なぎのあとさき

日記です。

猫の中の猫

2020年09月10日 | にゃんトーク


やりたいようにやるだけにょ。
だって、あたちはビーよ。
ねこのなかのねこだもにょ!

私の腕の中にいるビーが、突如ぴょん!と素早く飛び出して、フェンスを越えて遊びに行ったら、私にはつかまえられない。

いとしのビーたまは、どこまでも猫らしく、どこまでもかわいく、9月10日の朝早く、Tと私を起こしたと思ったらその足でぴょーん!と空へとジャンプした。

ビーを抱きかかえるようにして、この腕の中で送ったのに、現実感がなかった。寝起きでコンタクトしてなくて、はっきり目が覚めてなかったかもしれない。あっというまだった。

遊びに行っちゃった。
今回は、邪魔になった身体を置いて行っちゃった。
自由になったビーは、持ち前の運動神経が復活して、目にも止まらぬ速さでびゅんびゅん空を飛び回って遊んでる。
でもまた会えるよ。ビーはいつも、私のところに帰ってくる。

その日の夕方、河原に出たらビーのシッポみたいな太くて短い虹が出た。

少し戻って、これまでのこと。

前回の通院で胸の水を抜いた翌日、9月4日に利尿剤をスタート。
5日土曜日には、ビーの食欲は100%復活。ゼッピンのカリカリ、アジとナマリMIX懐石店のおかか添えをむしゃこい。
調子よさそうで、パラディア再開。

この日は、台風10号の警戒が色濃くなっていた。

6日は台風が日本に近づいて、関東も天気が崩れた。中央道の早めの封鎖で、Cと話して海に行くのは諦めた。
何度かゲリラ雨があった。

私は鐘中というのもあってダルダルで、ビーも寝てばかり。
カリカリとちゅーる(総合とエナジー)、メルミルは自分で食べたけど、好物の魚は食べなかった。

7日の月曜は下痢したのでパラディアやめ。
鼻上部の腫れが爆発して、膿がどっと出た。きれいに拭き取り、腫れはゆっくりひいてきた。

日中は和室で寝ていて、ビーの寝息を聞きながら、アルベルチーヌの寝息と眠りの描写を読んでいた

朝は固形物はほとんど食べなかったけど、午後にナマリをむしゃむしゃ食べた、ペロリまでいがず、残した。

この日はモンちゃんの4年目ワクチン。詳細は後述。

8日、アジやナマリ、イワシを出してもプイッとされたけど、ちゅーるやメルミルはちゃんと自分でなめた。
お皿に出しても今ひとつでも、私の指に乗せると何度もペロペロ、全部なめた

呼吸が少し速かった。
ベッド下にいるビーを、何度も見に行って、静かに眠ってると安心した。寝てる間は起こさないようにした。起きてると、こっちを見る顔がかわいくて、何度も見に行った。

好物の魚を食べないこと、呼吸が少し速いこと、ニャー!と下僕を呼び出さないことは気になった。
利尿剤を飲ませても、尿量はあまり変わっていなかった。

とはいえ、かわいくてフワフワで、自分で食べてトイレも行くし、離陸が近いとは思わなかった。
調子さえ戻ればまた、涼しくなったら顔の上で寝てくれると思っていた。



失われた時を求めての6巻を読んでる時に殿を送り、一時中断したあとまた読み出して、今は10巻を終えたところで、ビーなら14巻全部終わるまで余裕だろう、と思っていた。

その10巻の終わり、ベルゴットがフェルメールのデルフトの眺望を見るくだりはとてもよかった。
そのくだりの始まりの一節。
◯自然は病気を長引かせることはない、医学と薬が患者を小康状態にして新たな病気を生み出し、病気を長引かせる

9日の午前中はちゅーるもプイッだったので、初めてロイカナリキッドをあけてシリンジご飯。
午後はメルミルをよくなめたので、小分けにしながら80kcal自分で食べた。

ちゅーるもメルミルも私の指につけると全部なめた。ビーの舌の感触は、昔ほどザリザリしてなくて、柔らかくてかわいかった。指先のご飯は二なめくらいできれいになくなった。
何度も指に乗せて、なめるビーを見ながら舌の感触が幸せで、かわいいね、ビーはぁと何度も言った。

