二宮正治の短編小説 ジョージの涙（ぼくは日本人だ）第１１回

　ジョージと母親の花江は四十八年ぶりに広島県呉市和庄の高日神社で再会したのだった。
　花江はジョージを四十八年ぶりに見ても、ひと目で自分の息子である事が分かり、ジョージもこの老齢の女性が自分の母親である事が分かったのである。
「親子の絆じゃ」
　ジョージがこう言うと、
「親らしい事を何にもしてあげられんかったのに、そがいな事を言われたら辛い」
　花江が泣きじゃくってこう答えた。
「親子である事は疑いのない事実じゃけえ」
　ジョージが母親を慰めるように言う。
「ごめんね、ジョージ」
「いいえのう」
　この二人の会話をマキはそばで泣きながら見ていた。
「ほうじゃあ、お母ちゃん。昔のように玉子焼きを作ってや」
　ジョージが甘えるようにこう言うと、
「ええよ」
　花江はこう答えて自分のアパートにジョージとマキを案内したのである。