グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

≪報告③≫パネル討論の1:国際連帯税シンポジウム

2008-12-07 | 「国際連帯税」東京シンポジウム2008

セッション1の寺島実郎氏の講演「金融資本主義の崩壊と国際連帯税」に続き、セッション2「専門家会合報告とパネル・ディスカッション『国際連帯税はなぜ必要か?』」が行われました。

◆専門家会合報告


最初に上村雄彦・千葉大学地球福祉研究センター准教授より、「国際連帯税とは何か?」との説明と前日開催した「専門家会合」の報告が行われました。後者について、当日使用したパワーポイント資料をご覧ください。

・上村雄彦氏の「専門家会合報告」を見る ⇒ PDF

◆国際連帯税と金融危機


最初に、金子文夫・横浜市立大学国際総合科学部教授が「国際連帯税と金融危機」と題して問題提起をしました。以下、要旨と当日配布された資料です。

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・金子文夫氏の資料を見る ⇒ PDF

2000年のミレニアムサミットでミレニアム開発目標MDGsが定められ、2015年までに貧しい人を半分にしようということになった。やり方は3つある。

①ODAを増やす。国民所得の0.7%という国際的申し合わせがあるが、中々達成されない。これを達成していかなければいけない。②債務の削減。貧しい国は債務が多く、援助を受けても過去の債務を返さなければならない。そうすると差し引きあまり残らない。③革新的資金調達メカニズム。

③の中にはいろいろあるが主に3つ。国際連帯税、IFFIm(予防接種のための国際金融ファシリティ)、その他寄付などさまざまなものが考えられる。

1つめが、イギリスが提唱したIFF(国際金融ファシリティ)。国際金融市場で債券を発行し、政府が保証する。ただ、これは債券だから結局ODAなり何なりで返さなければいけない。

2つめが国際課税の国際連帯税。

3つめとして国際的な宝くじをやったらどうかとか、広く寄付を募ったらどうかとか、いろいろな考えがあるが、これは不安定。

こう考えてみると一番確実なのは国際課税の国際連帯税。

では、その中にはどんなものがあるのか。

レジメの表1を見てほしいが、何をもって国際連帯税というかは、必ずしも合意ができていない。国民国家の中ではなくて、国際的な取引なり活動に課税して地球的規模の問題に使っていこうといういうものである。

*しばらく表1をそのまま解説。

金融税、環境税、その他にどんな例があるか。

これらの課税には2つの面がある。

1つは税収をあげるということ。

もう1つは望ましくないものに課税してそれに制限をかけていくということ。例えばたばこに課税して1箱1000円にしてしまおうという議論があるが、たばこを吸うことを抑制しようというのがその例である。武器取引税という考えもこれにあたる。

去年くらいまでの国際連帯税の議論は、この2つの面のうち規制の面についてはあまり言わず、とにかく金を集めるというものだった。

今年の後半からそれが変わってきた。

通貨取引税に対する反対論として有力なものは、「それは市場の取引を歪めてしまうではないか」

これに対して、「いやいや、これは本当にわずかな税率ですから、そういうことはないですよ」と答えてきた。

これは抑制よりも、どうやってお金を集めるかを重視した発想である。

「世界同時にやらないと、1国くらいではだめじゃないか」という反論には、表2のように、「いやいや、一部の通貨だけでも効果がありますよ」と答えた。

今年になってリーマン・ブラザーズの破綻などを受けて流れが変わった。

金融市場の規制が必要ではないかという議論が起きてきた。これは国際連帯税にとって追い風になる。いきすぎた金融取引を抑制するためにも国際連帯税が必要である。

また、国際連帯税は国家を超えて税を集め、国家を超えて使っていくという点では中規模のグローバルガバナンスに関わってくる。

税についても国際租税庁という案も出ている。

税を集めるのは国家の主権の中核をなすものだとされ、これまでは国際連帯税のようなものは考えられてこなかったが、これからはグローバルな問題についてグローバルに税を集めてやっていくという発想が必要になる。

国連総会議長のデスコト議長(ニカラグア)が呼びかけて、国際金融システムの改革を検討する専門家委員会ができた。議長がステイグリッツ米コロンビア大教授。日本から榊原英資早大教授(元大蔵省財務官)。計9人の専門家で構成されている【委員会は…12月、来年1月、3月に会合を開き、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの改革について、新興国や途上国の意見も反映した報告書をまとめる方針だ(日経ネットより)】。

