月刊ボンジョルノ

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温泉めぐりとイタリア経済

2007-07-30 | Weblog
枕頭で田山花袋『温泉めぐり』(岩波文庫)を読む。元は博文館の本。期待はずれ。文章がうまいとかネタが珍しいとか、なんか取り柄がないと。ほんとにただめぐっているだけじゃないか。
この間の『百物語』の憾みもあって、文庫はこれでよいのか!タマ切れか!みたいなよく分からない憤りに駆られる。

そういえばかつては専門的研究の入門書・啓蒙書という位置づけだったはずの新書業界は、いつの間にか昔のワニブックスやゴマブックスみたいなタイトルに席捲されている。
「株で得してなんちゃら」とか「人間関係を話し方でなんちゃら」とか、こういうのはハウツー本などと申して本屋の棚の中でも品下るものとされていたはずだが。
そこまでいかなくても、いかにも売ってやろうという衒いに満ちたタイトル&企画で、なんだかマユツバな印象の本が多い。ちゃんとした研究者の著者も減っている気がする。
『超整理法』や『大往生』が売れてしまって以来「新書だって売ろうと思えば売れるじゃないか!とにかく売れるの作れ売れるの!」ということになり、バカの壁があったりさおだけ屋があったり美しい国があったりしてめでたく現在に至るのか。
そりゃ時代によって中味が変わるのは当然だけれど、アカデミックな固いトピックスを学生やサラリーマンが齧ってみてちょっとだけ賢くなった気になる、というかつての新書の機能はどこへ移行したのか。
あるいはもうそんな本はいらん時代なのだということか。
選書もいずれはそんな感じになるのか。

しかし危ない危ないと言われ続けながら、ほんとに倒産するところがほとんど出ないのが出版業界の不思議なところである。イタリアみたいだな。