こつん、と落ちて、ころころ転がる。
追いかけていく内に、夢中になる。
しばらく走って、追いかけて、ふと顔を上げると、知らないところ。
あわててさっきのころころにすがろうとするも、見つからない。
かわりに、崖に開いた、まっくろい穴。
のぞきこんでも、なにも見えない。
耳をすませど、なにも聞こえない。
きっとこの中にころげ込んだにちがいない。
さて、入ったものか、どうか。
錆びた金属は、スパイシーで、食欲をそそる。
弱い歯だと、噛み切るときにやや軋むが、それもまたオツなもので。
食道をがらんごろん通る時が、なんともいえず壮快で。
あまり咀嚼せずに、飲み込むのが、通。
流し込む酸は弱めで、じっくりと溶かすのがお勧め。
はじける水素が、やさしくのどを洗う。
気持ちがよければ、そのまま寝てしまうのも一興。
消化に悪いというけれど、夢見はそんなに悪くない。
きしきし体が組み上がる感触が、淡くただよう意識に適度な満足感を与えるだろう。
赤いインクは、拒絶のしるし。
はねかえったペン先で、毛羽立った帳面に、こすりつける。
今日で110と8日。空は相変わらずもやって、どこかで動く機械音をくぐもらせる。
高いクレーンの上は、陽が当たって明るく、窓枠の錆も服につかないので、最近はほとんどここで過ごす。レバーを交互に動かしてみたり、座席の下をのぞきこんでみたり。足元に落ちていたこのノートは、いつかの雨水でふやけて、そのあとの乾燥でカリカリに乾いていた。字が覚えられるかと思ったのに、にじんで流れてしまったらしく、ほとんどなにも見てとれない。だから毎日バツを書く。一日に、3つ。朝と、昼と、夜と。祈りたい朝には、ちいさなバツ。むかつく夜には、大きなバツ。たくさんたまると、なんとなく満足。透明なインクびん、日にかざす気分にもなる。指先で回せば、滑らかで鋭い光が、つるんと伸びて網膜ぎりぎりを通り過ぎる。
だめだめ!もっと食べなきゃ。ほら、その赤いのも、青いのも。
こんなにいっぱい、むりだよ。第一、どこでこんなに見つけてきたの?
へへん。探せばけっこうあるものよ?鍵の開け方、わかっちゃったんだもんねー。
え?じゃあ、あそこも開けられるかな?
?あそこって、どこ?
教えない。もう!この青いの、ぶわぶわして、ぜんぜん噛み切れないよ。食べてよこれ。もういらない。
あそこってどこー?ねーねーねーねー!
油断してるとぐにゃりとゆがむ、見る世界。
息呑んで両手で目押さえても、ぐらつく足元どうにもならずに。
そんなときどうすればいいのかをずっと研究しているわけですよ。私は。
きょうふ、きょうふ、拡大鏡で観るせかい。
すべての部分がギラギラ光ってぱりんとはじけて渦を巻く。
手に持った消しゴムが、 け、しごむ!! になるせかい。
ちかちかして、きらきらしたまま、ものすごい勢いで迫ってくる。
意味という意味が、意味をなさなくなる瞬間。それは静止した永劫。
みんなは見たことないみたい?
悪い夢なのは、あれかこれか。とにかく振り払わないことには、立っていられない。
叫ぶのは得策ではない。不用意に力を込めると、等比級数的に暴走して、潰れ込んでしまう。
だから、そっと揺らす。目をつぶったまま、そっと息をする。細く、はいて、短く、すって。
目を開いたとき、何がなくても大丈夫なように、覚悟する。
まあ、たいてい、なんともないんだけどね。
なんでだろ?とても、不思議。
ひんひんひん。じかんが、ない。
追いかけていく内に、夢中になる。
しばらく走って、追いかけて、ふと顔を上げると、知らないところ。
あわててさっきのころころにすがろうとするも、見つからない。
かわりに、崖に開いた、まっくろい穴。
のぞきこんでも、なにも見えない。
耳をすませど、なにも聞こえない。
きっとこの中にころげ込んだにちがいない。
さて、入ったものか、どうか。
錆びた金属は、スパイシーで、食欲をそそる。
弱い歯だと、噛み切るときにやや軋むが、それもまたオツなもので。
食道をがらんごろん通る時が、なんともいえず壮快で。
あまり咀嚼せずに、飲み込むのが、通。
流し込む酸は弱めで、じっくりと溶かすのがお勧め。
はじける水素が、やさしくのどを洗う。
気持ちがよければ、そのまま寝てしまうのも一興。
消化に悪いというけれど、夢見はそんなに悪くない。
きしきし体が組み上がる感触が、淡くただよう意識に適度な満足感を与えるだろう。
赤いインクは、拒絶のしるし。
はねかえったペン先で、毛羽立った帳面に、こすりつける。
今日で110と8日。空は相変わらずもやって、どこかで動く機械音をくぐもらせる。
高いクレーンの上は、陽が当たって明るく、窓枠の錆も服につかないので、最近はほとんどここで過ごす。レバーを交互に動かしてみたり、座席の下をのぞきこんでみたり。足元に落ちていたこのノートは、いつかの雨水でふやけて、そのあとの乾燥でカリカリに乾いていた。字が覚えられるかと思ったのに、にじんで流れてしまったらしく、ほとんどなにも見てとれない。だから毎日バツを書く。一日に、3つ。朝と、昼と、夜と。祈りたい朝には、ちいさなバツ。むかつく夜には、大きなバツ。たくさんたまると、なんとなく満足。透明なインクびん、日にかざす気分にもなる。指先で回せば、滑らかで鋭い光が、つるんと伸びて網膜ぎりぎりを通り過ぎる。
だめだめ!もっと食べなきゃ。ほら、その赤いのも、青いのも。
こんなにいっぱい、むりだよ。第一、どこでこんなに見つけてきたの?
へへん。探せばけっこうあるものよ?鍵の開け方、わかっちゃったんだもんねー。
え?じゃあ、あそこも開けられるかな?
?あそこって、どこ?
教えない。もう!この青いの、ぶわぶわして、ぜんぜん噛み切れないよ。食べてよこれ。もういらない。
あそこってどこー?ねーねーねーねー!
油断してるとぐにゃりとゆがむ、見る世界。
息呑んで両手で目押さえても、ぐらつく足元どうにもならずに。
そんなときどうすればいいのかをずっと研究しているわけですよ。私は。
きょうふ、きょうふ、拡大鏡で観るせかい。
すべての部分がギラギラ光ってぱりんとはじけて渦を巻く。
手に持った消しゴムが、 け、しごむ!! になるせかい。
ちかちかして、きらきらしたまま、ものすごい勢いで迫ってくる。
意味という意味が、意味をなさなくなる瞬間。それは静止した永劫。
みんなは見たことないみたい?
悪い夢なのは、あれかこれか。とにかく振り払わないことには、立っていられない。
叫ぶのは得策ではない。不用意に力を込めると、等比級数的に暴走して、潰れ込んでしまう。
だから、そっと揺らす。目をつぶったまま、そっと息をする。細く、はいて、短く、すって。
目を開いたとき、何がなくても大丈夫なように、覚悟する。
まあ、たいてい、なんともないんだけどね。
なんでだろ?とても、不思議。
ひんひんひん。じかんが、ない。