グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

革新的資金メカニズム--始動中、構想中

2007-05-13 | 国内のイベント、セミナー
11日付の朝日新聞では国際連帯税として航空券税とトービン税が記載されていたが、これらの税スキームもまた新しい資金源となることから革新的資金メカニズムのひとつとなっている。革新的資金メカニズムとは、既存の政府の資金(主にODA)とは別の資金源として定義することができる。このメカニズムは国際税の形をとるのが一般的であるが、必ずしも税の形とは限らないスキームもある。

現在世界でどんなメカニズムが実施されているのか、検討中のものは何か--これらのことが12日に行われたフォーラム「世界が本気になってきた 革新的資金創出メカニズムって何?」で資料として出されたので、それを提示する。この中にはメカニズムの範疇に入れてよいのかいささか疑問なものがあるが、日本ではほとんど知られていないことから、定義論議というよりいろんな資金源があるということを知ってもらい、そしてこれを機にメカニズムの議論をまき起こしていければ幸いである。


           革新的資金メカニズムのメニュー


1、国際金融ファシリティー(IFF)

英国が提唱し、将来のODAを担保に国際債券市場で資金を調達する仕組み。パイロット・スキームとして予防接種のための国際金融ファシリティー(IFFIm)が始動。主にワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVI)に拠出。IFFImには英国、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデン、ノルウェー、ブラジルが参加。GAVIファンドには世界銀行並びに多くの国が拠出している。

2、国際連帯税  

フランスが提唱し、世界の貧困削減に向けた国際税による開発資金調達の仕組み。パイロット・スキームとして航空チケットに薄く課税する航空券国際連帯税が始動。現在4ヶ国が導入済み、16ヶ国が導入予定。税収は、UNITAID(国際医薬品購入機構)の原資に。UNITAIDはフランス、ブラジル、チリ、ノルウェー、英国が設立国となり、昨年9月発足。資金は主に航空券税だが、二酸化炭素税、ODAから拠出する国も。イスラム開発銀行等の民間セクターからも拠出されている。

3、デット・コンバージョン(債務振り替え)

途上国債務に関して、債権国(先進国)と債務国が合意して債務を免除し、債権国がそのうちの一定の割合を世界エイズ・マラリア・結核対策基金へ拠出することによって、拠出した資金が当該債務国における世界基金のプロジェクトに追加資金として充当される仕組み。インドネシア、ペルー、ケニア、パキスタンでパイロット・フェイズに入ることが決まった。最初の案件は、ドイツのインドネシア債務に関して実施され見込み。免除と感染症対策資金創出という二重の効果がある。

4、民間セクターからの資金動員
 1)プロダクトRED 
 パートナー企業が「RED(レッド)」という共通のブランド商品を開発・製造 し、その販売収益を世界基金に寄付する仕組み。これによって得られた資金は世 界基金のアフリカでのエイズ対策支援(なかでも女性と子どもに焦点を当てたプ ログラム)に役立てられる。パートナー企業には、立ち上げ当初からアメリカン エキスプレス、コンバース、GAP、ジョルジオ アルマーニといった世界的に 有名ブランド企業が名を列ね、各社は英国を皮切りに、2006年3月より適宜製品 の販売を開始しました。その後、米国大手携帯電話会社のモトローラ(2006年5 月)、アップル・コンピューター(2006年10月)が新たに参加している。(世界 基金支援日本委員会ウェッブサイトより)

 2)プライベート・ファンデーション
 ビル&ミリンダ・ゲイツ財団(世界基金やHIV/AIDS等に関する新規医療・予防技 術開発に巨額資金を提供)、クリントン財団(エイズ治療薬の大量購入による価 格低下などを推進)、オープン・ソサエティ財団(HIV/AIDSに関わる市民社会活 動の総合的な支援)など。

 3)その他  
 民間からの寄付(企業、宗教団体、NGOなど)

5、構想中の革新的資金メカニズム
 1)開発資金のための通貨取引税(CTLD)
 トービン税ではない国際通貨取引税(トービン税の目的は通貨取引規制)で、ご く薄い税率で課税。それでも国際通貨取引は年間450兆円にも上るので、0.005% という課税でも、200億ドル強の税収となる(0.005%というのは、1億円の取引 で5000円の課税)。「開発資金のための連帯税に関するリーディング・グルー  プ」(46カ国)で討論中。
 
 2)人道支援のための国際宝くじ
 国連世界食糧計画(WFP)が実施意向
 
 3)移住者による送金
 正確には開発資金の「革新的資金源」には当てはまらないが、スペインは同国の 移住者コミュニティからモロッコ、エクアドル、セネガルへの送金フローを促進 する計画を試験的に開始している。

6、その他のメカニズム 
 ・国際税スキーム--国際炭素税、航空輸送税・海上輸送税、天然資源税、多国 籍企業税、武器取引税、トービン税


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