竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

再生可能エネルギー促進法をチェック

2011年07月21日 | 自然エネルギー
7月14日から再生可能エネルギー促進法が審議入りしました。3月11日午前に閣議決定されながら、午後に起こった東日本大震災によって店晒しになっていた法案です。震災により深刻な福島原発事故が発生し、日本の原発がすべて止まる可能性も出てきたいま、代替エネルギーとしての自然エネルギーの価値は極めて大きいのです。研究開発段階ではなく、すでに使える技術、世界中で実績をしっかりと上げている技術だからです。計画から建設までに3年はかからない。いま、一気に計画を練れば、2、3年のうちに、日本は自然エネルギー大国になれます。それを実現するカギが、この再生可能エネルギー促進法にあるのです。

ただし手放しで評価できるような「完全法案」ではありません。問題が山積です。その問題を放置して法律が成立すると、とんでもない自然エネルギー普及の障害になるかも知れない。そんな「諸刃の刃」的な法律案なんです。

正式名称は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」です。
全体で6章第39条までありますが、実は本体は第2章の第7条までです。
第8条以下は「調整機関」(正確には「費用負担調整期間」)に関する記述。
電気事業者ごとに自然エネルギーの電気を買取る量が違うので負担額(割合)も異なる。それを均等になるように、複雑な調整をするための仕組みで、いかにも日本的な調整。それを「どこかの法人」に委託するわけで、結局は巨大なお金を扱う「天下り組織」となるわけです。

私はこんなもの不要だと思いますが、ここが問題の本筋ではないので、今日は置いときます。
問題の本筋は第7条までにあります。

まずは第3条、「調達価格及び調達期間」です。
経産省が毎年度の開始前に決めることになっています。
「経済産業省令」で、経産省の手の中にあるのです。
そして、これを決めるときは、「総合資源エネルギー調査会の意見を聞く」となっており、つまりはこの審議会で価格と期間を決めさせるということです。
この調査会での事前審議で、買取り価格は太陽光(業務用)は40円程度、その他の風力、水力、地熱、バイオマスは一律15円~20円とされています。
これは1kWhの単価です。いま家庭用の電気料金は25円くらいなので、15円なら10円の粗利を電力会社がとるということです。
期間についても10年から20年とされています。

ズバリこうだと言うことを決めておらず、法律が通ったあとに、おもむろに数字を出そうとしています。
そして、風力発電について言うと、もし15円になったら、日本に風車を建てることは困難になると言われています。
20円でも買取期間が10年なら、同じく風車は建ちません。

20円20年が必要で、最低ラインでも20円15年です。
10年ではコスト回収ができませんので、事業計画が立てられず、銀行などから借り入れすることもできません。

バイオマスにいたっては、国産の森林材をうまく循環させようと考えるなら20円でも到底無理と言われています。
審議会が、自然エネルギーを普及させるための正当なコストをきちんと見積っていないのです。

そして第4条、「特定契約の申し込みに応ずる義務」。
申し込みに応ずる義務なのに、「応じなくても良い」ことが書かれています。

「その内容が当該電気事業者の利益を不当に害する恐れがあるとき、その他の経済産業省令で定める正当な理由がある場合を除き」と。

誰が「利益を不当に害する」と判断するのでしょう。もし電力会社自身なら、いくらでも好き勝手に拒めることになります。
「どんな場合でも拒んではならない!」と書くべきで、どうしても応じられない理由があるときは、これこれの理由説明とデータを添えて調停機関なりに出せ!としてはどうでしょう。調停機関で認められれば、特例として拒める・・そのぐらいハードルを高くすべきだと思います。

そしてまたしても経済産業省令のブラックボックス。
このブラックボックスをそのままにして、経済産業省に白紙委任することはきわめて危険です。

第5条は「接続の請求に応ずる義務」。
本来なら送電線への優先接続の規定ですが、ここでも「次に掲げる場合を除き」の除外規定。

1、当該特定供給者が当該接続に必要な費用であって経済産業省令で定めるものを負担しないとき。
2、当該電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがあるとき。
3、前2号に掲げる場合のほか、経済産業省令で定める正当な理由があるとき。

「必要な費用」とは何か?事前に明らかにすべきです。
ここまでただし書きを書いているのだから、少なくとも想定されているものがあるはず。
ちなみに風力発電でも小水力発電でも、建設のネックとなっているのが、最寄りの送電線までの電線工事です。
人里離れたところに作るわけだから近くに送電線などありません。
数キロも電線工事をすると、それだけで数百万円から数千万円。コスト押し上げます。
送電線を保有している電力会社側では、この程度は年間維持費用の誤差範囲です。
まさかそれを要求しないでしょうね。

「円滑な供給の確保」も問題です。
現在、30分同時同量という、PPSに対する悪しき嫌がらせがあります。
送電線網が大きな太平洋とすれば、風車1本は流れ込む小川程度でしかない。
その小川の水が一定でないから、太平洋の水量に影響を与えると流れ込むのを拒むというのが、この30分同時同量。
一定で電気を送れない設備は送電線につながせないというのです。
この考え方自体が、自然エネルギーの排除なわけですが、まさかまだそれを続けるつもりじゃないでしょうね。

風車はこれがために電池をつけろと要求され、コストが跳ね上がり、一気に採算が悪化しています。
まさか「促進法」といわれる法律で、それを要求することはないでしょうね。

太陽光発電でも高圧連系の場合は、逆潮防止装置など接続関連機器を総とっかえし(基本的は同じものなのに)その費用一式を太陽光発電設置者側に要求しています。
100万円を超えるケースもあり、小規模な産業用太陽光発電の場合は、コストが5割増しくらいになったりします。

で、やはりここでも「経済産業省令」のブラックボックスです。

そもそもこの法律には、何のためにこの法律を作るのかという目的に、自然エネルギーを何年までにどれだけ増やそうという目標が書かれていません。
少なくとも2020年に20%にするというような目標をうたわなければ、除外規定ばかりで、日本の自然エネルギーは息の根を止められるようなことにもなりかねません。

諸手を上げて賛成・・という空気には警鐘を鳴らしておきます。
皆さんもよーくチェックしてください。




























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2 コメント

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民主党は国民を貧しくする (盗人・李メドベージェフ )
2011-07-21 18:52:59
親韓反日で知られる菅直人は、孫正義らの富者がメガソーラーでさらに儲けるために再生可能エネルギー法案を成立させることに政治生命を掛けている。
同法案が不幸にも成立すると、電力会社はメガソーラーなどで発電した電力の買取を義務付けられる。
自社で発電している電力の原価に比べて高い料金で買い取らなければならない。
しかし、電気料金を上げることによって対処するから、電力会社は損をしない。
負担を強いられるのは一般の国民である。貧しい人は益々貧しくなる。
中小企業は赤字になるか又は倒産に追い込まれる。
大企業も電気料金の安い韓国企業と競争できなくなる。
孫正義は太陽光パネルを韓国企業から買うから、日本企業には恩恵がない。
孫正義が社長を務めるソフトバンクは、電力を食う多数のサーバーのあるデーターセンターを電気料金の安い韓国に既に移している。
自治体はメガソーラーに貴重な税金を1円たりとも使ってはならない。高い電気料金と税金という二重の負担を市民にかけてはならない。
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Unknown (竹村英明)
2011-07-22 13:11:54
李メドベージェフさん
早速ありがとうございます。
私たちも、この法律で電力会社が買取る価格を消費者に押し付けるべきではないと思いますよ。
そもそも、その分設備投資費用がいらなくなるので、電力会社はすでに得をしているのです。
そして一方で、原子力発電のコストは、すでに皆さん勝手にとられていますよ。サーチャージなどと示さないで。
少なくとも電源開発促進税は大半が原子力の地元対策費などに投じられていますが、さらに電気料金の内側コストにどんだけ入っているのか、電力会社は明かしていません。
少なくとも今回のサーチャージより多いのは明らか。しかも、今度の事故で、東電救済スキームでは、損害賠償費用をすべて電気料金に転嫁して、皆様に払っていただこうとしています。
ここまで馬鹿にされても、日本に暮らす人々は黙っているんですかね。
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