バスを降り、医院に向かう道の信号を渡ると、すぐ右と左の道路があり、左の車の通らない道を行こうか、右の車がやっとすれ違う車道を行こうか、歩きながら一瞬考えて右の危険な道路を歩くことにした。後ろから自動車が来てもノロノロついてくるか、私がよけるか。 歩いていると車が傍による、私がちょっと止まってまた歩き出す、するとその車がまた私の傍に止まるので、変だなと思い運転手をみると福寿さんだった。
「今あなたの家に行くところだった」
この偶然の出来事によって、近くの駐車場で共有する要件の打合せができた。
思えば先ほどの選択肢で左の道を選べば今日一日は会えなかっただろう、右の道路を歩いたことによって彼の車に出会うことができた。二人の別々の行動が、何故共有する事象に向かって、この一点で合流するのか、 偶然にしてはあまりにもでき過ぎている。 何か目に見えない、人間の思考の及ばない「引力」が働いているような気がする。
異次元の世界があるのか、よく「何を取りに来たっけ」と度忘れすることがある、そんなときは元の場所に戻ると思いだすよと云われ、その通りにすると思い出すケースを何度も経験している。思うに時間の、その瞬間、瞬間が一枚のシートになって元の場所にまだ消えずに残っているのではないかと私は思うようになった。