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約日刊おもいつ記Z

気の向くまま~んに。つれづれなるまま~んに。お気に召すまま~んに。

イニシエーションラブ

2009-05-26 11:53:48 | book

乾くるみ著「イニシエーション・ラブ」読了。

噂は知っていたのに、今まで読めずにいた作品。
文庫になったということで、ようやく読了したのだが。

やられました。

合コンで出会った男女が恋に落ち、
遠距離恋愛、妊娠中絶を経験して、最後には破局を迎える。
途中までは、なんてことないただの青春恋愛小説だ。

最後の2行を読むまでは。。。ね。

とにかくよくできている。
一言で言うなら「主従の逆転」とでもいうのか。
サラッと書かれた文章の裏に、様々な罠が仕掛けられている。
「絶対にもう一度読み返したくなる」と謳われた作品だが、その通り。
いや、これは読み返さないと夜も眠れない。




モダンタイムス

2008-12-02 22:23:02 | book
伊坂幸太郎著「モダンタイムス」、読了。

“検索から、監視が始まる”

山本周五郎賞と本屋大賞をW受賞した
前作(「ゴールデンスランバー」)につづく大長編は
こちらも名作「魔王」の続編的作品でもある。

今回とくに印象的だったのは、
伊坂さんのかつてない荒々しさだ。

魅力的な登場人物と心をくすぐられる言葉の応酬は、
相変わらず秀逸で、ググッと引き込まれるのだが、
いつものようなライトで繊細な印象がほとんどない。
どちらかというと、暴力的で強引、そして熱い。
登場人物は、真っ正面から敵にぶつかり、
これまでにないぐらい感情をストレートに表現する。

おそらく伊坂フリークの評価は、
好き嫌いがハッキリわかれる作品だろう。
エンターテイメント性は弱いけど、
メッセージ性の強い作品になっていると思う。

“勇気は、あるか?”





岬バーガー

2008-10-24 19:21:43 | book
本馬英治著「岬バーガー」、読了。

岬の下でサーフィンに明け暮れる涼とケン。
彼らに影響されるようにサーフィンをはじめた凛(♀)。
そんな仲良し高校生3人の前に、謎の男・南雲さんが現れる。
サーフィンとハンバーガーで彩られた特別なひと夏の物語。

あの頃を思い出さずにはいられない。
そんな海の香り漂う青春小説は
波飛沫のように瑞々しく、サーフボードのように真っ直ぐだ。

どちらかと言うと、くら~い高校時代を送ってきた身としては
こんな瑞々しい青春時代が、うらやましくてたまらない。
映像化される可能性、かなり大だ。

作者の本馬さん。じつは会社の先輩でもある。
個人的に直接お逢いしたことはないが、弊社T会長の元に
「ついに本ができました・・・」と送られてきたそうだ。
偉大な先輩が、またひとり増えた。

ちなみにこの「岬バーガー」。
なんとWeb上でもオープンしている!
たまに更新される“店主・南雲さん”のブログが、
小説の世界と現実の世界を惑わせる。
ちょこっと覗いてみてください。素敵です。
「岬バーガー」Web店





ナイチンゲールの沈黙

2008-10-14 21:12:17 | book
海堂尊著「ナイチンゲールの沈黙」、読了。

「チーム・バチスタの栄光」の続編的作品。
そんなつもりで読むと、あっさり感が否めない。
本格ミステリーというよりは、SF?か?
全体的には前作よりはちと劣るが、キャラクターはとても魅力的だ。

田口&白鳥がどう謎を解いていくか、ではなく
瑞人少年がいかに二人を論破していくか。

次作「ジェネラル・ルージュの凱旋」へのブリッジ。らしいので
きちんと抑えておかねば。
う~ん・・・未読の本が溜まっておりますな。





同姓同名小説

2008-10-11 21:02:44 | book
松尾スズキ著「同姓同名小説」、読了。

かなり前の作品なので、内容と現実との
大きなジェネレーション・ギャップを感じずにはいられないが
とにかく面白い。
電車の中で読んでいて、こみあげる笑いが我慢できず
苦渋の表情をつくっていたら、美人OL(たぶん)が
変な人を見るような視線を投げ掛けていた。

エッセイスト・松尾スズキもいいけど
小説家・松尾スズキも、やっぱ最高だ。





闇の子供たち

2008-09-12 23:06:30 | book
梁石日著「闇の子供たち」、読了。

いま映画化されているあの作品の原作。
幼児売買、臓器売買の現実が
目を覆いたくなるような描写で描かれ
そして、強く問いかける。

新聞記者の南部が、
音羽恵子に言い放つセリフがある。

“この国の子供たちのことは、
この国の人間が解決するしかない。
君は所詮、この国では外国人なんだ”

きっと誰もが南部と同じ考えを持っているだろう。
当事者の問題は当事者が考えるべきだ。と。

でも、その排他的な考えが
世界が抱える幾多の問題を生み出した。
人間の罪は、ただひたすらにデカイ。

生活は豊かになったけど
人間は貧しくなった。

無関心ではいられない。


厭世フレーバー

2008-09-09 23:15:27 | book
三羽省吾著「厭世フレーバー」、読了。

名も知らない作家の本を
なんとなく手に取って読んでみる。
そうすると、意外と
掘り出し物にブチ当たる時が多い。
今回の本も、まさにそれ。

傑作みつけました。

父親が失踪してしまった、とある家族。
14歳の次男、17歳の長女、24歳の長男、42歳の妻、73歳の祖父。
それぞれが語り手となり、それぞれの鬱積した想いを語っていく。

