竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

いよいよ電力自由化がスタート

2016年03月29日 | 電力自由化
2016年もあっという間に3月が終わろうとしています。本当に猛烈に忙しい3ヶ月でした。
毎週2回くらいの頻度で講演会が入り、数本の機関紙誌に原稿を書き、新聞でも取り上げられました。
ちょうど4月に生活クラブの「季刊・社会運動」の電力自由化特集号で、その一つ、かなりまとまった記事が出ます。
ラッシュジャパンのホームページでは、私がイージーパワー株式会社の顔で、電力自由化について詳しく語っています。

https://www.lushjapan.com/tag/energy-campaign

さて、こんな感じで4月を目前に、世の中は「電力自由化」に向かって盛り上がっています。
しかし、低圧契約(一般家庭やコンビニなど)で、電力会社を切り替えるスイッチを実際に行ったのは24万件程度だそうです。
ざっくりと5000万世帯(正確には5195万世帯=2010年国勢調査)として、この数は0.5%にも達していません。
盛り上がってきている割には、みなさん動いていないのだということです。

24万件のうち東京ガスが11万件、エネオスが5万件と聞いていますので、この二つが相当に健闘しているとも言えます。
高橋陽一さんの「副キャプテン自由化」、吉田羊さんの「いくじなし!」など、CMも面白い。
ホームページの充実度では、私は楽天エナジーを押します。
「なるほど算」が最高に面白い・・と盛り上がれます。
だがしかし、電力自由化って、そういうことなんでしょうか・・・。

まずは「脱東電!」が一番

私は電力小売に参入する新規事業者を4つに分類しています。
ただ、各社とも、どこから電気を調達しているかを明らかにしていないケースが多く、業界紙やインターネット上で調べまくるしかないのですが、それでも正確ではないことがあります。

A)東電系:東京電力の電気を仕入れて売る。もしくは代理店として販売する。
B)他電力系:東京電力以外の大手電力会社の電気を仕入れて売る。もしくは代理店販売する。
C)独立系:自社の発電設備からの電気を販売する。あるいは東電でも他電力でもない事業者の電気を仕入れて販売する。
D)市民再エネ系:市民や自治体、生協などがつくる、再生可能エネルギー重視の事業者。

A)ではKDDIとソフトバンクの携帯2社が代表的と説明をしてきましたが、どうもKDDIは関西電力。つまりB)のもようです。
ドコモは中部電力との提携で、これもB)と思っていましたが、現時点でまだ正式発表はないようです。
KDDIはエネオスからも仕入れるようなので、C)の側面もあります。
そういう意味では、ソフトバンクは「パワードバイSB」という自社の再生可能エネルギーの電気を売るメニューもあるので、これはD)に近いと言っても良いでしょう。

東京電力との提携先一覧
http://www.tepco.co.jp/jiyuuka/service/index-j.html?re_adpcnt=7xl_1hOb&device=c

こちらは携帯電話各社についての分析
http://kakaku.com/energy/article/?en_article=108

そのほかには、上記の提携先一覧で分かるようにプロパンガス会社が多く東電と提携しています。
ニチガス(日本瓦斯)系のプロパンガス会社が多く、さしずめ、東電対東京ガスは、プロパン対都市ガスの様相もあり・・ということでしょうか。
もちろん、プロパンガスの中でもサイサンのようにエネオスと組んで「エネワン」というブランドを開発していたり、太陽ガスのように再エネ電気を追求しているところもあります。
プロパンガスの会社は全国に2万社近くあるそうで、1年後には今度はガスの自由化がはじまり、大手電力会社がガスのシェアを奪うのではないかと防戦に入っています。
それが東電管内では、東電と組んで、東京ガスの都市ガス方式が自分たちのテリトリーを侵略してくるのに対抗しようとしているように見えます。

そのプロパンガス各社には申し訳ないのですが、私はまず「脱東電!」を勧めます。
電気の仕組みを変えるとは、今までのガリバー企業がガリバーでなくなることが大事です。
それが原発事故の責任を取らせることにもなります。経営的に追い詰められることです。
しかし、いまでも供給側の発電所のほとんどを持ち、送電網も握ったままですから、新電力各社より圧倒的に強く、全然対等な競争にはなっていません。
お客が逃げてシェアが減れば、そんな発電所のいくつかをを閉鎖するか売り払うしかなくなります。
まずは東電をシェイプアップさせましょう。
そのためには、まず、ウラに東電が見える電気も買うのはやめときましょう!

石炭系もやめときましょう

B)に当たるのは、その東京ガスが筆頭です。東北電力と組んでということ。ただ、これは「シナジアパワー」という会社を共同設立して、東電管内で高圧・特別高圧契約のユーザーへの電力販売というプレスリリースもあり、低圧(一般家庭)用ということではない可能性もあります。
もしそうであれば、東京ガスの低圧向け電気は、自社の天然ガス火力を中心とした電気の供給で、限りなくC)に近いと言えます。
もう一つB)に当たると思われるのは、ローソンが販売する「まちエネ」です。ローソンと三菱商事が作ったと書かれていて、三菱系のダイアモンドパワーからの仕入れです。そこに中部電力も絡んでいると書かれていたりするのですが、どうもダイヤモンドパワーの調達の中心が中部電力の石炭火力(10万kW)ということのようです。
どうもB)よりはC)に近そうです。
こうしてみると明確にB)なのは、関西電力と組んだKDDI(auでんき)だけかもしれません。
ちなみに東京ガスも千葉県に200万kWの石炭火力を建設する計画で、このB)系統には石炭が一番多そうです。
石炭系と呼べば、このままでも通用するかもしれません。

