新年早々megane企画が新宿ロフトで開催されます。
ソレのリハ。
セットは決まった。
さて当日の本番「いっちょ、決めたるぜ」と鼻息荒くステージに立つ俺のフェンダーはベニアの合板で出来ていた。
ブリッヂやトレモロも全て木製で弦は釣り糸が張ってあるがテンションはまるでない。
「まいったな、どんないたずらだよ」
一度楽屋に引っ込み、ギターを借りようとするのだが、なぜか共演がトラブリュウとワンズで「いやぁ、それはちょっと、、、」とニヤニヤするだけで誰も貸してくれなくて困るのである。
とりあえず見た事も聞いた事もないワンズのヤツを一人その場でボッコボコに叩いた。
「オマエ等、全員覚えてろよ、許さないからなっ」
とりあえずステージに戻り「何やってんの?アンタ」的に俺を見るメンバーの冷ややかな視線を尻目に、俺はギターを肩から掛ける、フリをする。
チューニングもする、フリをする。
エアーで臨む気です。
メガドラのテルさんと目が合う。俺を見る目はとたんに真剣な眼差しに変わり、その目はこう言っていたんだ。
「本気なんだな?」
俺は大きく頷きカウントを要求する。
決して巷にはびこるソレ等のような過剰な動きはしない。
正確にアルペジオを爪弾き、時にオルタネートにストロークする。
神に選ばれた天才プリマの如く洗練された動きだ。テンプシコーラだ!スワンだ!
すると突然モニターしているベースの音が変化した。
視野に入る程度に目の動きだけで上手のメガベース小泉氏を捉える。
なんと彼の手には漆黒のミュージックマンが抱かれていない。
じゃぁ、この多少痩せてはいるが、確かにパートを忠実にグルーブさせているこの音は?
クチベースだっ!!
「ボベッボ、ボベッボ、ボベッボ、ベボベボッ」
[FAREWELL]のフレーズを伊武雅刀ばりの見事なバリトンで再現している。
ふと目が合う。
「おまえだけにいいカッコはさせないぜ」
「やるな、ケイジ」
いつの間にかオレオマエの世界だ。
するとメガリーダーやんま氏は俺達に交互に一瞥をくれ、確かに、ごく微かに口だけで笑った。
「負けたよ、おまえ等には、おれも連れてってくれ」
そう言うと彼は静かにエクスプローラーをアルティメットのスタンドに戻した。
聞こえる、心の旋律がバイブしている。
驚いた事に彼はクチパクまで披露させた。しかし、
聞こえる、聞こえるのだ、魂のメロディが。
その瞬間テルさんの支配するドラムセットが全て消え失せた。
スティックも椅子すらも無い。
エアードラムに空気椅子だ。腰に爆弾を抱える彼の覚悟の程がオーディエンスに火を点ける。
カモンベイビー、ライトマイファイアー
メンバー全員無いはずの楽器が見える。感じる。凄まじいまでのパフォーマンスだ。新曲[meteo]ではフロント3人は見事に息の合ったボックスを踏んでいた。
そして小泉氏のクチベースだけがフロアに響く。
そのままショーは終盤に向かう。
フロアでは所々でキッズ達のモッシュが始まり、ダイブするヤツもいる。
「ああ、俺は今ロックを演っている。到達したんだな」
目が覚めた。
現実の夢からは覚めぬまま、目が覚めた。