解説文で角田光代も同様の事を書いているが
この本は「家族小説」のカタチをした
「ある意味、大河小説」だと思う。

戦中戦後~経済成長期~バブル期~不景気という渾沌とした時代。
それぞれの時代を生きてきた5人の歴史は、
いまの日本人が生きてきた歴史そのものだ。

本当の家族を知らない家族の物語。
テーマは重いけど、どこまでもポップ。
現代的だけど、ひそやかに古典的。

この人、すげーぞ。





ララピポ

2008-08-27 15:24:37 | book
奥田英朗著「ララピポ」、読了。

選りすぐりの負け犬たちの生きる姿を描いた短編集。
爆笑小説とかなんとか帯には謳っているが
実は、結構哀しい物語だ。

自分の居場所をみつけられない人々が
みんな誰かの誰かのせいにして生きている。
ドヨーン・・・と暗くなりがちな彼らの生き様を
能天気に描くことでエンターテイメントしてる。
巧い。

ララピポ=a lot of people
今日もこの街には、たくさんの人が生きていて
それぞれのドラマが紡がれている。





東京島

2008-08-20 16:34:47 | book
桐野夏生著「東京島」、読了。

太平洋の涯に浮かぶ“トウキョウ島”と呼ばれる無人島。
そこに生きるのは、30数名の男と一人の女。
欲望を剥き出しにした人間たちの物語。

読む手を止めさせない
圧倒的な筆致力はさすが。だけど。

ラストはこれでよかったの?
えっ??






殺人の門

2008-07-29 22:25:57 | book
東野圭吾著「殺人の門」、読了。

少年時代のある出来事をきっかけに
ひとりの男に、殺意を持ち続ける男・田島。
殺すのか。殺さないのか。
その境目で右往左往しながら
男は騙され続け、人生を狂わされていく。

陰と陽。ふたつの顔を持つ東野圭吾。
今作は、ただひたすら陰の世界を突き進み
なんとも言えない、重~い余韻を残して終わる。

どよーん・・・

こーゆー気分の時は
スカッ!と「ファンタレモン」でも飲みたいですな。

OLから転校してきた里中レモンです!

これ(↑)最近のいちばんのヒットです。




ひなた

2008-07-02 13:42:42 | book
吉田修一著「ひなた」、読了。

男女4人が織りなす短編集。
兄とその妻、弟とその彼女。
男女4人の春夏秋冬の1年間を、
それぞれの立場で物語を紡いでいく。
夫婦、恋人、家族。

季節が変わるように、
人の関係性も少しずつ変わっていく。
変化することの怖さや不安、それを乗り越えた時
世界はいつもより少し違って見えるようになる。

そこにある爽やかさと瑞々しさを
流れるような文章で書きつづっていく。
吉田修一らしさ。




こわい夢を見ないように

2008-06-18 21:04:29 | book
角田光代著「おやすみ、こわい夢を見ないように」、読了。

ほんわかとしたタイトルとは裏腹な
「憎しみ」をテーマに描いた短編集。

一般ピーポーを主人公に、日々繰り返される喜怒哀楽を
瑞々しく描ききるのは、角田光代の成せる技だ。
今回も確かな筆力で「ゾクッ」とさせる。
でも、気分はとことんマイナスへ。

う~む・・・

憎しみのお中元。





さまよう刃

2008-06-06 18:31:59 | book
東野圭吾著「さまよう刃」、読了。

一気読み。
ページをめくる手が止まらず。
震えが止まらず。

もし自分の愛する人の命が奪われてしまったら。
それが厳罰に問えない未成年の手によるものだったら。

娘を奪われた父親は猟銃を手に犯人を追う。
“復讐”するために。。。

怒り。
恐怖。
切なさ。
やるせなさ。
歯痒さ。
哀しみ。
涙。

警察は市民を守っているわけじゃない。
警察が守ろうとするのは法律のほうだ。

この台詞がすべてを語っている。









その時までサヨナラ

2008-05-29 19:33:18 | book
山田悠介著「その時までサヨナラ」、読了。

山田悠介と言えばホラーです。
そんな作家が書いたファンタジー物。

あんまり突っ込むとネタバレになるので
多くは語りませんが。
東野圭吾の「秘密」に似てる。

いい話は、いい話。
さすがにラスト辺りではググッと込み上げる感じも、なくはない。
だけど、この物足りなさは・・・なんざんしょ?

伏線かと思ったら、そーではない。
思った以上に、あっさりし過ぎで、
逆の意味で、ページをめくる手が止まらない。





人生ベストテン

2008-05-22 19:49:10 | book
角田光代著「人生ベストテン」読了。

6つの短編集からなる作品。
最初の4つは、ダーッと流す感じだが
ラスト2篇は良作。
同窓会でのハプニングを描いたタイトル作「人生ベストテン」。
離婚直前に出張ホストとデートする「貸し出しデート」。

ものすごく地味だけど
行き過ぎる日常で出会うささやかな想いに溢れている。

人物と情景描写は、やはり上手い。