弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

判事ディード 法の聖域 第4話 出生の秘密

2011年04月16日 | 判事ディード 法の聖域

法の聖域も第4話目になりました。
第4話の原題は「Hidden Agenda」です。

今回は事件は次の2つです。
1 殺人事件(GPが末期がん患者を殺したというもの)
2 HIV感染者の母に、9か月の息子のHIV検査を受けるようにとの命令申立事件

ディード判事の私生活が絡んで事件が進行していきます。

殺人事件について

GPとはgeneral practitionerの略で、いわゆるファミリー・ドクターのことです。
女医のヘレナ・ベリューが末期がんの患者レジ・モアを殺害した容疑で起訴されたものです。
遺産を目当てに薬物(ジアセチルモルヒネ)で殺害したというものです。
レジには身寄りが一人(姪)いましたが、なくなる2か月前に、遺言書を書き換え、全財産を
女医ヘレナに譲ることにしていました。遺産は、住んでいたコテジ(8ヘクタールの土地付き)
と30万ポンドです。
また、死体からは大量の薬物が検出されました。

姪は身寄りは一人ですから、遺産を全部もらえると思っていたのです。
ソリシターが、「遺産はお一人が受け取ることになっています」というと、「そうです身寄りは
私一人ですから」などと当然のように答えるのですが、
ソリシターはそっけなく「受取人はGPになっています。2か月前に書き換えましたよ」と、
夫が「気がくるってたんだ」と思わず叫んでも「いえ、ちゃんとしていましたよ」と相手にしません。

こういうことを受けて、姪(及び夫)は、そういえば、死亡当日のヘレナの様子がおかしかった
(姪夫婦が着いたとき部屋は真っ暗だった、電気をつけると、ベッドのそばにヘレナが
座っており、死んだモアは目を大きく開いたままだった。
夫が指摘して初めてヘレナは目を閉じた。
2時間前に死んだという。姪夫婦が来るのをじっと待っていたという。)
死亡診断書はヘレナではなく、
知人の男性医者が書いたものとわかった。
モルヒネの錠剤をさっと隠したなどを思い出し、警察に通報したのです。

殺人ですから、殺意を持った殺害行為が要件です。また動機も必要です。
ですから検察側は、遺言書の存在を知っていたこと、体内に残存の大量の薬物が当日
与えられたものであることを立証しようとします。
また、死亡診断書を自分で書かなかったのは、責任をのがれるためであり、
だから特別な関係にある男性医者に頼んだというような主張です。
なお、死亡診断書の死因は自然死となっています。
一番重要なのは、やはり、死因です。この場合は大量の薬物を与えたことです。
しかも殺意を持ってということはいうまでもありません。

検察側は医師の鑑定証人を立てます。大量の薬物(ジアセチルモルヒネ)が
体内に残存していたことは事実ですから、それが死亡の当日、与えたものであるか
どうかが争点です。
ところで、モアは末期がんですから、痛みを緩和するために、以前からモルヒネを
処方されていました。したがって、大量に残存していたからといって、
それが長期間にわたって蓄積されたものであれば
殺人とはならないわけです。
検察側証人は、モルヒネは臓器に蓄積されることはないとの証言をしました。
このときに中和剤の話が出たので、検察側は飲み物に混入して飲ませたという主張の
ようです。モルヒネは苦いのでそのままでは飲めないので、口当たりがいいように中和剤を
混ぜるということです。
ディード判事は、でも中和剤は体内に残っていないではないかと質しますと、
中和剤は12時間でなくなるが薬物は24時間体内に残る、中和剤は早く体外に排出
されたのだというのです。

ヘレナもその日はもちろん、その前にもどうしても痛みがひどい時は
モルヒネを処方したことは認めています。
モルヒネの処方の証言がでると、ディード判事が、そのつど質問して注射であると確認
したのは、検察側の経口投与を疑っているからなんだと思います。

