前回「パイプカット」からの続きです。
だいたい剃毛から恥ずかしかった。
時の看護師さんも若くてカワイイ子です。剃られるのをジッと見ていたら、
「見ないで下さい」怒られちった。
真冬でもアンナ二小さくなった自分、見たことない。ま、大きくなってしまうより良かったと割り切りましょう。
しかしビニールの手袋までしなくったって良いじゃない。ねぇ。病院に行く前にはチャンと風呂入って念入りに洗ってきたのに。淋しかったぁ。触り方も摘まんでたしぃ。
今は男の看護師さんがやったりするんでしょうか、もしも、そんな場面を与えられたら、オレ、ゼッテェ、ケエル。冗談じゃない、ってぇんだ。
手術室で気が付いたときには、あの女医さん、消えてた。
終わったあとでストレッチャー? に移るんだけど、この時に来た看護師さんたち何人いたと思いますか。若い子ばかり八人は居た。
どうやって移そうかって話し合ってるから、
「移れば良いの?」って答えてから、
「(ストレッチャーを)押さえててね」
一人でサッサと移動しました。だって麻酔なんて効いてなかったもん。そんなのより前合わせの手術着? が開いて何色だったか塗りたてられたアソコが顔を出さないように願っていました。
運ばれる時も自分で点滴の袋を上に持ち上げていた。八人もがゾロゾロと廊下を行列で押してくれているのに、です。
途中で年配の看護師さんに怒られた彼女たちは一人になってしまいます。
着いた部屋では腕が痛くなってきました。
点滴の針が入っているところが、まるでスズメバチに刺された時みたいに腫れ上がってズキズキ痛むんです。
するとさっきの年配の看護師さんが見えられて直してくれました。
呼び鈴を何故押さなかったのか聞かれたんで、
「我慢しないといけないんだろう、と思ってました」
答えた私に無言で立ち去られた。あの子たち、怒られただろうなぁ。
数日後に行ったときも別人ですが若い看護師さんが赤チンだか青チンだか忘れましたが塗ってくれました。
尻込みしている準も新米さんは、
「仕事だろ」と先生に怒られる。
この時は流石に、見るのは止めました。
「頑張って」
心の中で応援していた。
叫び聞け時を駆け抜く春雷ぞ
手術台に大の字で両手両足を固定されていた。
手首のベルトから先で軽く握り締める拳に看護師さんの白衣が当たる。それも、そこいらへんに、お尻に。
引っ込めようとしてもベルトが邪魔だし、足掻いた挙句で〝痛い〟とか〝怖がっている〟とか誤解されるのはイヤなので仕方なく白衣の感触を楽しむでなく勘違いしないように願っていた。
顔を上げると、大きく広げられた両足の向こう、真正面の壁に張り付いて自分のアソコを凝視する女性が立っている。若い。加えて限りなくキレイな女医さんだった。
・・・恥ずかしい。何も聞いてないよ。
チクチクしている。針も、通される糸も感じながら、顔を上げっぱなしでずっと見ていた。
先生は「後で頭を痛くなるから上げないほうが良い」と注意されるが、その女医さんの視線は気になるし、自分のが如何なっていくのかも気掛かりだし、ずっと顔は上げっぱなしで眺めていた。
過ぎし我れ何時まで立つか枯れ尾花空しき限り四季に活けらむ
「分身で漫才された剃毛から白い巨頭から点滴」 へと続く
純粋な、真っ白な女性でした。それでいて、大きかった。
今日がホントの月命日。迎え火な太陽は「八月のクリスマス」として記憶喪失者に刻まれる。記憶する最期の姿は、退室する見返り美人だった。
たかがカネ、されどカネなのか、ために私は「見舞いを止められていた」
そう、わたしは見舞いにさえ一度も密室の大学病院を訪れてはいない。
なぜ、そこまで、義兄なのに、医者なのに・・・
さくらんぼ稚児握り締む桃石榴雲は俯くみな熱き縁
ドアがノックされるたびに・
毎日毎日、待ち焦がれていた。
「産まれてこなければ良かった」
「そんなに嫌われてしまったの」
こんな、してやったりの師範に性暴力の週末は、私を尻目に否応なしに訪れていた。
病室の天のみの空を見つめ「椿灰に愛と清貧の戒律」で逝く。
マリア観音はかなものなり閻魔堂なる飛天ひん抱き幸と見見えん
「知らなかった」
「ごめんね」
済まされる歳月の彼方、ではない。
・・・また陽は昇る。。