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バーボングラス片手のロックな毎日

やっぱりひどい真田丸の三谷幸喜の演出

2016-02-29 03:03:05 | MUSIC/TV/MOVIE
NHK大河ドラマ。真田丸。
相変わらず視聴率が上がったとか下がったとか言われるが、そんなものは見てる人には関係ない。見てない人にはもっと関係ない。しかもNHK、番組スポンサーがいるわけじゃないから広告代理店などが一喜一憂することもない。役者も視聴率はあまり気にしないんじゃないかなぁ。主役と脚本家とプロデューサーくらいか。
しかも視聴率が高い=いいドラマってわけじゃないからね。ただ単に話題性があるからってだけかもしれないし。SMAP×SMAPでのメンバーの謝罪会見の回が30%以上の視聴率だったけど、番組が良かったわけじゃないだろ?あれは「一体どうなるんだ」「どんな結末になるんだ」って興味を引いただけだろ?

ドラマだってオリジナルの設定なら「今後どうなるんだ」「これからどう展開するんだ」「どんな結末だ」って、視聴者が勝手に想像したりできるけど、史実を基に作られるNHK大河なら結果はみんな知ってる。篤姫とか八重の桜みたいにあまり知られてなかった人のドラマなら、イメージも膨らむが、真田幸村(信繁)なら知ってるからね。
関ヶ原の戦いで兄弟が豊臣側と徳川側に分かれて、お父さんの昌幸と信繁は三千人くらいで2万以上の徳川信忠の軍勢の猛攻を退け、合戦に間に合わないように足止めした。
関ヶ原で石田三成を破った徳川家康は、昌幸と信繁を許さないと言ったが、兄の信之、徳川家臣の本多忠勝の口添えで蟄居になる。
大阪冬の陣で豊臣に依頼され、浪人衆のリーダー格となり、真田丸と言う砦を築き、徳川を追い払う。
大阪夏の陣で家康の本陣に特攻をかまし、あと一息で家康の首を取れるところまで行ったが敗退。家康はこの時2回ほど自害しかかったくらいやばかった。
ってストーリーは戦国マニアや時代劇好きは誰でも知ってる。

だから三谷幸喜がこの結末まで持って行くのに、武田家が滅んだあとの真田家が、織田や上杉や北条、豊臣とどう渡り歩いたかを家族とかを通じて描く。ってのがテーマらしいが、ちょっと時代劇としては不満だらけ。
丁寧に描くのはいいんだが、どうも三谷幸喜の脚本は苦手だなぁ。いつもツボを外すっていうか、視聴者が見たい部分を無視してすっ飛ばすのは清洲会議とかと一緒。もともと舞台作家だから、台詞に頼るところが多い。群像劇は有頂天ホテルとかで証明済みの下手くそ。大人数が入れ替わり立ち替わり出てくると、スケールはでかくなるが相互関係が掴みにくくなるからね。映画では予算があるから有名俳優いっぱい出してなんとか繕ってたが、西田敏行、佐藤浩市、中井貴一、深津絵理は今回いない。

今の所の不満は
1、信玄亡き後、諏訪家から呼び戻された暫定頭首、武田勝頼になぜ真田昌幸は忠誠を誓ってたのか。なぜ武田家の家臣は勝頼を裏切ったのかとか全然描かなかった。
2、上杉家のお家騒動も描いてないから、上杉景勝や直江兼続の人物像がいまいちわからん。
3、織田信長の人物像を昌幸の話だけで語らせ、明智光秀に怒鳴って怒ってる原因も描かず、ナレーション一つで本能寺の変を終わらせてしまう。
4、織田家四天王の柴田勝家、丹羽長秀、池田恒興、滝川一益がどんな地位にいたか描いてない。だから本能寺の変の後、滝川が当時の北条との戦いが長引き、清洲会議に出れなかった理由がわからない。
5、さらに北条家の勢力などをちゃんと描いてないから、北条か上杉か織田か悩む昌幸の意味がわからない。あげくに天王山の戦いもナレーションだけで終わらせた。
6、国衆、豪族、大名、国を治める事を描いてないから家と国衆、家臣と家来、領民などの、相関図、上下関係がわからない。したがって調略とか諜報、流布の大事さがわからない。

もっと色々あるんだけど、やはり三谷幸喜の脚本演出だなぁって、半ば呆れてる。このままじゃぁ新撰組の二の舞だ。

でも今の所、草刈正雄演じる昌幸のコミカルさ、草笛光子演じる取りの戦国の母の覚悟、大泉洋演じる信之の長男の愚直ともいえる真面目さなど、いい演技に助けられてる。本多忠勝(藤岡弘)の豪胆さ、上杉景勝(遠藤憲一)の冷静と慈悲、北条氏政(高嶋政伸)の狡猾さなども俳優陣のうまさなのか、上手く描かれてる。
こういった部分は期待できるが(なぜ上から目線?)、いろんな場面で「?」って思うところはいっぱいある。