結局、争点は、モルヒネは臓器に蓄積するかどうかということになります。
検察側の鑑定証人は蓄積しない、だから体内から検出された大量の薬物は、当日
投与したものだということになるわけです。
恋人のジョーは今回は弁護側の代理人です。
この証人が以前に書いた論文、蓄積すると書いているが、意見が変わったのかと
反対尋問します。
「そうではない。それは一般医の研修用として作成した
もので、だから問題提起の意味でそう書いただけだ」などと苦しい答弁です。

弁護側は反対意見の鑑定証人を呼びます。病理学者です。
その証人の著書は20年にもわたって、参考書として使われています。
この証人は蓄積するという証言です。
検察側証人と真っ向から対立する意見です。
心臓が停止する理由はいろいろだが、要は人が死ぬのは心臓が停止するからだから
説明がはじまるのですが、専門過ぎて、英語が理解できませんでしたが、
要は自然死だという証言です。

日本ではあまりこういうことはないのですが、イギリスでは、前に証言した人を
再度証言台に立ってもらって、あたらしく出た証拠について、確認することができます。
ディード判事は検察側の鑑定証人に、弁護側の鑑定証人の証言について聞くことにします。
結局、どうなのと問い詰められ、弁護側のいうこともあるかもと認めてしまいます。

ここで、検察側の立証の要が一気に崩れたわけです。ディード判事は双方を
裁判官室に呼び、検察官に無罪を認めるよう勧めます。
検事役は、男性医師は信用できないとか、殺人を致死罪(murderからmanslaughter)
に変更するからと抵抗するのですが、でもgross negligence(重過失)はないよと
ディードに説得されてしまいます。
これはおそらくヘレナは医者なので、モルヒネを投与することは正当な医療行為になる
わけで、それと関係しているように思います)。
要は、弁護側の鑑定証人に検察側の鑑定証人が負けたんだよと説得され、「あれには
参ったよ、まあしょうがないか。じゃハッピーエンドにしようか」としぶしぶ
無罪を認めます。

さて、この裁判の間に、ディード判事自身も癌の父親を見舞っています。妹は「痛みで
苦しんでいるのをみると早く楽にしてあげたい」とつらい気持ちをディードに訴えます。
今、そういう事件を担当しているんだよというと
妹はヘレナ・ベリュー医師の立場に理解を示します。
「本当に殺したの。でもわかるわ」と聞かれて、陪審員が決めることだよと返事はしていますが、こういうこともあってか、ベリュー医師に同情的だったかも知れません。
あるいは、秘書さんに「彼女魅力的だよね。どう思う、無罪?」と聞いて「魅力的かどうかは
有罪、無罪と関係ないでしょ」などと呆れられていますから、ヘレナが美人だったから?

ところで、父親の死を前にして、妹から、ディード判事は本当の息子でないのよと
初めて知らされます。ディード判事は一瞬絶句し「それって、ママが不倫をしたっていうこと?」
「養子なのよ」と明かされます。
ディード判事はどうして言ってくれなかったのと責めますが、妹は「私たち3人とは
全く違ってあなたはとても優秀じゃない、だから気が付いていたかもと思っていたわ。
気がつかなかったの」などと聞きます。
そして父親が話さなかったのはディード判事が優秀で特にオックスフォードに入り、
さらにはロースクールに進むことになり、そのことを誇りに思うと同時に、
実の親子でないことがわかると自分から離れていくのではないかという恐れから
口に出せなかったという。
「ダディはお父さんだし、マムはお母さんだし、妹は妹だし、自分の今あるのは
ダディが人生の価値観について教えてくれたからだ」といいます。
「52年にもなるんだもの。何にもかわらないよ。愛しているよ。」と最後のお別れをします。
ディード判事が52歳というこがわかりました。
でも、ディード判事は、「本当のことをいうとオックスフォードにいるときはお父さんがパンや
(baker)だというのが嫌でしょうがなかったんだよ」と告白します。
イギリスは身分社会です。労働階級の子として、苦労があったのだと思います。
(ディード判事を陥れたいと思っている大法官府のイアンがパン屋の息子のくせに
と差別発言をしていることからわかります)。