*2つの目的をもう一度言って終わり。

◆国際保健と革新的資金創出メカニズム


次に、稲場雅紀・アフリカ日本協議会・国際保健分野プログラム・ディレクターが「国際保健と 革新的資金メカニズム」と題して問題提起を行いました。

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・稲場雅紀氏の資料を見る ⇒ PDF

既に資金創出システムはできている。それを紹介し、今後国際連帯税を考えるための土壌はできているのだという説明をしたい。

現在あるものは全て国際保健に関わる。

ユニットエイド(UNITAID)、IFFIm(予防接種のための国際金融ファシリティ)、Debt2Healthなどである。

ユニットエイドは、国際航空券にかかる税で医薬品を供給する仕組み。この理事会ではNGO代表の意見も積極的に取り入れている。エイズ、マラリア、結核の3大感染症の価格の高い薬品を大量購入によって安くしている。そして安定した製造を保証する。

IFFImは、将来のODAを債券にして資金を集め、GAVI(世界免疫・ワクチン同盟)に拠出する仕組み。

Debt2Healthは先進国との合意で途上国の債務の一部を免除し、そこで浮いた資金でエイズ、マラリア、結核対策に積み増す仕組みである。特に最貧国の債務免除は進んでいるが、低中所得国、たとえばインドネシア、フィリピンなども債務が累積している。こういうところについて2億、20億円といった規模の債務を帳消しにする。その一部をグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)に拠出し、グローバルファンドはインドネシアならインドネシアの案件にその金をつける。債務の帳消しと保健の向上を一体化した仕組みである。

今、保健の分野ではこうした多国間での取り組みが次から次へと生み出されている。

日本も政府は熱心で武見敬三元議員の委員会があって洞爺湖サミットでは日本のイニシアチブで洞爺湖国際保健行動指針が出された。

一方で日本で国際保健の問題は環境問題に比べて注目が薄い。

国際的になぜ保健についてこれだけ取り組まれているかと言えば、まずミレニアム開発目標の中、保健における成績が一番悪い。何とかしなければならない。命もかかっている。

*例としてレジメの乳幼児死亡、妊産婦死亡などについて数字をあげて説明。

MDGsの中で最も達成が遅れているのが保健関係である。

21世紀に入った現在、生まれた場所によって命の格差があって良いのか。

もう1つの理由。この保健の分野は市民社会の力が強い分野である。

トービン税を主張したのは市民社会である。

命の格差をどう縮めていくかについて進めてきたのも市民社会である。

80年代エイズ問題が出てきた時、アメリカにおいてレーガン政権がこの問題にあまり真剣に取り組もうとしなかったときに市民社会がリードしていた。そして96年に治療薬ができて、エイズ患者も生き長らえることができるようになったとき、今度は途上国のために動き出した。

医薬品については、知的所有権の保護(そのために医薬品価格が高くなる)という問題と、必須医薬品へのアクセス(そのためには医薬品価格を下げる必要がある)という問題との矛盾がある。この両立の中でユニットエイドなどの解決策が考えられてきた。

母子保健やHIV・エイズの取り組みの面、資金面で格差が出ている。このギャップを埋めるために革新的資金調達メカニズムが重要になる。

ではそれに必要な額は本当に多額と言えるのか。

世界の軍事費総額は7411億ドル、リーマン・ブラザーズ倒産以後欧米が約束した公的資金の注入額が3兆ドル。

これに対して国際保健に必要な資金はどれくらいか。

HIV・エイズ対策に必要な資金は2009年300億ドル、2010年400億ドルで済むと予想されている。

今、多くの命を救うことではなくて多くの間違いを犯したウォール街を救うために資金が投入されている。この100分の1の金で多くの命が救われるのである。

ユニットエイド、IFFIm、Debt2Heakthなどは既にある。それを考える時、国際連帯税も必ずできると言える。

◆地球環境税と国際連帯


次に、植田和弘・京都大学経済学部・大学院経済学研究科教授より、「地球環境税と国際連帯税」と題して問題提起が行われました。

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・植田氏の資料を見る ⇒ PDF

環境税は最初1920年にイギリス経済学者ピグーによって提唱されたが、その後現実化するには随分時間がかかった。フィンランドで初めて環境税が導入されたのが1990年。70年代から議論はされていた。

炭素税は低率でも大きな収入になる。

日本では3.6兆から3・8兆円。化石燃料を使わない活動はほとんどないから。

ステイグリッツは世界共通の税率で国際炭素税を導入することを提唱した。目的は京都議定書の達成。目的をまず決めて、それに達成できる税率を決めるというアプローチである。

ピグーは動機づけを与えることを主眼にし、使い道は重視しなかった。ステイグリッツは使途も述べた。国際公共財、化石燃料を使わないための技術開発という使途。

ただ、世界政府というものがないので、実際には各国が共通の税率を課すという形になる。そして使い道も各国で決めるのが現実的ではないか、という言い方をしている。

宇沢弘文案は、税率を一定にするのではなく、1人あたり国民所得によって税率を変えることものである。ステイグリッツよりもよく考えられていると思う。

先進国は炭素1トンあたり150ドル、インドネシアは炭素1トンあたり4ドル、フィリピンは5ドルというような形である。

そして世界的規模で大気安定化国際基金を設立、ここに資金を集め、発展途上国に対して人口や1人あたりGDPに応じて気候安定化対策、森林・農村の維持のために資金を配分する。ステイグリッツは効率性を重視している。宇沢案は気候安定化と南北格差是正を同時達成するのが特色である。

