上海ライフ：落葉景観道を歩く（５）華山路まで

１．復興西路

この辺りでは北にあった淮海中路が復興西路と交差し南側になります。

２．９９号住宅　旧英国商社「正廣和洋行」大班旧居

「正廣和洋行」は英国ロンドンに本社のある清涼飲料水会社で、１８７４年に上海や香港、北京、天津などに開業しました。
「アクエリアス」ブランドのサイダーを販売していたようです。
福州路４４号に上海の本社ビルがあり、「アクエリアス・カンパニー」と呼ばれていました。

１９３０年代前半からは税関監督の唐海安が住んでいます。
今では彼は「売国奴」と呼ばれていますが、当時国民政府財政部長の宋子文（宋家三姉妹の兄弟）に取り入り、巨額の財を成したようです。

３．上海市の優秀歴史建築パネル

４．徐匯区の優秀歴史建築パネル

「劉靖基」１９０２年江蘇省出身の女性。
１９３０年当時、上海の織物工場の職員から始まり、綿織物同業界の理事まで上り詰めた人。

「実業救国」を合言葉に業界の発展に尽力し、中国人民政治協商会全国委員副主席やその他業界の要職を歴任します。
文革後、上海市がこの邸宅を彼女に手配しました。１９９７年享年９５歳。
晩年は書画の蒐集が楽しみで、彼女の残した４０品が上海博物館に寄贈されたそうです。

最近ではこの邸宅が映画「色戎」の撮影で、主人公たちが密会する場所として使われ有名になったようです。

５．４０号住宅

美しい住宅ですが暗い過去も秘めています。

６．優秀歴史建築

７．唐紹儀旧居

唐紹儀は清代末期の政治家・外交家で中華民国初代の内閣総理でしたが、１９３８年９月３０日蒋介石の命を受けた刺客により、この家で暗殺されました。

彼は１８７４年１２歳の時にアメリカ留学児童に選ばれ、コロンビア大学で学び１８８１年に帰国します。
朝鮮の総領事や中華民国の総理などを歴任し辛亥革命後の国家にも貢献しましたが、１９２０年孫文と政治見解が異なり政府を離脱し上海へ蟄居します。

日中戦争中に日本側からの担ぎ出し工作を受けたのが原因とされていますが、後年、台湾の雑誌に当時の関係者が「誤殺」だったとの手記を載せているそうです。

８．２号住宅

裏手には大きな庭をもった丁香花園がある贅沢な環境です。

９．シルク王「莫觴清」

「莫觴清」（１８７７－１９３８）浙江省出身、二十歳のころに上海に出てきて米国商社で「買弁：外国商人が貿易の仲買人として雇った中国人」として働きます。
その後シルク織工場の経営に乗り出し、「薔薇」と「ダイヤモンド」ブランドのシルク織物がヒットし業績を拡大、工場も１０を超え「上海のシルク王」と呼ばれるまでになりました。

矛盾の小説「子夜」のモデルとなった人物だそうです。
しかし晩年は不幸な事件に遭遇し、間もなく亡くなりましたが、家族はこの家を出てその後しばらく外国人が住んでいたそうです。

織物工場は娘婿が後を継ぎ、製品は海外にまで輸出し、ニューヨークにも支店を開設するほどに発展しましたが、１９５６年に全国的に私営企業は国営企業と合併させられてしまいます。

邸宅はその後、上海市高官の住宅などに使われていましたが、現在は上海科学技術文献出版社が使用中です。

１０．福開森路（ファーガソン通り）

フランス租界当時、武康路は福開森路と呼ばれていました。
１８８６年に中国に来訪し、以後５７年間中国各地で中国と西洋との文化交流に貢献したカナダ出身のアメリカ人John Calvin Fergusonの名前から採られました。

彼は１８８６年にアメリカのボストン大学を卒業後すぐに中国を訪れ、先ず镇江で中国語を学習し、翌年に南京へ向かいます。
１８８８年、南京で匯汇文書院（１９１０年に金陵大学と合併、１９５２年南京大学に編入）の創設に従事し、初代院長となります。

１８９６年には上海の南洋公学（交通大学の前身）に監院として赴任します。
１９４３年に当時上海を占領していた日本がアメリカへ出国させるまでの５７年間中国の地で過ごしました。

１１．華山路交差点

歴史的建造物や歴史を彩った登場人物はまだまだ紹介しきれませんが、約１時間半の散歩でした。


撮影：ＣＡＮＯＮ　ＥＯＳ５ＤIII　＋　ＥＦ２４－１０５ｍｍＦ４　Ｌ　ＩＳ