(ここで養子の話が出るのは、2つ目の事件との関連づけです。ドラマというのは、
こういう関連付けで自然な流れになるのです。)

ということで、ヘレナは無罪になったわけです。
なお、字幕では陪審員が無罪評決をしたような訳でしたが、
「quit」(やめる)という語を使っていたことと理屈から 
少なくとも陪審員が評決することはないはずです。そうすると、取下げか判事限りで
無罪の判決をするのかですが、知識がないのでわかりません。
後述するとおり、一事不再理という言葉が出てきますので、
ひょっとすると、被告人に有利なように無罪判決をする可能性はあります。
これは宿題です。

でも、これで終わりではないのです。
ヘレナは無罪になったことに感謝感激し、判事や弁護士のたまり場のワインバーで
ディード判事の姿をみるや、「判事さんのおかげです」
ディードが「弁護人のおかげですよ」といっても「いいえ判事さんのおかげです」といって
ディードに抱きつき、ほっぺにキスをします。

この様子を見た大法官府イワンのスパイは大喜びです。
ディードを破滅に追い込めるかもというわけで監視を強めます。
ヘレナはディナーに誘います。ベリュー医師ではなくヘレナと呼んでなどと思わせぶり。
秘書さんから「女性から手紙ですよ」、ディード「美人だった?」なんて例の調子ですが、
毎日のように手紙が届くようになります。
さすがのリィードもジョーに言われるまでもなく、困る立場になるので
断ります(無罪にした被告人と親しくなるというのは、親しくなりたいので
無罪にしたと疑われることになるからです)。
ところが、ところが、自宅まで押し掛けてきます。
護衛の警察官は休み、執事は自分は関係がないという、土砂降りの雨の中、
門の前で、会えるまではと、動こうともしません。
女性にやさしいディードのこと、雨に濡れてかわいそうというわけで、
とうとう官舎の中に招き入れます。

ヘレナは、どうしても言っておかなくてはならないことがある、でも
手紙では書けないことだという。
2時間半後にようやく官舎を後にしました。
スパイは大喜びです。

翌朝、ジョーが判事室にきます。話をきくうちに、お茶を入れる動作はぞんざいに
なっていきます。
ディードが困ったといっても、そりゃそうでしょう、と冷たいです。
ディードが、実は、自分が殺したんだというだよ、殺してほしいと頼まれたので、
楽にしてあげたというんだ、モルヒネは2アンプルではなく、4アンプルだったというんだ。
どうしたらいいだろうか、と、ほとほと困っている様子です。
実はヘレナは証言で、楽にしてあげようかと思ったが、治るかもしれないと思い、
2アンプル注射したところで、落ち着いて眠ったと言っていたのです。

ジョーは警察に届けてはと言いますが、一事不再理で、いったん無罪になったものは
どうすることもできないといいますが、
でももしほかのことが出てきたときのことを考えると報告しておいた方がなどと
アドバイスします。

ディードにとって問題なのは、自分が間違った判断をしたかどうかです。
ジョーに、実際のところどう思うかを確かめると、やはり無罪だと思うという答えでした。

でもディードは納得しません。もう一度、全記録を見直してみることにします。
徹夜です。ジョーが心配して、朝一で判事室に立ち寄ります。
記録をみたけれど、やはり2アンプルよ。間違いないわと言いますが、
リィードはほかの経路で入手した可能性があるよ。ジョーもそういう可能性も
確かに否定できないという。

ディードはやはり間違っていないと思っているわけですが、その証拠がほしいわけです。
確信が持ちたいのです。
判例等を調べ、ディードは「嘘の自白(false confession)」症候群というのがあることを
知ります。
ジョーに確かめます。ジョーは賛成します。
検察官の尋問でもでてきたのですが、10年ほど前、病院勤務だったときに、
薬の過剰投与で赤ん坊を死なせたことがあったのです。
もちろん、それは、子供の側に問題があり、ヘレンの責任ではなかったのですが、
ヘレンが自分が殺したと、責任を感じていたのです。
こういう場合、罪の意識から、ほかのことでも、自分に責任があると自分を責めることが
特に医師などにはあるというのです。
ジョーはもう済んだことだし、くよくよせずに前に進んだら(move on)と助言です。

