グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

米国議会での金融取引税法案(ウォール・ストリート税)提出の動き

2009-12-08 | トービン税/通貨取引税/金融取引税
                ピーター・デファジオ(Peter A. DeFazio)議員

通貨取引税や金融取引税についての取り組みが最も遅いと思われていた米国で、現在金融取引税(FTT)を議会提案すべく急ピッチで取り組みが進んでいます(情報は米国のNGO・ドイツのNGOより)。

下院民主党の議員たちが、「メインストリート(訳者注:実体経済のこと)再生の費用をウォール街に支払わせる制定法」(Let Wall Street Pay for the Restoration of Main Street Act)という法案を今週後に提案しようとしています。株式その他の有価証券に小額の税を課し、1500億ドルの税収を得て、国の財政赤字の縮小と雇用創出のために使おうというものです。

ガイトナー米財務長官はFTTに対し消極的な発言をしていますが(11月8日G20財務相・中央銀行総裁会合)、ぺロシ下院議長によれば「与党民主党の幹部の間でこの法案について支持を広げている」とのことです(11月20日付フィナンシャル・タイムス “US lawmakers consider taxing banks to tackle unemployment”)。
http://www.ft.com/cms/s/0/80733070-d574-11de-81ee-00144feabdc0.html
米国からも目を離せなくなりました。


(1)ピーター・ウォールによるサラ・アンダーソンのメールの紹介


日時:2009年11月14日 20:55
件名:[ENOFAD] FTTに関する米国での議論

●送信者:ピーター・ウォール(Peter Wahl)


皆様
セントアンドルーズでの会議ではガイトナーがFTT(金融取引税)に関して消極的なコメントをしたにもかかわらず、米国ではFTTに関する機運が高まっているようです。

今回の危機に関する米国NGO連合のサラ・アンダーソン(Sarah Anderson)からのメールの抜粋および、彼女による米国の状況に関する添付の報告をお読みください。

このメールは転送歓迎です。

ピーター・ウォール
WEED Weltwirtschaft, Ökologie & Entwicklung

●サラ・アンダーソン(Sarah Anderson)より


「(前略)来週、投機規制の税を創設するための新しい法案が米国議会に提出されます。G20会議でのガイトナーの発言にも拘わらず、米国議会では機運が高まっていると私達は見ています。新法案の正確な文章はまだウェブ上にアップされていませんが、草案では株式(0.25%課税)、先物(0.02%)、スワップ(0.02%)、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)(0.02%)、オプション(これへの課税についてはもう少し複雑です)に課税すると述べられています。この法案を作成したスタッフの一員はスワップ部門によって全ての通貨投機の90%を対象とすることができると述べています。現在の法案の書き方によると、税収は赤字削減と雇用創出基金に充てられるようです。ただ、法律制定の過程の中で税収の用途を地球公共財に広げることは不可能ではないと私達は思います。

法案は「Populist Caucus(仮訳:人民主義議員連盟)」と呼ばれる新しい連盟が提案します。これは議会の通常の左派のみによる連盟ではありませんが、現在のところ共和党議員は参加していません(下院では必要ないが上院では必要)。

添付書類はこの課題に関する米国政府および財界の指導者の発言を引用したものを私がまとめた簡単なメモです(編集者注:省略しています)。明らかにこれは大きな闘いとなりますが、関心も高い状況です。」

※翻訳者注:サラ・アンダーソン(Sarah Anderson)はIPS(Institute for Policy Studies)のグローバル経済担当者。http://www.ips-dc.org/staff/sarah

(2)サラ・アンダーソンによるピーター・デファジオ(Peter A. DeFazio)議員の手紙の紹介


送信者:サラ・アンダーソン(Sarah Anderson)
日時:2009年11月18日19:22:24 MEZ
件名:Re: 今日のFTTに関する電話

私たちが金融取引税に関して国際的に集合したグループと国内レベルのグループを巻き込み広範な連合の構築という難題に取り組んでいるというのに、この流れの主要な手段を持つ国がその税収を国内のニーズに充てようとしています。

しかし私たちは、現時点での主な目標は金融取引税の概念の正当性を高めることだということを強調し、うまくいけば資金の用途に関する論争を後に持ち越すことができるのではと思っています。

下記は議会の先導的な擁護者からの最新の文書です。これは彼が来週より後に提出する予定の新法案に対する支持を得るために、他の議員に送った文書です。同文書は今日いくつかの新聞に取り上げられています。法案を受け入れられやすくするために含めた控除部分が載っていますのでよかったらご覧ください。私達は、市民社会からの支持文書の中で、対象課題を国際ニーズに拡大させるように努めました。

それでは。サラ


メインストリート再生のコストをウォール街に支払わせよう:赤字削減、雇用創出のための取引税


ピーター・デファジオ(Peter A. DeFazio)議員より
送信者:mahar-piersma@mail.house.gov
日時:2009年11月18日
メインストリート再生の費用をウォール街に支払わせよう:赤字削減、雇用創出のための取引税

現時点の共同提案者:Arcuri、Perlmutter、Braley、Sutton、およびFilner

2009年11月18日

同僚の皆様:

わが国は、現在の雇用無き景気回復と空前の赤字をもたらした景気後退により無力にされ続けている。失業率は今10.2%に達しエコノミストのほとんどはこの数字がさらに悪化すると予想している。雇用無き景気回復により連邦政府は引き続き経済にてこ入れしなければならないことになるが、空前の赤字は2009年に1.4兆ドルに達し実質的な障害となっている。

