ぎょうてんの仰天日記

日々起きる仰天するような、ほっとするような出来事のあれこれ。

白髪2

2019-12-02 00:23:32 | 発見

 

早いものであっという間にブログ開設から1年になる。1周年に何か書こうと目論んでいたのにこのところの忙しさに紛れてその日は過ぎてしまった。1年間で最も反響があったのが「白髪」だったので改めてこのテーマへの関心の高さを知った。それならば、と続編を書くことにする。

 

前作の「白髪」では白髪への対応の仕方や白髪になった後のあれこれについて書いた。白髪になると人は何かをせずにはいられなくなるのだ。隠す(染める)、一部を強調する(メッシュを入れる)、すべてを白くする等々。それに加えて「頭を丸める」、つまりスキンヘッドという選択肢もある。通常頭を丸めるのは俗世から離れる、俗事を断つ、反省を指す。ところが(お洒落とは別の意味で)そうではない人もいるらしいということがわかった。

 

あれはもう15年以上前だろうか。テレビを観ていた母が急に、そしてしみじみと「この人って『女ったらし』って感じよねぇー」と言う。顔を上げると画面にはトーク番組に出演中の火野正平さんがいた。(髪はまだある頃の話だ。) 「本人にその気がなくてもこういう人は女の方が放っておかないのよ。」「本人に必ずしも罪はないの。」「奥さん大変ねー。」「その奥さんも3度目だったりするのよぉ。」「それもかなり年の離れた奥さんとかね。20とかね。」「2番目の奥さんと別れた理由が3番目の奥さんだったりして。」画面の前の女達からはマシンガンの如く感想が飛び出て来たものである。ちょっとした盛り上がりを見せた。誰も火野さんを褒めたつもりはないのだが、その場に火野正平さんがいたら「どうもありがとうございます」と御礼を言われるに違いない。ちなみに火野さんが実際に何度結婚されたか、いやそれ以前に結婚自体されているのかを我が家では誰も知らない。また失礼ながらファンでもない。知らないしファンでもないけれどこのテーマでそれなりに盛り上がれる、それが火野正平である。

 

後年火野さんはスキンヘッドにしたが、テレビを観る限り「俗世から離れてはない」感じが濃厚に伝わってくるのである。そういえば安部夜郎の『深夜食堂』で女ったらしやパチプロ(女性にモテる)が出てくるがどう見ても火野正平さんだ。やはり世間的にもそういう評価なのだろう。

 

それにしても白髪とのつきあい方は様々だ。白髪の方が威厳を感じさせて良い場合もあるし。知り合いの会計士はセミナー講師として売り出し中の頃、若さがかえってハンデになると考え年齢を公表していなかった。年配の人も相手にしなくてはいけなかったので髪は黒々としていたが30代という年齢以上に重みを持たせるべく頑張っていたようだ。

 

白髪にして風格を出したほうがプラスに働く、その最たる職業が医者ではないか。「経験豊か」「気持ちをわかってくれそう」と諸々高評価に働くことが多い。ところが最近逆のケースに遭遇した。健康診断を受診した時のことである。衝立で区切られた内科健診室の前で入ってもいいか尋ねたところ返事がない。近くにいたスタッフが大声で中に声を掛けるとガタっと大きな物音がして「どうぞ」との声。中に入るとヨボヨボの小柄なおじいさんがいる。靴は脱いであった。居眠りをしていた気配が濃厚だ。聴診器を当てるのだが、そもそも心音が聴こえるのかも大いに疑問である。健診票を受け取るとろくに見もせず、震える手で押印する。見た目の年齢からしても薄暗い部屋の中で健診票のあの細かい書き込みは見えないはずだと心配になる。髪は「びっしり黒々根元から」スタイルで染めてある。

 

私は人に恐怖を与える染めた髪というのを初めて見た。そしてもう一度別の病院で内科健診を受けようと決意した。まったくこちらの方が白髪になりそうだ。

 

(画像:Photo by Siarhei Plashchynski on Unsplash)