ディードは「嘘の自白(false confession)」であるとの結論に達したのですが、
誰かに、正しいかったと言ってほしかったのですね。

それで、弁護側鑑定証人だった病理学者にきてもらうようジョーに頼みます。

鑑定証人は、いったん無罪になったんだし、無罪で間違いないと思う。
要は、何が真実かは、ヘレナ本人と神様しかわからないことです。
こうして検討しなおすなど、普通じゃない(unusual)、
前に進んだら(move on)とジョーと同じことを言います。

ディードは、「今一番言ってほしいと思っていることを言ってくれたら」と言います。
これって、おもしろいですね。
つまり、リィードは間違っていなかったということを、それなりの人に言ってほしい
というだたそれだけなんですね。
鑑定証人のいうように神のみぞ知るということですが、それでは
わからないということ同じです。安心できません。
鑑定証人は自分が何のために呼ばれたのか、わかったのです。
(この鑑定証人さんは証言の時に、やはり依頼者がいます。その依頼者を
喜ばしたいとう気持ちになるものですと。
ディードが、そうはいっても真実をいうわけでしょう、と追っかけます、
それに対して、真実にはいろんなバージョンがありますと、
答えています。含蓄がありますね。)
ということで、こういう話をします。
「様子をみるために1アンプルの半分を投与します。さらに残りの半分を投与します。
その後また1アンプルの半分、また半分と投与します。合計4回に分けて投与した
わけです。
こうして4回に分けて投与したのですが、彼女は、罪の意識から1アンプルを
4回投与したと錯覚したんだと考えられませんか。
知人の医者も罪の意識からこういうことあると話していました。また、ほかの
医者も同じようなことを言っていました・・
もっと例をあげる必要がありますか」

もう必要ありませんね。ディードはほしい答えをもらったのです。

こういう発想は、イギリスでも日本でも同じなんですね。
何か、ほほえましく感じました。

こうして、殺人事件の方はようやく一件落着です。

次は、子供に対する検査命令の件です。 

HIV感染のお母さんランキンは、娘チャーリーの友人です。
彼女の友人には、意識の高いインテリのような人が多いようです。
このランキンは輸血でHIVに感染したのです。
HIVに感染はしていますが、発病はしていないのです。
ヨガや瞑想をし、ベジタリアンであり、アルコールも飲まないなど、彼女なりの健康管理を
しているので、10年も健康です。
治療は必要ないし、こどもは感染していないし、
もし感染していても自分で管理できるというわけです。
しかし、カウンシルは、きちんと検査をすべきであるというわけです。
検査命令の申立がなされます。
チャーリーはリィードに相談します。
リィードは、「HIV イコール エイズ、エイズ イコール 死」が常識である。
発病していないというのはラッキーだけれど、
こどものためには検査を受けさせるべきだよ、そうアドバイスしてあげなさい、と
いいますが、チャーリーは、母親に同情的で、
本人が嫌がることをするのはかわいそうというわけです。

なお、チャーリーもベジタリアンなんです。第3話で、ディードが昼食を誘う場面が
あります。ディードが「あのレストランにベジタリアンの料理方法教えておいたからね。
でもあまりわかっていないようだけど」というセリフがありましたので、間違いないと
思います。そういえば、ヒラリーの娘のチェルシーもベジタリアンと聞きました。
英米では、インテリの若い女性にはベジタリアンが多いということなんでしょうか。

チャーリーが「勝手に検査をされるのではないかと心配しているけど大丈夫?」ときくと
「大丈夫。できるんだったらもうやっているよ。できないから裁判所の申立をする
んだよ」という返事。
こういう考え方は、同じだなと、これも何か嬉しくなりましたね。

