(質問)
「50代の会社員男性です。先生の書かれたドラマの大ファンです。相談するのは20代の頃つきあっていた女性の事です。
これまで3回結婚と離婚を繰り返し、現在は独身です。この年になって振り返ると彼女以上に愛した女性はいないと思うようになりました。その思いを彼女に伝えたいと思いますが止めた方がいいでしょうか。彼女とはその後会っていません。私と別れた後に弁護士と結婚をして子供もでき、とても幸せに暮らしているそうです。」
(回答) 奥園ミカ(脚本家)
「私のドラマの大ファンでいらっしゃるとはとても嬉しいです。どうもありがとうございます。さて、私のドラマがお好きという事は答えをある程度わかっていらっしゃいますね。私が不倫を否定する事はありませんから。そしてこれは相談ですかねえ。むしろ決意表明と言った方が当たっているようにも思えますけど。あなたは私の答えを知るよりも先にもう彼女に伝える気でいます。迷っていたり、止めて欲しいなら「不倫ドラマの女王」といわれる私にそもそも相談するでしょうか。
そうはいってもここで回答を止めてはあなたも納得されないでしょうから、もう少し続けます。3回も結婚と離婚をなさっているという事であなたがマメで積極的に人生を歩まれる方だというのがわかります。さらには人生相談に手紙まで書かれる、エネルギッシュな活動家といってもいいでしょう。常に何かを求め、結果を得るため行動なさる。そのあなたが今、過去を振り返るのはなぜでしょう?3回目の離婚をいつされたのかはわかりませんが、どうもその後の精神的時間的かつ物理的な空白があなたを過去への想いに向かわせているような気がします。過去は美しく見えるものですからね。
私は不倫ドラマを書き、シングルマザーの道を選んだ以上、前述の通り不倫を否定しません。やるなら思い切りおやりなさい、という立場です。ですからあなたが彼女に伝えたいといわれるならどうぞ彼女にお伝えなさい。すべてを捨てる覚悟でおやりなさい。
問題はそこから先です。あなたはその先、何をどうしたいのですか? 彼女と不倫のおつきあいをしたいのですか?夫から奪って彼女と結婚したいのですか? その場合、彼女の子供を引き取るつもりですか? 彼女の御夫君が弁護士なら当然慰謝料も請求されるでしょうが覚悟はありますか? いやいやつきあうつもりまではない、というのならそれも結構です。ただ想いを伝えるのもとてもロマンチックなものです。でもリスクもあります。あなたは彼女の夫よりも外見的、経済的、精神的、知的に魅力がありますか? あなたの告白にきっと彼女は「嬉しいわ。ありがとう。」と御礼を言うでしょう。しかし内心では御夫君とあなたを比較して「今の夫を選んで良かった。」と密やかな満足感に浸るかもしれません。いやその程度ならまだマシです。つきあっていた20代の頃のあなたと比較して外見的な変容や、(当時の彼女が思い描いていた)「あなたの未来」と現在のあなたが違っていた事に失望するかもしれません。あなたは彼女の夫だけでなく、20代の頃のあなたとも戦わねばならないのです。
わかりますか?最悪の場合、現在のあなたが登場することで彼女の心に数十年間宿っていたであろう「美しく輝いていた二人の恋愛」の思い出が壊れる事になるかもしれないのです。
私が「すべてを捨てる覚悟で」と前述したのはそういう意味です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます