事実は映画よりも奇なり

乳がんで余命2週の告知もキリスト教の27歳の裏千家師範は延命薬で百八夜を内鍵付きの病室にて戦うも・・・

ご近所の夜を切り裂く声、2回

2009年08月31日 10時22分23秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 四夜 」 から

威風堂々とオーラを醸す院長の邸宅でした。
ゆとりを個性で泳がせて富む交差した間取りから表座敷の鴨居を利き腕にて醸成しつつ歩むと温柔な台所であって、突き当たりが洗面所、絶体絶命を与えられた右手の引き戸は浴室を受けて立ちはだかっている。
この、左側を占めるは当人以外ナニモノも繰り込めない男性専用にゆたりした朝顔で小用を済ませた私が、お向かいさんの脱衣所からバスタオルで洗い髪を巻き上げしなの彼女と、洗面所に対称で設計された二枚の戸をコンマ1秒の狂いなく開けてしまって鉢合わせ、蜃気楼ばりな初夜の鮮烈さを流れ星の瞬きそっくりに端折って体験させてしまう
       
「キィヤァーッ」

つんざく稲妻。お隣さんとは裏庭にて少し離れてはしまうが聞こえたのには違いないし、夜更けなんですが、・・・・・。
火花で受け止めた色情狂は、上げきっては居た。せめてもの救いです。が、清めてはいなかった。その手前である。
姉が真っ先に奥の間の勤めより小股走りに慌てふためかれた痛みで薄氷を踏まされる脈拍は、あたふたと恥ずべき気持ちの顔色を猫背の洗いではぐらかせる。
ハンカチを使いながら、
すみません。すみません。すみません・

鈍く重い足取りで応接室に立ち戻る形で、止せば良いのに、台所でびしばしと黒ばむ姪っ子さんの射る目と戦い、そう在るべき通りに敗退している。
〝みだらで野蛮な行為なんてしてません〟〝何もしてないし、濡れ衣〟
重さ刻む革のソファに愚図を据え置けば、立つ瀬無き身に院長が〝どうしたのか〟と尋ねてこられる。

彼女の前には紫檀の衝立が立ちはだかっていた。見えたのは真っ白いバスタオルを黒髪に巻き上げる両の手と、顔だけ。その顔変りも叫びに打ち消され、夜の帳につつまれた。

やがて、くたくたに継ぎはぎしていた私たちの空間へと射し入るは姉、
「大声を出して、・・・。来られてあるのを知らなかったようです。妹が謝らないといけませんが、お風呂上りなので許してください。わたしが代わりに謝りますから・・・・・」
院長の問いに姉は、
「パジャマは着ていたようです」
しきりに頭を下げてありましたが、取り返しがつかないのは笑えない曲者の私だった。
彼女や娘さんのところに戻られての台所から、恋結びの心を運べと華やぐ福笑いそのものの見えざる幸せが聞こえてくる。目に見えるような団欒の一齣だった。冷やかされている。引く手数多に列なる幸せな

「うるさいっ静かにしろっ

不意を食わせる雷が四人の疎通を硬直させた。



いつも一緒に居たい?!

2009年08月30日 08時12分44秒 | 朝顔 「椿灰」 

【十一夜 家族】 へ

夢中になっていたら何時の間にか二人っきりで世界は回っている

とりとめのない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・陽炎に躍動させる良い空気だったのに、夫妻で割り込んでこられた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・
「予定がない日には二人で遊び、戯れて、身近に過ごすのが好いですね
どんな会話から加工した言葉なのか忘れましたが、こう私は言ってしまった。
相手は〝妻と〟だったのですが主語が抜けている。
当然、目の前の三人は〝彼女とは〟として受け止められた。
「良いわねぇ
語尾上がりの食い入るような発音も力強くに夫を凝視された後、妹と互いに見交わす顔と顔から、
「良いわねぇ
語尾下がりを羨み顔の逆さ言葉にして繰り返される。暗にせがんでおられる姉の横で、
「はい
色美しい円らかな目許で答え、照れ臭そうに休みの間をとり、言ったっきりで首を垂れる愛すべきな袋小路に追い詰められた彼女から、はち切れんばかりの初々しさが我慢できずに裂けて開いた。
ああ、爆ぜた情景には私まで小っ恥ずかしくなってしまう

恥じらいを目深にかぶる弾き語りの端正な風姿で黒髪しか見せない襟首から感極まる赤裸々な性フェロモンが、この脳神経やら全身に有する一から十の毛穴を襲い、目の前になみなみとある子供の心に煽てられた悦楽の大気圧は、にやける精神の毛細血管までも捩り夫妻を無視して彼女と糸電話する。

三人だったり五人になってたり目まぐるしさも思い葉にて夜も深けたころには、ふくよかに対話劇な暖かさが溜まっており、手抜かりのない過激な熱の運動に乗り合わせている。
彼女は酒もタバコも認めてくれた。女遊びさえ許してくれそうでしたが、これにはもう飽きてた。だからの最後とできる彼女だと考え初めていた。


鈍感な私

2009年08月29日 13時05分20秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 四夜 」 から

彼女に名を聞いた。
「〇〇です
です。にて行き違う踏み込めない連れなさに即座に、
「下の名前」と尋ねたら、
「〇〇子です
間合いなんて計らず、即座に心から掻き続けてくれる

なぜ彼女が〇〇〇家の姓を名乗ったのか、この時点では無理がありますが、後々に悩み苦しむときに何故思い出さなかったのか、悔やまれてならない。
嫁入りされた姉が連れ子の彼女なら〇〇姓ではないはずだ

すっぴん美人。愛くるしい温もりで包むのが似合う子だった。
夢心地に体調に薬味を添えなくても煙幕に魔術に化粧やけとは無縁の子だった。
むかし、化粧は気装と書いていたらしい。すでに気装美人だった

姉妹どころか、彼女には姪となる奥様の娘さんとの四人が、その場に居る。
「化粧は好きじゃないんです」はっきり、私は言えた。
「わたしはしています」胸を衝かれた姉。
「わたしも」とは姪っ子さん。
面食らう姉は我が子と顔を見合わせる。彼女は吹き出していた。
妍を競う三人だからこそ言えた事。

「夜に化粧を落としたときにがっかりしたんでは」とまで私は言った。
笑いさざめき、
「はっきり言われる」と姉。
屈託なく笑える三人の座りは軽妙洒脱な愛嬌を振りまく。

こんなこと幾らでも私は言える
だが彼女自身については何も聞けなかった重かった次元が違った

「料理も上手なんですよ」何時ものように姉は妹を持ち上げる。
健気は〝言わないで〟それらしき声の様子です。
姉は仲間の〝ノリ〟を割り当てるだけで直ぐに他人の〝キレ〟の綿密さを掻き寄せられ、
「みんな妹が作るんです。どうしても外食が多くなってしまうのですが」
落ち重なりそうな気配を立てるべく乙女心を導き育てられる姉には、聖母マリアさまが幼子のキリストを胸に抱かれる描写の慈愛で満ちていた。

のんびり夢中になっていたら何時の間にか二人だけにされている。



ふたりぽっち

2009年08月28日 14時32分19秒 | 朝顔 「椿灰」 

 【十一夜 家族】 へ

気分を害されたって私の何処が悪いって言うの


あの夜に初めて彼女が別宅の生まれだと知ったが、だから何だって言うの。本宅も別宅も関係ないでしょ。彼女は彼女

日を改めての応接間、左隣りの姉に援護された箱入り娘の肌合いがある。眼差しを紡いでの熱気に発酵しそうな私は喘いでいた。
ようやく縦横で明瞭に切れ味の大きな大きな応接台に二人からの気圧を適度に下げてもらい、そして正々堂々と腰掛けていた。

「ふたりだけで話をしたら・・・・・
妹を諭しておられた姉は、恥ずかしそうな声音に弱弱しい慎ましさも、もじもじした形振りも不自然な意外と思う顔つきに、
「ふたりだけで話をしなさいっ
呆れて、さっさと立ち去ろうとされるところを開けっ放しな「えっ」にて、
「おねえさんっ
肝を潰した千尋の谷から横を見上げる一方でスカートは手に入れ、びっくり箱のバネ仕掛けかのように甘えっ垂れて縋り付き、離さないとしたが、誰が見ても一目瞭然の、その心積もりとは裏腹の恋の衣には手の内を見透かされて打ちやられた。
部屋を出て行かれる。

箱入り娘からも、諦めざるを得ない状況にあやかれた表情から食み出す花房の形式美は、虎の子でこなせた鼓動で引き締めた。
それは丸で母親に懐きたい盛りみたいな、上り鮎みたいな幼さでしたが張本人はそれで満足したみたいで、突如として・・・・・・煌めきやがった。
ぎこちなさなんて極め付きのこなしで仕切りなおし、スカッ、茶碗酒を控えるように説かれていても薫りの降り注ぐ桜の木の下で互いに自由な聞き上手にと、こんもり育てた満開の大気から、すっくと曜変させた。

のめったくせにの私ごときが覚束ないキーボードで埋め立ててしまう沙汰には道の方々は呆れ返られるとは下せますが、品格の欠片も持ち合わさない案山子にしてみれば、夢のまた夢の女性。
それはそれはふんだんに振舞う顔立ちであり、陽だまりな会話が生唾へと寄木細工するには妻子持ちの自覚が待ったをかけてしまったんです

今日はこれからの投稿の内容を考えての根回しでもありました。誰もが信じられない事実をこれでもかこれでもかと投稿しなければなりません。


明日のタイトルは「鈍感な私」



出生の秘密

2009年08月27日 16時22分14秒 | 朝顔 「椿灰」 

 【三夜 ☆】 から 
 【十一夜 家族】 へ

「あなたを妹が好きになってしまったらしい」

深まる秋の夜長、姉に打ち明けられても表現の狙いどころが、いきなり何を言い出されるのか全く理解できなかった。
姉が付け加えられる感覚に麻痺して、空に舞い上がって翔る矢羽根のごとくに夜に飛び立つベッドほどに身が軽くなった途端、現実に引き戻されました。うれしくなったのは束の間でしかなかった。
立場に落ちてった。

わたしは妻子の写真を肌身離さず持ち歩いていた。この財布には同じように何時も100は入れている。仕事で急に必要になったりしていたのです。
「貸してください」との姉。
写真を出す時に100も見えてしまった。極まり悪かった。
1枚を預かる姉は別室で待つ妹の下に戻られ、
「忘れなさい」と忠告されるが、
「ますます好きになりました」と社会的な立場にある身として下したらしい。
力なく戻られる姉は、
「逆効果でした。こんなにあの子が強いとは思いませんでした」
たじたじの体で院長と私に報告される姉は少し涙ぐんでおられる。

「別宅で良い」と答える妹に、
「夜には妻子の元に帰さなければいけないのよ」戒めても、
「それでも構いません」

わたしたちに伝えられる姉が高ぶる感情のあまりに思わず口を滑らせるは
「自分が別宅の子だから」

この失言に、ハッとして私を覗き込まれた。
すぐに気を取り直される姉はテーブルに戻されたままの写真の妻に、
「きれいな方ですね」
「やはり綺麗な人と結婚するんだな」
「そんなことありません」

彼女の姉と義兄との三人での会話の中から一人抜きん出たのは、
妹では駄目だな。ブスだったら結婚しなかっただろ」

びっくり箱にこそ驚く私だったのに、
「そら見ろ」

暴言が突き刺さる。

慎ましさに身を置く生活に固さの肌が、まだ男を知らないと分かる硬さが妹だったのに。
姉は写真を「しまってください」 気分を害されたみたいでした。

明日のタイトルは「ふたりぽっち」


サクランボの哀しい詩

2009年08月26日 12時54分15秒 | 朝顔 「椿灰」 

【十一夜 家族】 へ

瑞々しいから打ち解ければ蒸し暑くもなる大気へと、まんまと私は飛び込んでしまったわけだ

やっと合点が行くも、彼女には言い開きできない、と新たな悩みも生まれる。迷惑をかけた院長にも申し訳なかった。
だけれども彼女自身は羞恥心に束縛されて堪らないようにはしていたが、迷惑とは見えず、顔に紅葉を散らして嬉しそうな明るい表情からは畏まった趣が消え失せるばかりか、ごく普通のかわいい女の子で光り渡っていた
遅桜ゆえの香で着こなすは、自然体な魚心あれば水心に覚えていったのでしょうか。

定まらない視点は思い出の宙に浮かび上がり・・・・・・・・・・今も、ここやあそこと書きやりながら報道特番を思い出し笑いしてしまう私です
うすっ気味悪い私を空の煙も紫煙も
あなたも笑ってください。笑いは明日を創ります。

だんだん、書くのが辛い場面に差し掛かる。今日の分を過ぎれば又楽しくもなれるから、時間はかかるけど毎日で頑張ります。
・・・・・(それにしても絵文字って気が紛れて良いね。助かっちゃいます)
意表に出るは露草の花で染めた服か・・・・・・・・・・
時が経つにつれて特番は楽しくなっていったが、お客様の御家族である。手を出すなんて考えられない。そんな自分は頭ん中にダニの脳みそほども存在しなかった・・・・・・・・・・
これからも清らかさで年を重ねられる白地の肌は、カチッとした色染めで植えつけられると分かる・・・・・・・・・・
悶々とさせる情けの種。これは何回か後の投稿ではっきり書きますが、わたしの子、愛人として私の子を宿してくれたのなら・・・・・・・・・・
別宅に置けて好き好きに付き合えるのなら怠慢のそしりを受けることなく頑張る絶品の素肌ですが、清く淑やかに晴れた空に立つ姿で慰めるには、穏やかさは遠見で心美しき御家族。わたしにしても出入り業者で妻子持ちなんです。妻も子も愛し、家庭が大切でした。

これが、彼女とは2年しかないのに私を独占してしまう綾取りの始まりです。
今日は今後の内容を考えて「予習」の意味でも入れました。下書きの原稿に入ってたんです。
思い恋うたび、目尻にシワを刻みやがる。忘れられなくったって良いじゃないか。

急転直下したのは伏線も敷かれない上に、いきなり麗々しくも決着を付けるべく立ち上がられた奥様の打ち明け話、
「あなたを妹が好きになってしまったらしい」

明日のタイトルは「出生の秘密」


チェックアウトの時間帯

2009年08月25日 13時42分05秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 一夜 」 から

季節はずれのお祭り騒ぎから奥様に避難を促されて突破した離れ離れの静けさにて、やっと成り行きの理由を聞かされた

「降りるところを見られている。『交際してある』と、『朝帰り』と思われている。あの日は仕事にならなかった」
と院長は苦々しく解き明かしてくれました。

1~2週間を遡ってみましょう。

その朝、院長宅に買い上げられた商品を届けたのですが、診療時間の都合で院長も奥様も立ち会えないんで、彼女一人が自宅に残っててくれたんです。10時を少し回るくらいの時間でした。
私はといえば、この日は天気も良かったので彼女んちに届けたら少し遠くまで飛ばすつもりで、何時もは遊びでしか使わない派手な車を使ってしまった。
なのに彼女はそんなこととは露知らず、
「医院まで送ってください」って言うんだ。
断れない。
「可愛い車ですね」って彼女は誉めてくれる。
つかの間もドライブ気分は勝手に恋人たちでした。樹脂の屋根も取り外していたから尚更気持ち良い。
医院前の大通りは渋滞しており、慌ただしかった。助手席側に商用車やらが忙しく入り乱れて走り過ぎるんで、
「ちょっと待って」
歩道から車道から蟹文字めかして回り込み、車を脅しつつの途切れ途切れの間隔を突いて開け放すドアにて、歩道へとしなやかに呼び水した。
この二人にスポーツカーも二人乗りの着眼点だ。月曜。仕事で乱れる気ぜわしさにあっても際立ってたんでしょう。
たまたま用事で外出着を羽織った職員に、わざわざ医院の近くは見つかるからと離れたところで降り立った、この風景を、見てくれと言わんばかりで注目される羽目に陥ってしまったんです。
ぽかぽかした日差しに身支度の僕らは映画していた。

離れたところというのも、隠れるようにしてと受け止められる。
必見のシーンで見つけた職員にしてみれば、同世代しか勤務していない仲間たちへと跳んで帰って、これ以上盛り上がる話題はないと断言できる。
「彼氏はおられないのかしら
「男嫌い
「結婚は
この決定的な朝までは火種さえ狩り出せなかったらしい。そういうわけで、
「これは
まるでビルを空調から興奮させてしまう騒ぎになったんだ。有名な子だから特にだ。仕事で来院する私も見知っているわけだし。
発見した時間はホテルのチェックアウトの時間帯ともピッタリ重なり、秘話へと一致させた。
「外泊。朝帰り」で決まった