チャーリーが裁判に出頭しないかもというとディードが「駄目だよでなきゃ。出なければ
相手のいうままに全部認められるよ」「友人(freind)なんだから、マッケンジーフレンド
(McKenzie freind)として出てあげなさい」と
勧めます。だって、私何も分かんないもんというと、私に聞きなさいですって。
ディードは甘いですね。

ところで、マッケンジーフレンドですが、日本にはない制度です。判例で認められた
コモンロー法上の権利ということで、法曹資格のない人に法廷での補助を認めるのです。
ただし、代理をする権利はないようです。
マッケンジー対マッケンジーの離婚事件で弁護士を立てられない妻のために
友人のサポートを認めたのです。ということで、この権利がマッケンジーフレンド
と呼ばれるようになったのです。
(このブログを書くにあたって、マッケンジーフレンドについて調べました。
こういうコモンロー法上の権利は、イギリスだけでなく、コモンローの国、
オーストラリアやカナダなどのいわゆるコモンウェルスの国だけでなく
アメリカにも共通なんですね。3話のautomatismも同じでした。
いろんな分野でイギリスとアメリカは兄弟国だということなんですね。)

審理するところは、いわゆる法廷ではなく、会議室のようなところです。
ディードが「じゃ裁判所に行ってきなさい。うまくやりなさい」と言っていたので、
裁判なのだとは思います。一種のcourtですが、
インフォーマルな雰囲気での審理に適しています。
大きな長方形のテーブルの一つには裁判官と書記官、速記官が着席、
ただし、裁判官も普通の背広で法服も例のかつらもつけていません。
そして、裁判官に向かって右に申立人側の代理人らが、
左に被申立人のランキン、事実婚の夫、チャーリー等が着席しています。
後で、わかるのですが、裁判官と対面するところには証人が座るようです。
日本のラウンドテーブル方式の法廷のような感じです。
(ここで、気づきました。
日本では、裁判官に向かって左の方に申立をする方(原告、検察官とか申立人)が、
右の方は受けて立つ方(被告、弁護人、被申立人)が着席するのですが、
逆でした。
そういえば、イギリスの法廷でも法壇に向かって右が検察の代理人、左が弁護側の
代理人でした。テレビをみればわかりますが、日本ではこの逆です。)

担当裁判官は、ディードと親しい同僚のニヴァン判事です。
明らかに緊張気味のチャーリーをやさしくみつめています。このあたりの人情も
日本でもありそうな感じの雰囲気でした。
1回目は顔見せのような感じですが、次回期日を決めるときに、申立側は2日後を
チャーリーは、駄目もとで何でも言ってやれという感じで、最低限1か月は必要と
要求します。緊急を要するので2日後と迫る申立人代理人に、
準備をする時間も必要だし、、だけど1か月というのも現実的ではないとして
10日間の期限を認めます
そして、大変な事件なので、代理人をつけなさいと助言しますが、
チャーリーは、本人は司法や裁判官に対する不信をもっているので、代理人は
つけないというのですが、裁判官という言葉に、
念のために聞くけど、どういう偏見なの?と。
身内に医者がいるとか、大きな製薬会社と関係があるかもしれないなど・・
判事が苦笑いしていたので、きっとニヴァン判事のことだと思います
(チャーリーは当然知っているわけです)。

場面変わって、ディードはニヴァン判事に「forget it マイケル」といっているので、
多分間違いないと思います。マイケルはニヴァン判事のことです。
代理人を立てた方がいいよね、などと言いながらニヴァン判事は
「family division の上席の経験があるから、君が担当すればいいよ」と体よく
押し付けてしまいます。
なお、ここでも字幕の訳は「首席」となっていましたが「senior」でしたから、
上席がいいと思います。
イギリスのhigh courtには、これも調査の結果ですが、3つの部(わかりやすく
いうと民事法、家族法、会社法)に分かれており、それぞれの裁判官はどれかに
所属することになります。そして、この3つの部の長には、それぞれ別の官職名が
与えられており、高裁の事件を担当することもあるようなので、
ディードを首席というのはどうかな
と思います。イギリスの制度は古い歴史があり、その中で必要に応じて変更されて
いるのですが、日本のように、一気に画一的にということはないので、
呼び名もまちまちなのです。
ついでにいうと、high courtを高裁と翻訳していましたが、これも明らかに間違いです。
「high court」は普通、「高等法院」と翻訳しています。高等とつきますが、
基本的には1審の裁判所です。日本でも、地裁は簡裁の事件の控訴を担当しますが、
それと同じです。
高裁は「court of appeal」です。このあたりのところは、またいずれ説明するチャンスが
あるとおもいますので、今回はこの程度にしておきます。

