トマトの呟き!!

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芥川龍之介 「鼻」----人間の心

2016年02月23日 | 日記
芥川龍之介 「鼻」を読み返して、主人公の僧侶の「禅智内供」が大きな鼻を小さくするために奮闘して、克服して、通常の鼻になった時に思う一節が下記である。確か高校1年生で読んだ記憶があるが、いま読み返してみて、この小説の主題のような気がしています。
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人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる。そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。。――内供が、理由を知らないながらも、何となく不快に思ったのは、池の尾の僧俗の態度に、この傍観者の利己主義をそれとなく感づいたからにほかならない。