働いている女性達からは、「お姉さん」みたいに慕われ、何と言うことなしに面倒見が良かったという。
人となりに肌優しく、「おめでとう」をユーモアに包み、子猫に鈴がかかったと見て、じゃれあってたんでしょう。
それからというもの、今日ごとに、
「いつ来られるんですか」と私の訪問で冷やかされっぱなしだったらしい。
瑞々しさゆえに打ち解けると蒸し暑い大気へ、まんまと私は飛び込んでしまったわけだ

明日のタイトルは「サクランボの哀しい詩」



もうたいへんだった朝帰り

2009年08月24日 21時14分20秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 一夜 」 から

活発な写真の彩りはセピア色に変色するも味わい深き心葉のアルバムです。

まさに飛んで火に入る夏の虫。
自動ドアが開いた途端、左手の受付に居た4~5人の子たちに点火してしまう。
みんなの真ん中に立っていて恥ずかしそうに俯く彼女を、他の子達が私に向けて押し出してくるのである。靴を脱ぐのもそこそこに畳み掛けられ、騒ぎを聞きつける他の看護婦さん達にも加勢された私たち二人は、とうとう診察室も真ん中あたりで押しくら饅頭みたいにされてしまうんだ。
彼女はといえば、みんなが連想した絡まりつく目線に仰天するも精緻を極める背筋で会釈したあとは、はにかむ立ち姿を出し抜けに私にピタリ、くっつけられ、ふさふさに緑の黒髪が香しいキスシーンそのまんまの位置感覚に悶えつつも甘んじて、ただただ小さく消え入りそうな声で謝り続けている。
訪問が原因だとは分かっても、なんでこうなるのか狐につままれる私はオモチャにされるがままでした。
きびきびした挙動も四方八方に手招きまでして集結させ、しめしめとほくそ笑みながら弄り回すも軽やかに、しかしながら派手に十人十色で跳ね回り匂い群れたち映える小雀みたいな看護婦の事務員の店員さんたちの、仕事そっちのけ、性急にほったらかして一丸となった大胆さには唯、ポカァーンと小首を傾げるのみであり、箱詰めに隅っこに追い詰められてったサクランボです。
診察中だった院長も患者さんも、ただただ黙ったなりの模様眺め。
院長は成り行きが理解できていたから良いようなものの、患者さんの方の驚きには想像を絶するものがあったと思われます。

なんという騒々しさなのと裏手の店頭から奥様が大勢を引き連れて足早に駆けつけられるも、私を一目見られるや否や、それだけで納得の恵比須顔になられる。他の子達も一様に笑っている。
いよいよ動機も何もかも分からない推理小説。
騒ぎまくっていた女性陣も心強い加勢を得て、ほんの一時でも医療機関は季節はずれのお祭りでした。

「はやく応接室に
と和らぎの奥様に避難を促されて突破した離れ離れの静けさにて、やっと診察中でも無理からぬ成り行きの次第を教えられた。

明日のタイトルは「チェックアウトの時間帯」



ウグイスのホッペ

2009年08月23日 14時13分09秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 一夜 」 から

思わず彼女と同じように正座でと下の絨毯に座りなおし、額を擦り付けんばかりに恐縮した。
加えて、適齢期の子への厳格な礼儀など持ち合わせてはいない私には、缶ジュースをストローで飲むようなものだったのです。
熱っぽい額を下げ止めても良い頃合いが甘くても良いのに摑みきれず、冗談みたいに一度ならず組み合わせてしまいました。
気配り下手で汗かきな悪たれへと綻ぶ花の娘は柔らかな思いやりにて、ペッタリ縮こまった恥ずかしさを散りに散らしてくれるばかりか、ゆとりの平熱を差し出してくれる。
じわじわと個性的に落ち着けて、時を知る安定した美感の与えられた比率に、過ごしやすい気温の温かさで見届けられました。
何よりも不器用者に波長を合わせてくれる作法とは異なる色合いが、やたら嬉しかった。
これを見つめる朱の娘は、春知らせ鳥(ウグイス)の頬っぺの膨らみでした。
静まる線より、裂けて開いた本当の色が極まっており、言い知れぬ姿を真価で発揮する。
別れ別れの唐紙に添えた愛らしさやら人あしらいの良さ、二の腕を守り培う袂の絞りから気品がほろろに零れ落ちる。
すでに引き幕が閉じられているにも関わらず、廊下への立ち居振る舞いさえ襖が透けての一筋の川の流れに残像と余韻をときめきで、姿見まがいに私を突き刺す。