さて、本題の検査を受けさせる命令ですが、abuseと言っていましたから、
日本でも最近問題になっている、親の子供に対する虐待とかネグリジェンスの場合
には、地方公共団体が裁判所の命令に基づいて、親に代わって適切な処置を講ずる
ことができる、場合によれば、親から子供を取り上げ、里親に出すことができるという
法律があるのだと思います。
なお、council のことを議会と翻訳していましたが、これも間違いと思います。
もちろん、議会という意味もありますが、要は人の集まりことで、場合によっては
審議会、協議会のこともあれば、市役所や区役所をいうこともあります。
たとえば「council house」といえば、市営(県営)住宅のことです。
一躍有名になったスーザン・ボイルさんも「council house」に住んでいましたし、
実は、ディードも「council house」育ちでであり、そこに父は今回死ぬまで住んで
いたのです。
感じとしては児童相談所とか児童福祉局のようなお役所だと思います。

さて、ニヴァン判事が10日も延ばしたので、カウンシルは緊急保護命令を
とり、こどもを連れていってしまいました。緊急の保護命令は日本の簡裁に当たる
Magistrates' Courtで取れるようです。

チャーリーはディードに泣きつきますが、ディードは法律が決めたことだから
どうすることもできないよ。
「でもパパはスパイダーマンでしょ?」娘にとってみれば、ディードには
できないものはないお父さんなんですね。
ディードは「今度は自分が担当するので、人には邪魔はさせないよ」と約束します。
甘いお父さんですね。
やはり、弁護士が必要ということで、ジョーに頼みます。
プロボノみたいねというジョーに「でも権力を相手に戦う女性を助けるのだから
やりがいがあるでしょ」などと煽てます。

ところで、ジョーは検査を受けても、EU人権法によると治療を拒否できることを
調べました。検査に応じてもいいじゃないかというわけです。

ここで、とんでもことがわかりました。実はランキンは母でもなんでもないというのです。
「まさか誘拐?」
同じころに入院していた女性が死亡し、生まれたばかりの男の子を託されたという
のです。誰も迎えに来ないので、そのまま引き取って帰ったというわけです。
でも、これでは何の権利もありません。
ジョーは頭を抱え込んでしまいます。
ランキンが検査を拒否する本当に理由は、実母でないことがばれるからだったのです。

チャーリーはディードに助けを求めます。
ディードは48時間の延期を決めます。
そして、チャーリーに「さあ、パパはスパイダーマンになるよ」と宣言します。

ディードが慌ただしく動き始めました。
片方では、例のヘレナ医師に電話し、助けてほしい、誰かに尾行されているみたい、
そうだよ尾行されているよ、でも大丈夫、裏口から裁判所に入ってきてほしいといいます。
何を狙っているのか、わかりません。
片方の電話ではチャーリーを呼びます。
ジョーはカウンシルも実母でないことを知ったのかも?
カウンシルの代理人から緊急の事態が発生し、48時間は待てないとして
期日指定の申し立てがあったので、知っているよ。
でも、ディードは、私が知らなければいいんだよ、ですって・・・
ジョーもそそくさと判事室を出ます。

ディードはカウンシルの期日指定があったので事情を聴取します。
気のない風な様子で、実母でないという証拠はありますか?
カウンシルの代理人は意気揚々と証拠を示します。
ディードいわく「女の人がいて、子供を生んだということですね。でもそれだけですね。」
とおとぼけです。
午後一番に再開するのでという理由で、この申立はさしあたり却下です。

