスウェル。珍しく男性のソロ作品。男らしい力強さの中に優美さもあってバレエに求められるものを体現したような踊りだった。一瞬女性が踊っているかと錯覚させられて面白がって観た。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「海賊」よりパ・ド・ドゥ。ヤスミン・ナグディ、セザール・コラレス。これでもかという超絶技巧の大盛り大会。高く長く跳びクルクルといつまでも回転する。本当はもっと出来る人達なのだろうけれど下品になる一歩手前で踏み止まったのはロイヤルの看板のためなのか。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「ジュエルズ」より"ルビー"振付:ジョージ・バランシン音楽:ストラヴィンスキー。高田 茜、マルセリーノ・サンベ。スピード感とユーモアが溢れていて踊る楽しさが客席まで伝わってくるバレエ。最初に滑ってヒヤリとさせたが最後まで余裕で踊りきって安堵させた。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「インフラ」よりパ・ド・ドゥ。振付:ウェイン・マクレガー音楽:マックス・リヒター。サラ・ラムは3度目の登場となった。元プリンシパルのエドワード・ワトソンが復帰して渋い色調の照明の中で踊られる大人のバレエ。地味だけれど技巧も表現力も必要だが万全な二人だった。

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉Aプロ。「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」振付:ジョージ・バランシン音楽:チャイコフスキー。最後を飾るに相応しいマリアネラ・ヌニェスとリース・クラーク。超絶技巧を次々と繰り出し驚かせるけれどバレエへの愛が満ちあふれていた。カーテンコールも同様に見事な演出。それぞれ得意な振付で踊るけれど著作権はクリアしているのだろうか?

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉7月14日(木)のキャスト

【Aプログラム】
                            

「明日」

振付:ウェイン・マクレガー
音楽:リヒャルト・シュトラウス

フランチェスカ・ヘイワード、セザール・コラレス
(下部に歌詞の和訳掲載)


「ジゼル」より第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ(ジャン・コラーリ、ジュール・ペローに基づく)
音楽:アドルフ・アダン

サラ・ラム、マルセリーノ・サンベ


「ル・パルク」

振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

ヤスミン・ナグディ、リース・クラーク  ピアノ:ロバート・クラーク、ケイト・シップウェイ


「アポロ」よりパ・ド・ドゥ

振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

マリアネラ・ヌニェス、平野亮一


「白鳥の湖」より第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

佐々木万璃子、ウィリアム・ブレイスウェル


「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

高田 茜、アレクサンダー・キャンベル


≪休憩≫


「コンチェルト」より第2楽章のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン
音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィッチ

サラ・ラム、平野亮一  ピアノ:ケイト・シップウェイ、ロバート・クラーク


「マノン」より第1幕(寝室)のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ

フランチェスカ・ヘイワード、アレクサンダー・キャンベル


「精霊の踊り」

振付:フレデリック・アシュトン
音楽:クリストフ・ヴィリバルト・グルック

ウィリアム・ブレイスウェル


「海賊」よりパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリゴ、ルドヴィク・ミンクス

ヤスミン・ナグディ、セザール・コラレス


「ジュエルズ」より"ルビー"

振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
高田 茜、マルセリーノ・サンベ  ピアノ:ロバート・クラーク、ケイト・シップウェイ


「インフラ」よりパ・ド・ドゥ

振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター

サラ・ラム、エドワード・ワトソン


「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」

振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

マリアネラ・ヌニェス、リース・クラーク


※出演者、演目が当初の発表より変更になっております。


◆上演時間◆

第1部  18:30~19:30
休憩  20分
第2部  19:50~20:55