呼吸が少し速いままなのが気になって、心細さはあった。
好物をむしゃこいしないと、私も食べられなかった。
でもまた、これまでみたいにけろっと食べるんだろうな、と思ってもいた。
夕方、Tが外に連れて行ったときも、ビーはご機嫌だった。

夜、ビオフェルミンを少量のロイカナリキッドで溶いて飲ませた後、吐いた。

そして10日の6時半頃、和室で寝てたビーは、横で寝てたTの顔の横で飲んだばかりの水を吐き、その場でオシッコした。
Tはそれで起きて私も起こして、
ビーのお尻が濡れてるから拭いてあげて、とビーを連れてきた。
ビーはトイレの前で下痢もしてたので、Tはトイレと吐いた水の掃除を始めた。
ビーを抱っこして洗面所のお湯を出してたら、ビーの呼吸はさらに速くなって、口呼吸になった

2週間前に胸水が見つかってから、診察のたびに先生は口開けて呼吸することはないか、と言っていた。これがそうか、と思った。

すぐにバスタオルを広げて寝かせた。口呼吸がおさまるように胸を撫でた。一度起きて、歩こうとして、よろけて倒れた。

まさか、と思いながら、前足の肉球を撫でたら、ぎゅーっと、私の指を握った。え、そうなの。ビーを両腕で抱え込むようにして、苦しまないでね、ありがとうビー、愛してるよ、と声をかけてすぐ、掃除中のTを呼ぶ間もなく、後ろ足で蹴る動きが2回あって、ぴょん!と飛び立った。

すぐに駆けつけたT、「ビー、起こしてくれたんだね」、抱っこがまずかったのかと気にしてたけど、ビーは抱っこが好きで、前夜も何度もしてた。
それより、下僕を起こして、いつものように使いたかったんだと思う。

心臓だった。2週間前、このまま悪くなると酸素室に、、と先生がちらっと言ってた。

しょんにゃの、あたちいや!
ちもべのうでのなかにちとくわ!

だったのかな。この日も通院予定だった。

あまりの早業で、すぐには涙も出なかった。
ただ呆然とする下僕だった。

殿は賢者から仙人になって子猫に戻って顔つきが変わっていったけど、ビーは顔つきも猫のままで飛んでった。

足腰が立たなくなる前に、自分でご飯を食べられなくなる前に、酸素室に入れられる前に、するっと飛んでった。

もうビーは苦しくない。
きらいな通院もない。
腺がん細胞に骨や組織をやられることもない。

初めてあけたロイカナリキッドは、20しか飲まなかった。

猫の中の猫だもん。
すきなものは、あおざかな!
きらいなものは、びょーいんよ!

その後コンタクトも入れて、目もしっかり覚めて、夢じゃなかったとわかって、みるみるあふれる悲しみ、寂しさ。

殿のときは、安堵が強くあったのと、ビーがいた。
殿とともに私の猫人生の最初からいて、イニシアチブをとってきた猫だ。
寂しさは、尋常じゃない。

もー、ビーったら、こんなに突然遊びにいっちゃって!
下僕を足蹴にして飛び出して!

そんなビーは、10日前に、20歳の誕生日という人生最高のプレゼントをくれた。
好きなものをむしゃこいして、祝わせてくれた。その日は21歳いけるかも、とまで思った。
長さじゃないと思ってはいるけど、20歳はずっと夢だった。2002年に2歳のビーが2週間の家出から戻った日は人生で一番嬉しい日で、その日についで、2020年に20歳になった日は嬉しい日だった。2が多いな、猫だもんね。
もー、かわいいんだから、ビーはぁ。




その日、日中は晴れて真夏の暑さだった。夕方、涼しい風が吹いて、今年初めて秋を感じた。



夜は、クーラーきんきんの部屋でビーの体と一緒に寝た。
脱け殻になっても、ビーの体のすべてが愛しくて。

夢には殿がでてきた。目覚めても忘れないように、目を見開いたちょっと変な顔で。

あとはおれに任せろ!
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