現代日本人文芸：呉原百合蔵小説：次の総理の椅子に座る者は誰だ：第６７回：フィクション

「安倍総理は荒れた海を航海する中型船の船長のような技術を要求される」

　Nがため息混じりでこう言うと仲間の一人が、

「分かるよ、アメリカ、ロシア、中国と相手にしていかなくてはいけない」

「それにな」

「それに何」

　Nは間を置いて仲間に語りかける。

「トランプ氏の後ろにはキッシンジャー氏がいる」

「それ誰」

「それ誰は無いだろう」

「教えてよ」

「ニクソン大統領時代の補佐官だ」

「そんな古い時代の人がまだ生きてるの」

「元気ハツラツまむしドリンクだ」

「何歳になるの」

「９３歳」

「日本に好意的なの」

「いいや」

　みんな言葉がなくなった。

「Nさん頼むよ。安倍総理を助けて」

「もちろん」

　仲間は初めて安堵の表情を浮かべた。

「みんなで今日の安倍総理とトランプ氏の会談の行方を見守ろう」

　このNの言葉に、仲間は黙って頷いた。