C)の代表格はエネオスですが、正式にはJXエネルギーという会社です。供給する電気の内訳は、天然ガスと石油で7割くらいという表が東京新聞(3月26日)の特集に出ていました。
再エネは一割くらいで、石炭は使われていません。



ホームページが面白いと書いた楽天エナジーは丸紅の電気を使っています。丸紅は商社ですが、10年近く前から再生可能エネルギーの小水力発電との契約を集め、再生可能エネルギーへの意識の高い会社です。丸紅は独自でも電力を販売し、スタジオジブリと提携して「トトロの森」を応援する「プランG」という電気を販売します。
これは、通常よりも高い!を謳い文句にした、環境マインドの高い人にアピールする電気です。
楽天エナジーは、最近の発表を読むと、小売販売をするのではなく丸紅新電力を楽天の商品の一つとして扱うということのようです。
東京新聞の特集の中で、この楽天+丸紅チームが抜け落ちたのはなぜだろう・・と思います。

この、新規電力小売事業者の中で最も質の高い電気を取り扱っていそうな丸紅が、じつは東南アジアに石炭火力を輸出しようとしている商社でもあります。
じつはエネオスも、日本の石炭輸入の1割近くを担っています。
ここにも石炭の影が・・・。

昨年(2015年)12月にパリで開かれたCOP21(地球温暖化防止のための国際会議)では、今世紀末までにCO2を含む温室効果ガスの排出をゼロにするということで世界中が合意しました。もはや、石炭火力は作れない、いや作っても動かせない時代に入りつつあります。
それなのに、日本では石炭火力の新設計画が2000万kW以上あるのです。
さらに海外にまで輸出しようとしています。
「脱東電!」でB)、C)系の電気を買うときには、このことは絶対にひとこと言いましょう。
B)はまだ原発を保有している電力会社でもあります。いまは九州電力以外は原発が動いていませんが、これも「再稼動させたら、もう買わない!」は重要なひとことかと思います。

市民再エネ系はいつになるのか

そうなると、残るはD)しかないのですが、こちらの市民再エネ系で4月1日から低圧小売を開始できる会社はほとんどありません。
一番の難問は発電所の獲得です。日本の再エネ比率は大型水力を除くと4%程度。しかもその大部分はFIT(固定価格買取制度)契約の発電所で、大抵は大手電力会社、もしくは既存の新電力大手と契約しています。
2014年秋からの、電力自由化を巡る政策の揺れ動きは激しく、多くの発電所は契約を切り替えることに不安を感じただろうと思います。日本ロジテックのように、大きな新電力事業者の事実上の倒産という事件もあり、今動くことには、ますますデメリットを感じたのではないかと思います。
市民再エネ系の、ほとんどは小さな会社が電気を売ってくださいと言っても、「あいよー!」とは行かない状況がありました。
再エネを売りたいのに、肝心の再エネ電気がなくては、電気は売れません。

それでも、「みんな電力」(東京・世田谷)、「トドック電力」(北海道・札幌)、生活クラブエナジー(東京・新宿)などはもう「申込受付」を開始しました。
すでに「予定枠」が埋って、いまは「ウェイティングリスト」になっているかもしれませんが、そのあと10月くらいに低圧小売開始を予定しているところもあり、夏の初めには新たな申込が開始されるのではないかと思います。
そういう市民再エネ系の動きをレビューしていきたい人は、パワーシフトキャンペーンに賛同し、パワーシフト宣言をあげて、情報が届くようにして待機してください。

http://power-shift.org

2014年秋に、九州電力が再生可能エネルギーの送電線への接続拒否を表明してから、再エネには送電線への「接続可能量」が設定されています。
法律はなく、大手電力会社の勝手な計算に基づいて、経産省が黙認をしているだけ。
でも、それを超えると、太陽光発電や風力発電は無制限無保証の「抑制」(発電中止=実際には送電網からの切り離し)がかかることになりました。(これは経産省の施行規則)
おおかげで金融機関からの借り入れは、極めて難しくなり、多くの発電計画がストップになりました。

2015年の夏には回避可能費用の市場価格連動制が発表され、FIT電気の仕入れ価格=回避可能費用は予測が困難な数字になりました。
30分ごとに変動するので、売買が終わってみなければわからない。ギャンブルみたいですね。

そしていま、九州電力や北海道電力では「接続可能量」を突破して送電網への接続をしようとしている発電所に対し、上位系統へ逆潮流を流すための変電所や送電網増強の費用負担を押し付けられたために、その費用負担に耐えかねて、事業断念する発電計画が相次いでいます。
政府はどうも、後押しではなく封じ込めたいらしいのです。

発電所ができなければ、市民再エネ系は電気を売れません。
だから現時点では、まず発電所から作っていくことも必要です。
スペインでは「ソム・エネルジア」(私たちのエネルギー)という団体のように、市民が発電所を作り、市民が供給し、市民が使うと言う仕組みが成立しています。
それは「電気代」という概念ではなく、「私たちのエネルギー」を支える費用です。

電力自由化はまだスタートしたばかりです。
政府のプログラムでも2020年まで4年間です。
その間に「私たちのエネルギー」日本版をぜひ成功させたいですね。










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