太郎は広島県呉市の小学校を卒業して、広島市のど真ん中にあるマンモス校の名門中学に入学した。
「広島の人なら誰でも知っている中学校である」
一学年が十クラス以上あり、太郎は小学校の時のようにハーモニカを吹いて目立つような事はなかった。
一年間が過ぎ中学生活も慣れた頃、太郎のもとに祖母が尋ねてきた。太郎のおばあちゃんは太郎に、
「呉に帰ってきてくれないか」
こう言うのである。
太郎は、
「やっと広島での生活に慣れたのに、また呉で第一歩からやり直すなんて出来ない」
と断ったが、
「あんたが転校ばかりするのが可哀相で」
と太郎のおばあちゃんは言う。
「今さらできない」
太郎はおばあちゃんのお申し出を断った。
太郎はその日の夜母親に、
「おばあちゃんが変なことを言う」
と打ち明けると、
「おばあちゃんの実家は平家の流れを汲む名門の家で、おじいちゃんと結婚した時に養子になってもらう予定だったの。でもおじいちゃんは養子にならず自分の名前で通したわけ。自分の家の跡継ぎが欲しいんでしょう」
太郎は唖然とした。
「ぼくは自分の家の長男だ」
太郎の言葉に、
「それは十分に分かっている。でも、問題はそれだけじゃない。今呉の町は寂れる一方でどうしようもなくなっている。火が消えたようだ。ここ一年は。宮原の人たちも見込みのありそうな若者が欲しいじゃない」
と母親は言葉を返すのだった。
「太郎にはどうも事情が飲み込めない」
ふっと息をついて、
「僕には僕の人生がある」
自分に言い聞かすようにこう言うのだった。
「広島の人なら誰でも知っている中学校である」
一学年が十クラス以上あり、太郎は小学校の時のようにハーモニカを吹いて目立つような事はなかった。
一年間が過ぎ中学生活も慣れた頃、太郎のもとに祖母が尋ねてきた。太郎のおばあちゃんは太郎に、
「呉に帰ってきてくれないか」
こう言うのである。
太郎は、
「やっと広島での生活に慣れたのに、また呉で第一歩からやり直すなんて出来ない」
と断ったが、
「あんたが転校ばかりするのが可哀相で」
と太郎のおばあちゃんは言う。
「今さらできない」
太郎はおばあちゃんのお申し出を断った。
太郎はその日の夜母親に、
「おばあちゃんが変なことを言う」
と打ち明けると、
「おばあちゃんの実家は平家の流れを汲む名門の家で、おじいちゃんと結婚した時に養子になってもらう予定だったの。でもおじいちゃんは養子にならず自分の名前で通したわけ。自分の家の跡継ぎが欲しいんでしょう」
太郎は唖然とした。
「ぼくは自分の家の長男だ」
太郎の言葉に、
「それは十分に分かっている。でも、問題はそれだけじゃない。今呉の町は寂れる一方でどうしようもなくなっている。火が消えたようだ。ここ一年は。宮原の人たちも見込みのありそうな若者が欲しいじゃない」
と母親は言葉を返すのだった。
「太郎にはどうも事情が飲み込めない」
ふっと息をついて、
「僕には僕の人生がある」
自分に言い聞かすようにこう言うのだった。
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