今後の論点は、環境税の二重性・・財源調達と抑制の両面があるので税制の設計が重要。

課税権と税収の使途の決定権は?・・国際機関が直接やるというのは将来的なものであろう。ここに係わり合いがないのに税だけ取られるのもおかしいといわれそうだ。国レベルの環境税、地方レベルの環境税は既にある。国政に対して中央政府があるし、地方には地方政府があるが、地球環境税を管理する国際機関ということになると国際機関って本当に良いものなのかという問題がある。決定過程の不透明さと納税民主主義の関係。

◆国際連帯税創設を求める議員連盟の理念


最後に、犬塚直史・国際連帯税創設を求める議員連盟事務局長・参議院議員より、「国際連帯税創設を求める議員連盟の理念」と題して問題提起が行われました。

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ここまで活動が進むと「はやくやれよ」ということになる。

連帯税を公約に掲げる候補者を勝たせることだ。しかし、実際は選挙でこういう話をすることは自爆行為である。ここに来ているような人はこういうことに関心があるのでしょうが。

(私の選挙区の)長崎は離島が74もある。

長崎で、たばこ屋の裏で井戸端会議をやっているところがある。中々そこに加えてもらえなくて、ようやく入れてもらえるようになったのでそこでODAの増額の話をしたら、「あんたには投票しない」と言われてしまった。

私も頭に来まして、「わかりました。アフリカの名前も知らないような小さな国に皆さんの血税を使う気にはならないのでしょう。それならば長崎にも税金を遣うのをやめましょう」と喧嘩ごしで言った。そうしたら、「あなたも苦労人ね」と言われた。応援してもらったような気がする。

ミレニアム開発目標を達成するのは国民の血税を使わなければならない。ODAの0.7%という目標を達成するのはいかに大変か。

理想論は別として現実に選挙を戦う身としては本当に大変である。

ここで有権者の皆さんに聞いていただける切り口が金融危機である。

例のAIGが破綻をして、そこでディーラーをしていた友人もくびになった。彼の話を聞いたのだが、これは聞いた話なので、(そんな話もあるのか)というつもりで聞いてほしい。彼の直属の上司の年収が50億円、そういう年収のディーラーが150人いた。本当かと思ったが、国会で財政金融委員会の委員に聞くとそんなものだろうと言っていた。

そういう人が住所は香港に持っている。本社の本部はタックスヘイブン、金持ちになるほど税払わない。皆さん、これでいいんでしょうか、ということを言って、これでようやく有権者の皆さんに話を聞いてもらえるようになった。

ぜひそういう意味で皆さんとも力を合わせていきたい。

先ほどから話題にも出てきた「国際連帯税創設を求める議員連盟」が超党派で今年の2月28日に発足した。

先ほどご挨拶いただいた林芳正さんに幹事長をお願いして、自画自賛になるが、本当に良い議員連盟で、皆さん、こういう議員連盟にいる人を選挙で落としてはいけない。会長が津島雄二自民党税調会長。津島さんにお願いに行ったら、津島さんは「こういうことは良いことだから、一党一派に限らず大いにやってほしい」、と。津島会長は与野党を問わず税制の第一人者。会長代理は環境大臣をしていた広中和歌子さん、また、財政金融委員長の民主党峰崎直樹さん、他にも社民党代表や共産党など総勢37名。

議員連盟の目的は、3つあって、まず為替などの勉強をしよう、2つめに(連帯税に関する)リーディンググループに参加することだが、これは見事9月26日に実現して、私は外務省からもらったその報告の紙を事務所の壁に記念に貼って毎日眺めている。

3つめ、このリーディンググループが提唱しているCTDL(通貨取引開発税)タスクフォースのリード国のわが国による引き受けを達成する。

そのためにまず他の国の議員との連携。1999年にカナダが通貨取引税を提唱。フランスは2001年に、またベルギーは2004年に、EU諸国の合意を条件とした上で、この税を行うことを法律で定めた。

イギリスは最も大きな議員連盟が2005年にCTDLについての動議を国会に提出した。こういう議員たちと連携していきたい。

そしてこういうことについてはここにいる皆さんと連携してロビー活動をし、早期の締結を目指す、この条約の課税メカニズムを日本が作っていくんだと、そういうことを皆さんといっしょにやっていきたい.

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