なにやら時間稼ぎ?でもわかりません。

裁判所の待合の廊下では、赤ん坊を抱いた女性が洗面所に・・ 
ランキンは、おしめを交換しなきゃなどといいながら洗面所へ・・監視の
カウンシルの職員も逃げるところはないからと気を許しています。
さきほどの女性はこどもを連れて出て行きました。
ランキンがこどもを抱いて出てきました。そして法廷室に来ます。

みんな揃いました。
ジョーが、開口一番休廷中に事情は変わりました、と言い始めました。
ディードは制止します。

ディードはゆっくりと話し始めます。
2つ争点がある。こどもの面倒(care)を誰がみるかということと
HIV検査をどうするかということである。これは別々に考える必要がある。
こどもの面倒については母親側に理があるように思うが、HIV検査については
カウンセル側に理があると思う。
そして、旧約聖書のソロモン王の伝説「Judgment of Solomon」を引用しながら
長々と説明が始まります。
(なお、「Judgment of Solomon」は、二人の女性が自分の息子だと名乗り出ます。
ソロモンは、「生きている子供を二つに分けて半分ずつ持って帰るしかない」と宣言します。
一人は、どうそ殺さないでくださいと、もう一人は、二つの分けましょうと言います。
それで、本当の母親がどちらか分かったというわけです。
それ以外にも、それぞれが思い切り子供の腕を引っ張り合うようにいわれ、片方は
力をゆるめ、片方は力を緩めることはない、など、バージョンはいくつかあるようです。
本来の趣旨とは違うような気がしますが、どちらもどちらというときに、過失相殺などの
ときに、よく引き合いに出されるもののようです)

母のランキンがトイレに行くような感じで、チャーリーに子供を預けて出ていきます。
どういうわけか、ジョーも時計を気にしながら退席しました。

ようやく、こどもの面倒はランキンが、でも検査は受けさせるべきであるという決定です。

カウンシル側は、今すぐ検査をしていいかを確かめますが、Why not ということです。

チャーリーから子供を受け取ると、

「あれ、女の子だ!」

ディードとチャーリーは、何があったの?とキツネにつままれたような様子???

外では、ランキンが事実婚の夫が待つ車に乗り込みます。そこには、
ベイビーがいる・・・・・

3年間養育すれば里親になる資格ができる、そのときは自分が担当するから
大丈夫だよとチャーリーを安心させるディードです。
やっぱりパパはスパイダーマンでした。

スパイが見守る中、ヘレナが裁判所の裏口から出て、自分の赤い車に乗り込みます。
ディードがその後を、護衛の運転する車で追いかけます。
飛行場の駐車場に仲良く並んで車を止めます。
中から出てきた二人は熱いキスを交わします。
ヤッターとスパイは大喜びで証拠写真です。
カメラに向かってヘレナ?が、頭に巻いたショールとサングラスをとります。

あー人違いでした。それはなんとジョーでした。

二人は仲良くチャーター機に乗り込み、今夜はフランスでとまる?
そんな時間はないわ、帰らなくちゃ、でも食事だけなら・・・・・
飛び立っていきました。

さて、日本の題名の「出生の秘密」はもちろん、ディードとブランドンのそれを掛けている
のでしょうが、
原題は「Hidden Agenda」です。Agendaですから、
ディードのスパイダーマンとしての活躍ぶりをいっているのだと思います。
これはよく練られた計画です。
でも、それを偶然のように見せなくてはなりません。ディードが知っていてはならない
ことですから・・・

最後のオチは、赤ん坊がブランドンでなかったことは、
実は巧妙に練られた計画であり、Agendaだったという
種明かしではないかと、私は考えています。

本当によくできたドラマです。ここではかなり、端折っていますが、ドラマは細かなところ
まで、よく考えられています。700~800万人の視聴者がいたというのは当然です。
なお、これは90分ドラマなので内容が盛りだくさんです。

是非、みなさんもご覧になってください。


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