全国交通ニュースブログ

世界的スキーリゾートのアクセス「倶知安余市道路」の工事状況について

北海道が世界に誇るスキーリゾート「ニセコ」(行政区画でいうと倶知安町がメイン)の近辺には、2023年時点では高規格な交通手段が存在しません。

北海道新幹線札幌延伸の暁には倶知安町の中心部に新幹線の駅ができアクセスが一気に改善するはずですが、2034年の札幌冬季五輪誘致が白紙となり、「五輪に間に合わせる」という大義名分がなくなったので、2031年春頃とされていた開通時期が後ろ倒しになる可能性が濃厚です。

一方、高規格道路のほうは以前から国道5号に並行する北海道横断自動車道(黒松内~倶知安~余市~小樽)の構想があり、まず2018年に余市~小樽間がNEXCO管理の高速自動車道として開通し、2023年段階では倶知安~余市間の「倶知安余市道路」が事業中です。

https://www.hkd.mlit.go.jp/ot/douro_keikaku/a8pgkh0000007aql-att/a8pgkh0000007c0e.pdf

これが全区間開通すれば、札幌や新千歳空港からニセコへのアクセスが大幅に改善(特に冬期間)するのですが・・・

 

倶知安余市道路について、2022年度末に北海道開発局が作成した再評価用の資料が公開されています。

https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/chousei/slo5pa000000vhxm-att/slo5pa000000vi6v.pdf

共和~余市間は2014年度に、倶知安~共和間は2016年度にそれぞれ事業化され、両区間とも2年後に工事着手されました。

2022年度時点の進捗率は、共和~余市間が用地買収ベースで89%・事業費ベースで38%となっており、倶知安~共和間はそれぞれ23%と13%となっています。

この資料が作成された時点では「2024年度に仁木IC(仮称)~余市IC間部分開通予定」となっており、以南の開通予定は未定です。

最大の難関となるのが、仁木南IC~共和IC間の長さ約4kmの新稲穂トンネルです。これが完成すれば現在の国道5号稲穂峠の難所を回避でき安全性が特に向上しますが、上記再評価用資料によれば、新稲穂トンネルがらみだけで前回2018年度の再評価時より事業費が約130億円も増大しているとのこと。

 トンネル掘削パターンの見直しで約36.8億円増

 トンネル掘削補助工法の追加で約64億円増

 濁水処理施設の見直しで約19.5億円増

 トンネル施工に係わる基準類の見直しで 約14.6億円増(仁木トンネル分も含めて)

ちなみに倶知安余市道路は完成2車線ですが、この新稲穂トンネルは上下別線となり、1車線のトンネルが2本並列するという珍しいパターンとなります。上記資料内にL・Rとあるのは、それぞれ左側(Left)と右側(Right)を意味します。

道路構造物ジャーナルのサイトに2022年6月に掲載された北海道開発局小樽開発建設部部長のインタビュー記事によれば、

https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/interviews/28676/?spage=2

「計画段階では、分離2車線の大断面トンネル1本で検討を始めましたが、延長と交通量から防災等級AAとなり、避難用トンネルを併設する必要がありました。100㎡を超える大断面の掘削に加え、避難用トンネルも掘削するとなると、工期も長く、コストも高くなります。そこで、上下線を分離した片側1車線の中断面(43.4㎡)トンネルを2本計画することで、コスト縮減と大幅な工期短縮を図りました。」(カギカッコ内引用)とのこと。日本の完成済みまたは現在進行形の高規格道路で、このような例は他にあるのでしょうか?

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「幹線道路(北海道)」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事