前述の本能寺の変も、あれでは饗宴の時に迂闊に「我々も骨を折った甲斐がありました」って言った明智光秀を織田信長が「お前が何をしたっていうんだ?」って責めて、足蹴にしたのを恨んで、明智が謀反を起こしたって前提になる。
明智光秀がそのセリフを言って信長の怒りをかったのは、武田滅亡の饗宴ではなく新年の宴とか、浅井朝倉を滅ぼした後の宴と言われてる。しかも、この時期は徳川を招待しての宴、家康を満足させる饗宴をしてすぐに、高松城攻めをしてる秀吉の援軍に出ろと信長に言われ、準備したが京に戻って謀反を起こしたってのが通説。
それをあの欄干でボコボコにされるシーンと、ナレーションだけで終わらす演出は何?まぁ今更本能寺の変を丁寧に描けとは言わないが、そのあとの織田家の騒動混乱はあれじゃぁよくわからん。

京の饗宴後に家康は堺に周遊。その際に本能寺の変を知り、「上様の後を」ってセリフ。織田の家来でもない家康が、信長を「上様」って呼ぶか?これだけでもうんざりなのに、浜松まで逃げ帰るドタバタがもうダメ。このとき助けたのが堺の豪商たちと服部半蔵など伊賀甲賀忍者集団と言われてる。だけどこの逃亡劇がひどい。なんだあのコミカルな逃亡劇は。家康はお金を使って野盗とか国衆を説得して逃げたのはいろんな文献で明らかになってる。
一緒に逃げた穴山梅雪は、武田勝頼を真っ先に裏切った家臣で、家康と別ルートで逃げたが、金を持ってなかったので殺されてしまったこともなんか、全然中途半端で描かれてた。本来はこの堺からの逃亡は、家康の危機の切り抜け方が分かるエピソードなんだけど、あれじゃぁただのドタバタコメディだ。

しかも浜松に逃げ帰った家康は、明智の軍勢と戦いますか?って聞かれ「なんで家来でもないのに仇討ちしなあかん?」って今度は言ってる。もう無茶苦茶。
あっという間に京を抑え安土の城を落とした明智に、家康は兵を整えて戦う準備など到底できなかった。これは柴田勝家も丹羽長秀も、そして滝川一益も一緒。そんな中、まさかの羽柴秀吉の中国大返し、山崎の合戦が想像以上の速さで行われ、明智光秀は討ち取られる。これもナレーションだけで終わらせてしまう強引さ。

長澤まさみが現代語ではっちゃけて喋るのが嫌だって、ネットには書かれてるがこれは別に気にならない。現代語で今風に語る方が、歴史マニアでもない視聴者はわかりやすいし、ドラマの清涼剤みたいになるしね。ただ、あんまり多いとうんざりするからね。
それよりも時代考証をちゃんとして、家や人間関係、政治、勢力、背景をちゃんと描いてほしい。

武田信玄が死んで勝頼が諏訪から呼び戻され、なぜ武田の頭領になったことなど完全に手抜きしてるから、武田家の旧家臣の信頼を得るため他国に戦争を常に仕掛け連戦連勝してたとか、家康は領地もかなり奪われ、その度に信長に援軍を出してたとか、しかし越後や本願寺と争ってた信長は来てくれなかった。しかし上杉謙信も死に高天城が奪われたのをきっかけに始まった長篠の戦いで、勝頼は織田、徳川連合軍に負ける。
しかし勝頼は新府/城を築き新たに勢力を伸ばす。この新府築城を任されてたのが真田昌幸だ。しかしその頃から旧家臣の裏切り寝返りがあり、最後は悲しい最期を遂げる。これが一話目であっという間に描かれ、2話目で勝頼は死ぬが、視聴者はなぜ織田軍がここまで猛攻できたのか、なぜ徳川家康は武田が滅んで安心したのか、それらは全然わからんし、時代に翻弄される真田家の苦悩もよくわからん。

真田信繁が真田幸村としての名前の方がポピュラーなのは、「真田十勇士」のせいだろう。猿飛佐助、霧隠才蔵、三好清海入道、三好伊三入道、穴山小介、由利鎌之介、筧十蔵、海野六郎、根津甚八、望月六郎の10人。真田丸では今の所佐助(藤井隆)しか出てきてない。今後出てくるんだろうか?出浦昌相(寺島進)が忍びの頭領みたいに描かれてるからちょっと楽しみ。
余談だが真田十勇士は2014年に舞台公演をやったんだが、好評なので2016年9月には映画化と、新国立劇場中劇場などでの舞台上演も予定されてる。
主演は中村勘九郎、霧隠才蔵役が松坂桃李、くのいち火垂を大島優子が演じる。しかも堤幸彦が、映画監督・舞台演出をともに担当するらしい。これも真田丸クライマックスに向けていい相乗効果になりそうだね。

今後、真田丸のキャストには、信繁の正室の春(竹林院)役は松岡茉優、後藤又兵衛に哀川翔などが決まってる。千利休は桂文枝だが、まだまだ出番が後でよかったね。登場の頃には今の不倫騒動も落ち着いてるだろう。
じゃぁ茶々はベッキーでどうだ。関ヶ原の合戦で豊臣を裏切る小早川秀秋は川谷、大野治長、石田三成、大谷吉継、加藤清正、福島正則などはSMAPのメンバー。それは冗談だが視聴率は取れそうだぞ。この時代はまだまだ有名キャラが目白押しだ。伊達政宗や片岡小十郎は誰だ?豊臣秀頼は誰に?

真田丸、今後にまだまだ期待だ。(一応ね)


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