ウォール街は7000億ドルの救済策の後、収益とボーナスの復活という恩恵を享受している。しかし好景気の実現にはウォール街における収益だけでは不十分である。米国メインストリートの実体経済は、ウォール街の銀行家だけでなく、全ての米国民によい給与の仕事が与えられることで強固になるのである。

「メインストリート再生の費用をウォール街に支払わせる制定法(Let Wall Street Pay for the Restoration of Main Street Act)」は、米国メインストリート(に基づく実体経済:訳者注)を再生するために少額の有価証券取引税をウォール街に課すもので、その税収は米国メインストリートの現下のニーズに投資される。有価証券取引税は、株式取引(1%の4分の1(0.25%))、先物(0.02%)、スワップ(0.02%)、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)(0.02%)、オプション(原資産の税率)に課税される。ウォール街における過度のリスクの多くは大口、短期の投機的取引であるため、この税は投機の意欲を適切に抑制する。この税は年間約1500億ドルを創出できる可能性がある。

この税が適切に投機家を対象とし、一般の投資家および年金基金に影響を与えないようにするため、以下に関して同税は還付される。

税制上優遇された退職金口座、
教育貯蓄口座、
医療貯蓄口座、
および年間最初の10万ドル相当の取引。

米国は1914~1966年に類似の資産移転税を導入していた。1914年の歳入法(Revenue Act)(1914年10月22日制定法(ch. 331, 38 Stat. 745))では、全ての株式の販売、譲渡に0.2%の税を課税するものであった。1932年に、議会は大恐慌における財政回復と雇用創出を助けるため税率を倍以上に増やした(0.4%)。英国は現在類似の税を課しているが、この税にも拘わらず欧州で最も高い出来高を維持している。

英国の経験は取引税の導入により取引が海外に流出するわけではないことを実証している。さらに、誰かが海外で取引を行ったとしても取引を請け負うブローカーには税を支払う責任が残される。

この法案による税収は、雇用創出と赤字削減という今日の2つの重大なニーズに充てられる。

この取引税により創出される税収の半分(約750億ドル)は直接赤字を削減するために使用される。経済の崩壊が主な原因で連邦政府の赤字は2009年に急増した。2008年から2009年の赤字増加分9500億ドルのうち、ほとんど全てが景気後退による税収減または連邦政府の対応策(例えばTARP(不良資産救済プログラム)、ARRA(米国再生再投資法)、失業給付手当)を原因とするものである。ウォール街の強欲により我々は現在の状況に置かれているのであり、銀行を救済した納税者に報いる直接的な責任がウォール街にはある。

この取引税により創出される残り半分の税収(約750億ドル)は、よい給与の仕事の創出に資金供給し米国民が自国を再建する仕事に戻れるようにするために、雇用創出準備金に預金される。これにより2009年の陸上交通授権法(Surface Transportation Authorization Act)の財源を増やすことができる。

残りの資金(約550億ドル)は議会が将来の制定法に割り当てられるよう貯えられる。我々は次のバブルが我々を景気後退から立ち直らせるのを待つことできない。我々は我々の未来、インフラ、中産階級に投資しなければならない。連邦政府が交通に10億ドル投資する毎に、輸出することのできない47,500人分の米国民の雇用が創出される。

取引税がウォール街に何をもたらすかと尋ねる人もいる。世界最大規模の投資信託会社であるバンガードの創設者、ジョン・ボーグル(John Bogle)は、取引税の概念に賛成している。同氏は、「現在の金融システムは、昨年のポートフォリオ回転率が250~300%という異常なシステムだ。これは賭博者がお互いに取引しているに過ぎない。 このような異常な取引を縮小する一つの方法は、何らかの取引費用を生じさせるか、非常に短期の資本利得に対する課税だ」(A Mutual Fund Giant Speaks Up for the Little Guy. AARP Bulletin Today. October 21, 2009)と話す。

さらに、アスペン研究所(Aspen Institute)は2009年9月9日に、数名の重要な財界の指導者らが署名した「Overcoming Short-termism(短期主義の克服)」を発表した。署名した財界人はジョン・ボーグル(John Bogle)、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)、ジョン・ホワイトヘッド(John C. Whitehead、元ゴールドマン・サックス会長)、ルイス・ガースナー・ジュニア(Louis V. Gerstner, Jr.、元IBM CEO)、リチャード・トゥルンカ(AFL-CIO財務局長)、ピーター・G・ピーターソン(ピーター・G・ピーターソン財団会長、創設者)を含む。彼らの最初の提言には「過度の株式取引を妨げ長期的な株式保有を促すような方法で物品税を実施する」ことを含む。

我々は何も行動を起こさず雇用創出の状況が好転すると決め込んでいるわけにはいかない。我々は、メインストリートが苦しんでいること、回復したウォール街が今度はその回復を他の皆と共有すべきだということを我々が理解していると選挙区民らに明確に示さなければならない。時宜を得た雇用創出および赤字削減を行うことは公正なことである。この法案の共同提案者となる方は、以下までご連絡下さい。
Auke Mahar-Piersma (DeFazio): 5-6416、mahar-piersma@mail.house.gov
Sylvia Stanojev (Arcuri): 5-3665、sylvia.stanojev@mail.house.gov または
Amanda Slater (Perlmutter): 5-2645、amanda.slater@mail.house.gov.

                           敬具
国会議員 Peter DeFazio
国会議員 Michael Arcuri
国会議員 Ed Perlmutter
国会議員 Bruce Braley
国会議員 Betty Sutton


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