後の日からも玄関にて帰る私とを絡み織り、行き来を交ぜ合わせる宵の内も冷たく痛そうに黒光りする板にますますで礼を尽くされるが、際立っている情けを込めた姿は、重々しい日本舞踊にて親しく近づくも心地よさの数秒であり、又の色上がりまで絶えないように貸し与えてくれた。
しなやかに手首から伸び伸びした中指を撓め、親指が人差し指に半分隠れて四拍子しか覗かなかった左右の手に見知るは私の記憶違いでしょうか。
長ければ窮屈した渇きに萎んだでしょうが、透かした折り重なりの一瞬、一瞬は感動だった。

活発な写真の彩りは一枚岩となって、老いていく絵日記に綴じられていくんでしょう。
セピア色に変色するも味わい深き心葉のアルバムです。

明日のタイトルは「もうたいへんだった朝帰り」



カネで買えないものはない? 

2009年08月22日 12時07分22秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 一夜 」 から

とある年、老舗ホテル『翠玉の間』で開催した展覧会に、昼休みを活用された院長が急ぎ足で来会される。
2400の商品を買いに来られたのであるが、あいにく前売りで売却済みになっていた。
「もう売れているとは思わなかった。急いできたんだが。買い戻してくれ。カネで買えないものはない」
と、院長は何のためらいもなく言い放った。
この、初対面の私への態度には呆気に取られてしまったが、他の商品で対応しようとしたのが浅はかでした。
この日まで名すら聞いた記憶もない方です。



私邸を訪問した夜、
応接間に隣接する和室の建具が開け広げられたなりになっていて、一段高い畳の真向かいには幾つもの開き戸の内側に数段にも安置される御位牌を徳川幕府ばりに納めた物凄い仏壇がありました。
位牌の多さ、享年の果かなさに怯んでしまう。
奥様も妹も月命日には勿論のこと、日々に欠かさず手を合わせておられると聞く。声を呑み、息を詰めてたじろいだ。恐れおののく私にどんよりと黒雲が伸し掛かった。
姉妹には予告なき私の来訪だったらしく、階上に居られた奥様が大急ぎで襖を閉じに降りてこられる。
寒く冷たい反響音が心に沁み込む。

しばらくして、雑談する私の右手の襖の幕の裏から、几帳面な小さな声が順風にかける帆を暗示させて、上がった。

スゥーーーーーウ、ス・・・(通す)・・・

劇場の杮落としではない。澱みなく、左右に力強く繰り広げる景色は際立っていた。
すっとんきように跳ね上がってしまった私である。
極まっている麗しい花色の顔立ちに、気持ちは椅子から転げ落ちた。

明日のタイトルは「ウグイスのホッペ」


余命2週も、まだ27歳でした。

2009年08月21日 21時43分52秒 | 朝顔 「椿灰」 

はじめまして

わたしは誰それの足音ではない。
くしゃみやら鼻息に飛び散るタバコの灰。
単細胞の頭を言い分で掻く迷い箸が滑稽で、この男を観察しつつ、合間合間に頭ん中を覗いていた紫煙。
のんびりした男を雲の上から観たとおりに語り、垂れてくる雫の正体がであり貴方です

あらすじ

生を別宅に享ける・・・・・・・・・・・・・・・・・出生の秘密

乳がん。
余命2週の告知でした。
姉は、「こんなに不幸な子は居ない」と、泣き崩れる。

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本宅の異母姉に養子を迎えての・・・・・悲しい生い立ち。
父親、姉妹それぞれの母親・・・・・・・・三人共に他界されたばかり。
本宅の姉は異母妹の彼女を引き取る・・まだ彼女は赤ん坊だった。

これらは公然の秘密。衆知の話だったらしい。
肝心の私だけが知らなかった。

亡き母への思いから自分もと・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・別宅に我が身を置く、禁じられた誓約。
・・・・・・・・・・・・・・・・を、最期まで姉に言わなかった、犠牲の愛。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・純愛と教義。


遺品には癌に関する新刊がありました。
本人にしか分からない異変であり、誰にも言わなかった。
あんなに仲が良かった姉にさえ。

GW連休明け真夜中に倒れ、大学病院に搬送されていた。

これっきり・・・・・・・・・・・・・・・・・・108夜を戦い抜き、逝ってしまった。

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カテゴリーは目次として使用しております

【一夜】 より