深海の青い月

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“魔人ドラキュラ”とベラ・ルゴシ

2007年08月15日 01時30分27秒 | 映画・DVD
魔人ドラキュラ
ちょうど明日はベラ・ルゴシの命日にあたる。だからというわけではないけれど、今更になって“魔人ドラキュラ”を見た。


ゴシックもののホラーは一応カリガリ博士もノスフェラトゥもおさえてきたし、ロン・チェイニーの「オペラの怪人」も見た。カーロフのフランケンシュタインも1作目と2作目は見ていた。


それがどうしてルゴシのドラキュラに限って見ていなかったかと言うと、関連書籍で“展開が冗長”だの“舞台をそのまま映しただけという印象で演出は皆無”といった後ろ向きな評論ばかり目していたから。


そして最近廉価盤が980円になったからやっと見たわけだけど、前々から後ろ向きな評価ばかり耳にしていたから、正直そこまで酷くないじゃないかというのが正直な感想。トリビア満載の音声解説や約30分のメイキングも予想外に良い内容だったのもその要因だと思う。


それでも劇中ルゴシの出番はあまり多くない。だから頭の中で「古城のセットすげーなぁ。さすがこの頃のユニバーサルは違うな」とか補正をかけないといけなかったのはナイショ。正直この映画の魅力を解析すると・・・

ルゴシ・・・80%
セット・・・20%

ていう構成なんじゃないかと。でも本当にルゴシの存在感は圧倒的という他ない。


現に大多数の人が思い浮かべるドラキュラのイメージはルゴシのスタイルだし、今までは「クリストファー・リー>ルゴシ」という図式が自分の中にはあったけれど、魔人~を見た後では「ルゴシ>リー」の方がしっくりきてしまう(例えルゴシが付け歯をしていなかったとしても)。


と見事にルゴシ派に転んだ所で同時にやりきれない想いになってしまうのはゴシックホラー映画ファンの常。そのわけはその後のルゴシの運命があまりに悲しいから。


ベラ・ルゴシ
その圧倒的演技で無名の移民俳優から大スターに上り詰めたものの、それはほんの一時の栄華だった。魔人~の後に出演予定だった“フランケンシュタイン”の怪物役を蹴った所からルゴシの運命は大きく狂う。


その後怪物役を演じたのは当時無名俳優だったボリス・カーロフ。彼を怪物役にすえた“フランケンシュタイン”は魔人~をしのぐ大ヒット。カーロフはその続編ニ本に怪物役で出演することになり、ユニバーサルで制作されるホラー系の作品(例「ミイラ再生」)に主演として迎えられることになる。


それに対してルゴシはハンガリー訛という点がネックとなりメジャー系スタジオからは声がかからず、B級作品での悪役中心になってしまう。


ちなみにルゴシがフランケンシュタインの怪物役を蹴った理由は諸説あって、

①顔がメイクで隠れてしまう上にセリフがない怪物役を嫌った
②メイクが似合わなかった

というのが主に挙げられている。個人的には①の理由だと思う。ただ②も現実にありそうで怖い。ルゴシはその後“フランケンシュタインと狼男”という作品に怪物役で出る事になるけれど、正直似合ってない。やはりあの怪物のメイクはルゴシみたいな丸顔には似合わない。スクリーンテストを見た重役が大爆笑したという話も真実に思えてしまう。


なおルゴシの不遇を語るエピソードとしてよく挙げられるのが、ルゴシとカーロフが共演した作品では、常にカーロフの名前が先にクレジットされたという話。しかしそれよりも私個人がやりきれない気持ちになってしまうのは、”フランケンシュタイン”の翌年の作品“獣人島”で、ルゴシがあれだけ嫌がった顔面メイクをして獣人の役を演じているということ。


確かに人生においては一生を左右する決断の時というのは幾つも存在する。しかしこのルゴシの一瞬の栄華とそれからの転落というのはあまりに残酷でやりきれない想いでいっぱいになる。


これだけドラキュラのイメージが強いルゴシだけど、意外にも正式にドラキュラ伯爵をスクリーンで演じたのは合計しても二回しかない。ちなみにドラキュラを思わせる吸血鬼アーマンド・テスラに扮した“吸血鬼蘇る”という作品は、どういう風の吹き回しかコロンビア・プレミアム・セレクションとして最近DVD化された。個人的には同シリーズで発売されたハマープロの“フランケンシュタインの復讐”と並んで同シリーズで激しく浮いている感がある。


閑話休題。ルゴシが二度目にドラキュラを演じたのはコメディアンと共演した“凸凹フランケンシュタインの巻”何とも投げやりなタイトルだけど当時はなかなかヒットしたのだとか。けれどこの作品はホラーのファンには非常に評判が悪い。そりゃそうだ。誇り高き闇のヒーローをヌルいお笑いの道具にしたのだから。


それでもユニバーサルさんお願いします。国内DVD化してください。そりゃ見終わったら「ふざけんな!」って逆ギレする可能性もないわけじゃないけど、やはりファンとしては本物のドラキュラ役を演じている所を見たいという気持ちには勝てないわけで、いくら最後にケープをまとった映像だと言っても“プラン9・フロム・アウター・スペース”なんかでは満足できないわけで


ルゴシは晩年薬物中毒に悩み、史上最低の映画監督と名高いエド・ウッドの作品に出演し、病死して埋葬される際にはドラキュラのケープをまとって埋葬された。星の数ほど存在する俳優の中で、当たり役を得る事ができる人はほんの一握り。そんな大役を掴んだものの、その輝かしいキャリアが同時に重い足かせとなってしまったけれど、ルゴシ自身はドラキュラを誇りに死を迎える事ができたのかと思うと、ほっとしたような悲しいような複雑な心境になってしまう。


R.I.P


参考書籍
図説ホラー・シネマ 石田一著 河出書房新社
吸血鬼映画B級映画大全 ジョン・L・フリン著 フィルムアート社


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2 コメント

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はじめまして! (井上もやし)
2007-10-08 01:47:24
goobgoo819さん、はじめまして。

相互トラックバックありがとうございます。私はユニバーサル980円ホラーシリーズは「魔人ドラキュラ」「フランケンシュタイン」「大アマゾンの半魚人」の3本を買いました。「期間限定」っていう宣伝文句に踊らされて、衝動的に「ミイラ」や「狼男」も注文してしまうかもしれません。

個人的には日本の映画会社にも頑張ってもらって、「電送人間」「日本誕生」「マタンゴ」などを廉価版で出してほしいです。

今後ともどうぞよろしくお願いします。



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>井上もやしさん (PYU~作)
2007-10-09 16:51:36
はじめまして。トラックバック&コメントありがとうございます。


私はユニバーサル980円シリーズは「魔人ドラキュラ」、「フランケンシュタイン」、「フランケンシュタインの娘」、「狼男」の四本を買ってしまいました。「半魚人」も買ってしまいそうで戦々恐々といった感じです(汗


>個人的には日本の映画会社にも頑張ってもらって~
国内SF作品の高額さには私も辟易してしまいます。安価で良質のものを提供してもらえたら、作品の良さも伝わるんじゃないかと素人なりに思ってしまいますが、会社側にもオトナの事情があるだろうなと思うと複雑な気持ちです。ちなみに私は大映の「虹男」が廉価版になったら即購入の意気です。


今後ともよろしくお願いします。
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