2021年8月27日のまにら新聞から
8月27日のまにら新聞から
両親処刑の憎しみ越え 故アブエバ元比大学長の戦後
政治学者のホセ・アブエバ氏が今月18日、93年の生涯を閉じた。フィリピン大で第16代学長を務めた後、首都圏ケソン市でカラヤアン大を開学。民主主義の行方を憂い、常に平和を希求してきたアブエバ氏の原点には、日本統治時代の悲痛な体験とその後の日本との深い関わりがあった。
アブエバ氏はビサヤ地方ボホール州タグビララン市で父テオドロ、母ネナの間に生まれ、第2次世界大戦が終わる1945年には16歳だった。当時を振り返った池田大作・創価学会名誉会長との対談(同名誉会長の著作「ワン・バイ・ワン」収録)によると、両親は日本軍の植民地支配やかいらい政権への協力を拒み、抵抗運動に身を投じたことで日本軍に連行された。
6人のきょうだいを家に残し、3番目のアブエバ氏が、いとこと一緒に両親を探しまわった。20キロ離れたバレンシア町の「処刑場」とされる丘の近くで、見覚えのある両親の服の切れ端から遺体を特定。他の比人らとともに拷問、処刑されたことも知ったという。
親族の助けもあり、きょうだいたちはマニラへ移った。そこで教育を受け、怒りや憎しみを乗り越え戦後を支え合ってきた。
2歳下の弟、ナポレオン・アブエバ氏も1976年に比政府から「彫刻家の父」と表彰されるなど、国民的芸術家として活躍。2018年に88歳で亡くなった。
▽日本生活、和睦に貢献
ホセ・アブエバ氏自身は1954年にフィリピン大教員の傍ら、マグサイサイ大統領直轄の政府機構再編委員会のスタッフに。コラソン・アキノ大統領時代には立法・行政軍事基地審議会議長も務めた。
87〜93年のフィリピン大学長の時には、入学者の偏りを防ぐため、富裕層の学生からは入学費用を多く取る制度(STFAP)も導入している。
77〜87年には東京の国連大学本部で、各国の学者と世界的な災害や飢えの撤廃、社会開発のあり方を研究。その中で日本語や日本文化を学び、日本人の友人にも恵まれた。「運命か偶然か日本で生活し、学び、働くことを通して、フィリピン人と日本人の和睦(わぼく)に微力ながら貢献できたと思いたい」との言葉を残している。
▽戦争体験を継承
ホセ氏の息子で米国ペンシルバニア在住のジョバート・アブエバ氏は、まにら新聞に「父からは戦時中の生活について度々聞いていた。祖父母の死についても成長する中で耳にしてきた。祖父母は故郷のボホール島が占領される中、子どもたちのために平和な日常を望み続けていた。祖父母の処刑場所には、祖母の砕けたロザリオもあったと聞いている」と語った。
「父は互いの対話と理解から平和や和解は導き出せることを信じていた。国連大ではその課題と実践に取り組んできた。そして私たちきょうだい4人も父と一緒に日本で育ち、日本の文化や言葉を理解し、深い友情を育んできた」とアブエバ一家に継承された日本との関係を振り返った。(岡田薫)
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バタンガス州タナウアン市で23日午後6時半ごろ、セルバンド・ランティカンさん(56)がおいのマークトーマス容疑者(26)に殺害された。同容疑者は正当防衛を主張している。タナウアン署によると、同容疑者はきょうだいを迎えに行くため家を出たところ、セルバンドさんが背後からナイフを持って突然現れ、容疑者を刺した。容疑者は負傷しながらも、ナイフを奪っておじを刺したという。目撃者2人もその事実を証言している。2人は直ちに病院へ搬送されたが、セルバンドさんは到着時に死亡が確認された。
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